欧州レクサスが新型EV「UX300e」の詳細を発表した。100km/hでの巡航時に車室の騒音レベルが58 dBととても静かなこと。そして、新開発の54.3kW大容量バッテリーを搭載しており、NEDCサイクルで航続距離400 km以上を達成したという。
マツダが欧州&日本に投入する「MX-30」も、WLTPモードで300kmと近い数字となっている。今回は、国内のライバルだけでなく、メイン市場となる欧州勢のライバルも数台ピックアップして、そのライバルと比べてどうか? を考察していく。
文/御堀直嗣
写真/LEXUS、MAZDA、Mercedes-Benz
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■レクサスブランド初のEV その性能
レクサス「UX」は、レクサスブランドでもっとも小型のSUV(スポーツ多目的車)であり、2018年に登場した。トヨタブランドで高い人気を呼んだ「C-HR」を基にしたコンパクトSUVであり、走行性能としなやかな乗り心地を持ち合わせた快い一台である。
そのUXに、レクサスブランドとして初の電気自動車(EV)が加わると、欧州で発表された。「UX300e」と名付けられている。
EVとしての性能は、54.3kWh(キロ・ワット・アワー)のリチウムイオンバッテリーを搭載し、WLTCで300kmを走行できるとしている。このリチウムイオンバッテリーは、空気冷方式を採用しており、ドイツ勢のEVが液体冷却を用いているのと対照的だ。空気冷方式は、日産リーフも同様である。
リチウムイオンバッテリーは、高速で連続走行をしたり、急速充電を繰り返したりすると温度が上昇し、走行距離や重電の進み具合に課題が生じることがある。そこで、アウトバーンを持つドイツの自動車メーカーは、速度無制限でEVを使われることを視野に入れながら、積極的にリチウムイオンバッテリーを液体で冷やす方式を採り入れる傾向にある。
一方、リチウムイオンバッテリーはEVでの役割を終えたあとも60~70%の容量を残し、それを定置型の蓄電などに活用することで、資源に限りのあるリチウムを有効活用するというのが、日産の考え方だ。そしてリーフを2010年に発売する前からフォー・アール・エナジー社を設立し、EV後のリチウムイオンバッテリーの有効活用を模索しはじめ、すでに再利用の事業化を進めている。
レクサス「UX300e」では、冷却された空気をリチウムイオンバッテリーに送り込むことにより、冷却性能を高めているようだ。これには、室内空調用の冷媒が活用されているかもしれない。トヨタは、プリウス以降のハイブリッド車で客室内の空調の空気をニッケル水素バッテリーパックへ送り込み、冷却に活用してきた経験を持つからだ。
リチウムイオンバッテリーで充放電を激しく繰り返すと、60~70℃の温度に達し、性能が落ちてくる。そこで、人が心地よく思える温度環境に保つことが上手な活用法となる。
また、リーフの2代目となる現行車では40kWhのバッテリーを搭載し、WLTCで322kmの一充電走行距離を実現した。ところが、連続的な高速走行や急速充電でやや支障が出た。そこでよりリチウムイオンバッテリーの搭載量が多い62kWh仕様(リーフe+)では、電気系を2並列から3並列として1系統での電流量を減らすことにより発熱を抑える対策をとった。
そのように、EVは電気の使い方次第で様々な課題解決の方法があり、エンジン車の開発経験から空気冷却より液体冷却のほうがいいといった単純な対応では、本来の持ち味を活かし切れないことになりかねない。この点で、日産にしてもトヨタにしても、EV(ことにバッテリー特性)をよく学びながら最適な回答を模索する開発をしている様子がうかがえるのである。
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