43歳で歴史的快挙ふたたび!! インディ500、そして佐藤琢磨の凄さを語ろう

■19歳から始まった佐藤琢磨のレースキャリアとアメリカへの挑戦

インディ500の瞬間最大速度はF1をも凌駕する。平均車速も250km/hオーバーと異次元のスピードで200周のレースを戦うのだ

 そんなビッグイベントで2度の優勝を果たした佐藤琢磨選手だが、そのレースキャリアは独特だ。

 モータースポーツに初めて触れたのは大学2年生のとき。昨今では幼少期からカートに親しむ選手が多いなか、19歳で初めてカートに乗った佐藤選手は、かなり遅いスタートといっていい。

 しかし持ち前の努力する才能で次々と好成績を残し、英国F3のシリーズチャンピオンを経てF1レギュラードライバーとして参戦を果たした。

2002年にジョーダンでF1の切符をつかむ。その後はジェンソン・バトンとBARホンダからF1参戦。アグレッシブな走りを魅せていたものの……

 F1では1度の表彰台は獲得したものの苦しいレースが続いた。所属していたチームが撤退したこともあり2010年から戦いの舞台をアメリカに移し、インディカー・シリーズにフル参戦を開始する。

 参戦2年目には2度のポールポジションを獲得するなど予選では速さを見せるものの、決勝レースでは安定感に欠く場面が見られたことも事実。2012年にはレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングに移籍し、インディ500では最終ラップまでトップを争うレースを見せるなど印象的なレースも多かった。

 転機となったのは2017年。有力チームのひとつであるアンドレッティ・オートスポーツへ移籍すると、第101回インディ500で佐藤琢磨選手は日本人ドライバーとして初めての優勝を達成した。そして翌年2018年からは、’12年に所属したレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングに復帰した。

 復帰2年目となる2019年シーズンにはインディ500で3位となり、さらにシリーズでも2勝を挙げるなど、インディカー・シリーズ参戦10年目となるがその競争力が今なお高いことを証明した。

アタックし続け、チャンスをものにした佐藤琢磨選手。100年以上の歴史を誇るインディ500で複数回の優勝を成し遂げたのはわずか20人にすぎない

 レーシングドライバーとしての佐藤琢磨選手を語る際、よく使われるのが「No Attack、No Chance」という言葉である。日本語に訳すと「挑戦なくして成功はない」となるだろうか、レースだけではなく琢磨選手のキャリア全般を振り返ってもあてはまる言葉だ。

 104回の歴史を誇るインディ500において、複数回の優勝を達成したドライバーはわずか20人しかおらず、現在のインディカー・シリーズにフル参戦しているドライバーでは佐藤琢磨選手のみ。

 2020年シーズンを43歳で戦う琢磨選手は、インディカー・シリーズにレギュラー参戦しているドライバーのなかでも上から2番目の年齢だが、座右の銘であるNo Attack、No Chance」の言葉どおり、その勢いは今なお健在。

 元来のスピードに、ベテランならではの経験や読みが加わった現在の琢磨選手は、「ハマると速いドライバー」から「速さと強さを併せ持つドライバー」への進化を感じさせる。

■「No Attack、No Chance」を支えるホンダエンジンの底力

ホンダ・エンジンは今回1・2・3・4フィニッシュとなった。佐藤琢磨選手の活躍の背景はホンダのバックアップも大きい

 そして佐藤琢磨選手をずっとサポートし、共に歩んでいるのがホンダである。現在、琢磨選手は自身も卒業した鈴鹿サーキットレーシングスクール(SRS-F)のプリンシパルを務めているが、レースキャリアのほとんどをホンダ・エンジンとともに戦ってきた。

 インディカー・シリーズに参戦している「ホンダ」は、厳密には北米におけるホンダのレース活動を担当するHPD(ホンダ・パフォーマンス・デベロップメント)のオペレーションであるが、佐藤琢磨選手のインディカー・シリーズ参戦の背景にはホンダのバックアップも存在している。

 佐藤琢磨選手にとって、レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングにおけるインディ500制覇は、優勝まであと一歩と迫った2012年の「忘れものを獲り返す」レースでもあった。

ボルグワーナー・トロフィーに2回目の勝利のキスをする。500マイルを走り抜いた勝者の特権だ

 じつは2004年にホンダ・エンジンが初めてインディ500を制覇したのも、当時はレイホール・レターマン・レーシングの名称だった同チームであった。ホンダとの強い結びつきを感じさせるドライバーとチームがタッグを組んだことも、今年の快挙に繋がった要因のひとつだろう。

 今年で104回を数えるインディ500だが、2020年初頭から世界的に感染拡大が拡がった新型コロナウィルスの影響により、今年は史上初の無観客開催となった。

 例年であれば30万人を超える観衆で埋まるスタンドには誰一人として姿が見えず、メディア関係者も大幅に制限されていた。

 2000年代に入ってから、ほぼ毎年のようにインディ500の現地取材を行っていた筆者も、今年は現地取材を自粛。2017年に琢磨選手がインディ500を初制覇した際は現地で感動を体験したが、今年はそれが叶わなかった。

勝利の美酒ならぬ、伝統の「勝利のミルク」を味わう。将来観客が戻ってきたインディ500で、もう一度このミルクを味わってほしいものだ

 インディ500だけは現地取材を……という気持ちで毎年現地を訪れていたのに、今年は自粛と決めたのは「まさか2度目の優勝はないだろう」と心のどこかで思っていたのが正直なところ。繰り返しになるが、104回のインディ500の歴史において複数回の優勝を達成したドライバーはわずか20名しかいないのだから。

 しかし実際には完勝というべきレースを披露し、「こういう逆境でこそ強いのが佐藤琢磨選手だ」ということを、改めて周囲に見せつけた。

 ベテランと呼ばれる年齢となっても、なお「No Attack、No Chance」を体現する佐藤琢磨選手。今シーズンのさらなる活躍を期待するとともに、ここまできたら来年以降のインディ500において3勝目、そして次は4勝目を期待したい。

【画像ギャラリー】コロナ禍で約3ヶ月遅れ、無観客となったインディ500で優勝の佐藤琢磨選手を見る!!

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