カーボンニュートラル=大気中のCO2を増やさない、次世代のエコ燃料!?
8月4日に、マツダは「次世代バイオディーゼル燃料のバリューチェーンを構築」したことを発表。次世代のバイオ燃料に注目が集まっている。
日本では車の燃料=ガソリンが一般的であるものの、ブラジルなどではすでに植物由来のエタノールなどをガソリンに混合したバイオ燃料が普及してきている。
果たして、次世代のバイオ燃料はどのようなものなのか、そして環境負荷低減の切り札となり得るのか? バイオ燃料の「今」を追った。
文:高根英幸/写真:MAZDA、TOYOTA、ユーグレナ
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■「カーボンニュートラル」で注目集めるバイオ燃料
クルマのエンジンが使う燃料は、ガソリンと軽油だ。最近は電気で走るEVや、電気を作りながら走る燃料電池を搭載したFCVなどもあるが、エンジンのメリットは燃料の保管や充填が比較的容易で、液体燃料ゆえのエネルギー密度の高さにある。
EVのバッテリーは電気を放電し終わった状態でも重く、エネルギー密度という点ではまだまだ低いから、移動するためのエネルギー源としては改善する必要性がある。
FCV(燃料電池車)が、水素を超高圧(700気圧!)まで圧縮してタンクに貯めているのも、エネルギー密度を高めるのが目的だ。
だけど、ご存じのとおり、エンジンは燃料を燃やすとCO2が発生する。自動車メーカーは、エンジンや変速機の効率化、ボディの空気抵抗や軽量化などを進めて、燃費を高めてなるべくCO2を減らす努力を続けているが、クルマだけで見ればEVやFCVに環境性能では太刀打ちできない。
もっともEVもクルマの製造時や発電時(大部分は火力発電)にはCO2を排出するし、FCVも燃料となる水素生成時には(現在は天然ガスから取り出しているので)CO2をけっこう出すので、完全に環境負荷がゼロとは言えないクルマだ。
そこで研究が進められているのがバイオ燃料。現在のガソリンや軽油は石油から作られているが、大気中のCO2を吸収した現代の植物やCO2から作れば、理論上は大気中のCO2が増えないことになる。こうした考えを「カーボンニュートラル」と呼んでいる。
■最新バイオ燃料のもとは微細藻類!? なぜディーゼルエンジン用なのか
さて、このバイオ燃料にも種類があって、大別すると食用油などの廃油やナッツオイルから精製するもの、油を蓄える微細藻類(水辺に発生する藻の仲間)を培養して取り出すもの。
そして植物や生ゴミを発酵させてアルコールを得て生成するもの、水から取り出した水素とCO2から生成するもの(厳密に言えばコレはバイオテクノロジーではないが)という4種類に分けることができる。
このうちアルコール発酵させるものは効率が悪く、クルマの燃料用としては不向きとして別な用途(発電用の燃料など)に使われていく傾向にある。
バイオ燃料は、ブラジルではサトウキビから、米国ではトウモロコシから発酵させて生成したアルコールをガソリンと混ぜて使うなど、古くから使われてきた。
現在は15%のガソリンと混ぜた「E85」という燃料が欧米で使われている。この第一世代のバイオ燃料は、食料との競合が起きてしまうのが難点だった。
そして第二世代は、成長の早い植物をアルコール発酵させることにしたのだが、前述の通り効率が悪いこともあり、現在は液体燃料の素材としてはあまり考えられていない。
そうしたなかで、注目を集めているのが第三世代と言われている微細藻類だ。藻自体は世界中に2000種類以上も存在すると言われている。
そこで、研究者は世界中の水辺で、よりバイオ燃料の素材として培養に向いている藻を探し出し、効率の高い培養方法やより遺伝子研究などが進められているのだ。
現在のところ、100%のバイオ燃料はジェット機とディーゼルエンジンのクルマに用いられているケースが多い。それはジェットエンジンとディーゼルエンジンの持つ特性が理由だ。
ガソリンは引火性が高く、空気と混ざった混合気となった状態などの揮発性も求められる。しかし、ディーゼルエンジンは軽油だけでなく重油や植物由来のオイルなど幅広い燃料に対応することができるのだ。
極端な話、ディーゼルは燃料に自己着火性さえあれば、燃料の着火性などに応じて噴射のタイミングと噴射量を調整すれば運転できる、適応力の高いエンジンなのだ。
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