日本の新車もほぼ搭載!! もう嘘はいっさい通用しない「事故記録装置」驚異の実力

日本では僅か約150人! 事故データを“レポート化”するCDRアナリスト

EDRに記録されたものを読み出し、データ化するのがCDR。そして、それをレポート化するのがCDRアナリストで、自動車メーカーでも資格取得の動きがあるという

 ACMは、事故が起きた時にエアバッグの展開をコントロールします。最近のエアバッグは事故の大きさにより2段、3段と展開のレベルを変化させるものもあります。

 これもACMが各センサーからの情報を基にコントロールするわけで、エアバック全ての展開(非展開の場合もある)が終了し、事故が完結した後に、そのデータに問題がないことをACMが検証したあとEDRに書き込まれるシステムになっています。

 で、このデータを読み出すわけですが、そこで必要になるのがボッシュ社製のCDR(クラッシュ・データ・リトリーバル)という読み出し機器なのです。つまりCDRアナリストは、このCDRを扱ってデータをレポート化する人のことを指します。CDRアナリストの資格認定試験もボッシュ社が行っています。

 ほとんどのACMからデータを抜き出せるのはほぼCDRだけという状況で、つまりCDRはACMからデータを取れる世界標準ツールということなのです。かといってCDRだけを使いなさいという法規もありません。ま、VHSでもベータでも8ミリでも、媒体を選ばず再生できてしまうようなものなのです。

ドライバーの嘘も見抜く!? EDRでどこまで事故の実情がわかる?

こちらが事故記録のデモ。グラフは横軸のmsec(ミリ秒)が時間軸で、縦軸がデルタVで表される加速度(速度の変化率)と言ってもサッパリだが、これを読み解くことで多くの事実がわかる

 では、CDRで吸い出した後、どのようなデータが現われるのか? 写真を見ていただきたい。そう、全部英語なのです。

 これは米国で起きた3台のクルマによる玉突き事故のデータです。この事故でEDRからCDRを使ってデータがとれたのは、3台のうち中央に位置したとみられるこの車両(トヨタ・カローラ)だけでした。

 事故が起きた時に停止していた順列は前にRAV4、次にこのカローラ、その後ろにフォード F15-SuperCrewでした。フォードのドライバーは前のカローラがRAV4に追突し急停車したので止まり切れず追突した、と言っています。さて本当でしょうか?

 実はカローラのEDRデータを解析するだけで事故がどの順番で起こったのかが分かります。実際は、まずフォードがカローラに追突し、そのため押し出されるようにしてカローラがRAV4に追突したのです。

 つまり、フォードのドライバーは嘘をついていたわけです。このように過失責任が証言だけの判断からまるで違ってきますね。客観的に真実が見えてくるのです。

EDRは事故発生直前、事故発生時からエアバッグ展開までの“事実”を記録している

 さらに、カローラのEDRデータからはフォードがカローラに追突した時のフォードの速度、カローラがRAV4に追突した時の速度やΔV(デルタV)と呼ばれる衝撃の大きさが解析可能。

 また、シートベルトプリテンショナーの展開は、サイドエアバッグの展開は、横転したか、助手席に誰か乗っていたか、体重は等々、様々なデータを解析することができます。

 ただし、音声や映像はプライバシーの観点から記録されません。もちろんその機能もありません。EDRはよく航空機のフライトレコーダーと比べられるのですが、フライトレコーダーが常時記録しているのに対して、EDRには事故前後のある一定の時間のみが記録されるようになっていることが異なります。

次ページは : 日本でもほとんどの新車にEDRが採用されている

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