マーケットが存在するのに自ら放棄
現行エルグランドは、クエストの名称で北米でも売られていたが今は終了した。日産が車種数を減らすために、エルグランドは廃止される可能性もある。
ただし現行エルグランドが失敗したのは、前述のとおり商品力が低いためだ。全高は1815mmでアルファードよりも100mm以上低く、3列目と荷室が狭く、外観の存在感も乏しい。
ハイブリッドは用意されず、燃費に不満が生じて購入時の税額は高い。売れない理由が膨大にあり、見方を変えると、日産にとってLサイズミニバンというカテゴリーの魅力が乏しいわけではない。
そこでセレナのノウハウを生かして実用性を高め、内外装を上質に仕上げ、e-POWER技術を投入すれば、アルファードのように好調に売れるLサイズミニバンを開発することも不可能ではない。
しかも今は、クラウンのような上級セダンからアルファードに乗り替えるユーザーが増えた。トヨタの販売店からは、「TVニュースなどで政治家や企業のトップがアルファードを使う様子が放送され、最近はイメージが大幅によくなった」という意見も聞かれる。
また従来のミニバンは国内専売だったが、近年ではアルファード&ヴェルファイアが海外でも注目されるようになった。
今のところLサイズミニバンで成功しているのはアルファード&ヴェルファイアのみだが(オデッセイは低調だ)、人気が伸び悩む上級セダンの後継になり得る。価格が高いから、e-POWERなどの高コストな機能も搭載しやすく、開発するメリットはあるだろう。
上手にフルモデルチェンジを行い、エルグランド/セレナ/ノートベースのコンパクトミニバンをe-POWERでそろえて訴求すれば、国内販売復活のきっかけにもなり得る。
選択と集中と表現すれば聞こえはいいが……
いっぽうマーチは、需要をノートのベーシックグレードで補うことが可能だが、エルグランドと同様、かつて人気車だったから知名度は高い。
ノートよりもさらに小さな最小サイズのコンパクトカーという価値を与え、上質に造り込んで先進安全装備も充実させれば、高齢ドライバー時代のニーズに合う。
2019年度(2019年4月から2020年)に国内で売られたデイズ+ルークス+ノート+セレナの台数を合計すると、日産の国内販売の70%近くを占めてしまう。
国内でニーズの高い日産車が大幅に減ったので、認知度の高いマーチとエルグランドもフルモデルチェンジを行い、主力車種に成長させるべきだ。
車種数の削減を「選択と集中」と表現すれば聞こえはいいが、メーカーがユーザーを都合よく選ぶことにも繋がる。
ユーザーにとっては選ぶ自由も失われる。赤字から脱却する方策としての短期的な「選択と集中」、車種を絞ることは理解できるが、長期的には再び充実させる必要がある。
もともと日産の価値は、高い技術で裏付けられた豊富な車種をさまざまなユーザーがニーズに応じて選べることにあった。
それが可能になってこそ、日産は回復した、危機を乗り越えたといえるだろう。
コメント
コメントの使い方