荒唐無稽!? 夢のまた夢!? 自己再生タイヤの市販化の可能性

完全自動運転時代には何が起こっても不思議ではない

 ところで、なぜこのようなコンセプトのタイヤが発表されたのかということですが、ご察しのとおり来たるべき完全自動運転時代のクルマを想定したタイヤなのだろうと思います。

 完全自動運転のクルマは、ドライバーが運転しなくていいわけですから、事故やトラブルの責任が自動車メーカーに多く求められるようになります。

世界中の自動車メーカーが自動運転化の実現に向けて精力的に開発を進ると同時にサプライヤーの対応は急務(写真はトヨタの自動運転レベル4実験車のTRI-P4)
世界中の自動車メーカーが自動運転化の実現に向けて精力的に開発を進ると同時にサプライヤーの対応は急務(写真はトヨタの自動運転レベル4実験車のTRI-P4)

 そうなるとクルマのメンテナンスも自動的に行う人用が出てくるわけです。いまのクルマでさえ、車内にCANが張り巡らされ、クルマの状態や走行モードが記録され、トラブルや故障があれば検出できるようになっているわけです。

 自動運転化すると例えば「ルンバ」が充電をするために自動で充電器に戻るように、クルマもメンテナンスをするためにメンテナンスガレージに自動的に入庫するようなことが起こるのかもしれません。

タイヤのメンテナンスフリー化のひとつの解

 そんな中もっとも問題を抱えそうなのが実はタイヤなのです。

 タイヤは消耗品なので、定期的なメンテナンスや交換が必要になります。空気圧やタイヤの磨耗はもちろん天候への対応、その他のトラブルにどう対処するかというのはとても重要な問題なのです。

タイヤは消耗品で摩耗するのが当たり前。一般的に5000km走行で1mm摩耗すると言われていて、3万2000kmが交換目安となる
タイヤは消耗品で摩耗するのが当たり前。一般的に5000km走行で1mm摩耗すると言われていて、3万2000kmが交換目安となる

 ユーザーにメンテナンスの義務(責任)がなくなれば、自動車メーカーは(タイヤはクルマの部品なので)タイヤの保守管理をどう行うかが問題になるわけです。

 グッドイヤーではエアレス・タイヤで空気圧をメンテナンスフリーにするとともに、タイヤに自動再生機能を与えることでメンテナンスフリーのひとつの回答を提示したということです。

 タイヤのメンテナンスフリー化は自動運転実現のためには越えなければならない、かなり高いハードルなのですが、グッドイヤーのreChangeという自己再生コンセプトタイヤはそのひとつの解というというわけです。

タイヤのメンテナンスフリーが自動運転には欠かせない要素で、グッドイヤーのrechargeはその最適解のひとつと考えられる
タイヤのメンテナンスフリーが自動運転には欠かせない要素で、グッドイヤーのrechargeはその最適解のひとつと考えられる

姿を変えて実現するかもしれない

 というわけで、もしクルマが完全自動運転化されるようになったならば、reChargeは、タイヤのあり方としてかなり有望なのではないかと思います。ただし、全自動化になったらの話です。

 現実的には、ここしばらくは主流にはならないと思います。

 ただ、トレッドの自動再生を可能にするメカニズムや、コンパウンドを走るシチュエーションによって変えることができるという発想は、もしかしたら近い将来形を変えて実現するものがあるかもしれません。

※編集部註
「完全メインテナンスフリー」といっても、実際は(他の消耗部品と同じく)車検のタイミングまで(つまり3年間)新品同様の性能が保てればいいわけで(そのときに交換するよう慣習化することになるが)、そう考えると製品化のハードルはかなり下がるはず。

 とはいえもしこの「減らないタイヤ」が完成すると、後付け(リプレイス)タイヤの需要および販売が激減することになると思うのだが、タイヤメーカーはそれで大丈夫なのだろうか……。

F1をはじめモータースポーツはタイヤの摩耗が勝敗を左右する大きな要素となっているが、rechargeの技術が実用化されればガラリと変革が起こるハズ
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