マーチに待望の安全装備充実
マーチは2020年7月16日に改良を実施した。以前は設定されなかった衝突被害軽減ブレーキ、ペダルの踏み間違いなどに基づく誤発進抑制機能を新採用して全車に標準装着した。
衝突被害軽減ブレーキは、軽自動車やコンパクトカーに普及した2017年までに装着しておく必要があったから、対応が3年遅い。
現行マーチは初代から3代目に比べて質感が下がり、安全装備の不足も加わって売れ行きも落ち込んだ。今では1カ月の登録台数は600台前後だ。ノートは1カ月に8000~9000台を登録するから、マーチは10%以下にとどまる。
安全装備の充実でマーチの売れ行きが大幅に伸びることはないが、改良の規模は小さくない。相応のコストを費やしたから、今後も割安な特別仕様車などを加えながら少なくとも2~3年は販売を続ける。
マーチはタイ製の輸入車で、海外を中心に売られるため、国内で不人気でも生産を続けやすい。
日産に求められているのはコンパクトミニバン
ただし日産の本音は、国内についてはノートがあれば十分という見方だろう。日産は業績復活のために車種を刷新するが、投資は抑えたい。
2023年度までに、車種数を現在の69車種から55車種以下に減らす方針だ。この状況で全高が1550mm以下のコンパクトカーを2車種用意するのは無理が伴う。
むしろ求められているのは、シエンタやフリードに相当するコンパクトミニバンだ。日産はかつてキューブキュービックを用意して、後継車種も計画していたが、リーマンショックの影響を受けて実現しなかった。
今後はノートをベースにした3列シートミニバンが登場する可能性も高く、これに荷室の広い2列シート仕様も用意すれば、SUVのキックスと併せてコンパクトな車種は完結する。
この流れはホンダのコンパクトな車種を見るとわかりやすい。ホンダもコンパクトカーのフィット、ミニバンのフリード、SUVのヴェゼルをそろえる。ワゴンのシャトルも選べるが、需要の大半をフィットとフリードでカバーできるために売れ行きは伸び悩む。
日産も最終的には、ノート/ノートベースのミニバン/キックスという品ぞろえになりそうだ。
日産にとってはエルグランドはもういらない!?
エルグランドは判断が難しい。現行型は売れ行きが低調で、1カ月の登録台数は500~600台だから、アルファードの約10%に留まる。
不人気の理由は、ミニバンの機能が低いからだ。1/2列目は快適だが、3列目は膝が大きく持ち上がる姿勢になる。
グランエースを除くと、3列目が2列目に比べて窮屈なのは当然だが、エルグランドはLサイズミニバンとしては3列目の快適性がかなり下がる。
しかも3列目の畳み方も、背もたれを前側に倒す方式だから、左右跳ね上げ式や床下格納式に比べて荷室の床が高い。リアゲート開口部の上下寸法をセレナと比べると、エルグランドは200mm以上も下まわる。
その点でセレナは荷室が実用的で、3列目のシートは、ミドルサイズでありながらエルグランドと同等かそれ以上に快適だ。売れ行きも好調で、1カ月に7000~8000台が登録され、エルグランドの10倍以上に達する。
そうなると日産のミニバンは、セレナで十分と判断される。
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