大画面化の理由はナビだけじゃない
さて、それではなぜここまで大画面化が進んだのかを考えてみたい。
ベースの部分では情報量が増えているカーナビの地図画面をより詳細かつ見やすく表示するためには画面を大きくするのが正攻法だ。
しかし現在のカーナビはナビ機能だけでなく、AV機能や空調、さらに車両に搭載されている制御機能なども連携しているケースも増えてきている。
画面をそのたびに切り替えるモデルもあるが、1画面で多彩な情報にアクセスできるほうが運転時の操作ミスも軽減できるし効率もいい。
実際、新型ハリアーは12.3インチの画面をすべてナビで占有するのではなく、空調やAV機能を好みに応じて左右にカスタマイズして配置するなどの機能を有している。
メーター系もデジタルの時代
ここでもうひとつ重要なのはナビ周辺だけでなく、メーターパネル自体も物理メーターではなく液晶などを使ったタイプにシフトしている点だ。
アウディのバーチャルコクピットやメルセデス・ベンツのワイドスクリーンメーター、BMWのフル・デジタル・メーター・パネルなど名称こそ違えど、大型の液晶パネルに速度や回転数だけでなく、簡易ナビ画面やADAS(先進運転支援システム)の動作状況などが表示できる。
またアウディやフォルクスワーゲンの場合はナビ画面自体も表示することが可能で運転中の視線移動を極力減らすことにも貢献している。
さらにメーターのデジタル化に関しては、物理的に動くパーツを減らすことでトータルでのコスト削減にもプラスする。デジタルであれば、液晶パネルという「白いキャンバス」に絵を描くごとく、デザイナーはアイデアを実際に具現化することも可能なのだ。
クルマに求められる液晶パネルの性能とは
これまでデジタル表示を行うためのパネルに関しては液晶がメインだったが、車両用として使う場合、(1)耐環境性、(2)ディスプレイの照度、(3)応答速度、(4)視野角などの問題をクリアしなければならなかった。
例えば照度の問題にしても単純な明るさだけでなく、液晶パネルの特性として低温時から始動した際、数分間は輝度が低いケースも発生していた。
メーター類にしても実際の速度変化に対し、レスポンスが悪く表示が遅れるなどは論外なのである。
これを解消するためにサプライヤーは技術を磨き、現在の高いレベルに達しているが、大型化するということは電子部品に必ず発生する「歩留まり率」の問題にぶち当たる。
これはクルマに限ったことではなく、昨今の大画面TVなどでも同様で、液晶などの場合はいわゆる「ドット落ち」をどこまで許容するのかによっても歩留まり率は大きく変化する。
ちなみにすべてではないが、車載用に使われている液晶パネルは12.3インチがなぜか多い。
これはクルマという限られたスペースに適したサイズということもあるが、歩留まり率が低く、サイズを限定することで価格を下げるサプライヤー側の戦略のひとつ、とも言われている。
また意外とやっかいなのがインパネという限られたスペースに対し、自動車メーカーのインテリアデザイナーと電装系技術者の「陣取り合戦」だという話をよく聞く。
インパネ周辺には空調の吹き出し口もあるので効率よく室内に送風するためにも実は大画面ディスプレイは目の上のたんこぶになるケースもあるという。
テスラのような割り切りはそのクルマのデザインコンセプトを具現化するためにもあまりやりたくはない、という話にも真実味を感じる。
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