椅子から転がり落ちそうになった
時計の針を少し戻そう。
2007年1月、北米国際自動車ショー(通称デトロイトショー)のアキュラブース。世界に向けた記者会見で、筆者は日米欧ジャーナリストとともに最前列でワールドプレミアの瞬間を待っていた。
ベールに隠されたそのモデルは、次期NSXであると言われており世界から大きな注目を集めていた。初代NSXの生産中止から2年目のことだった。
ところが、登場した「アキュラ アドバンスド スポーツカー コンセプト」の姿に、筆者を含めて多くのメディアが驚いた。はっきり言えば、大いに落胆した。
なぜならば、アキュラ版コルベットと表現したくなるような、見るからにアメリカンなロングノーズスポーツカーだったからだ。
パワートレインは、V型10気筒エンジンという触れ込み。となると、2005年に登場した、レクサス「LF-A」(コンセプトモデル表記)の対抗馬というイメージが強いのだが、例えコンセプトモデルとはいっても「アキュラ アドバンスド スポーツカー コンセプト」の雰囲気は、なんともアメリカンな大味だった。
デザインを担当したのは、ロサンゼルスにほど近い、トーランスにあるアキュラデザインセンターだが、担当者らと意見交換しても、話題はアメリカンテイストといった傾向が強い印象があり、「このまま出したら失敗する」と筆者を含めた多くのジャーナリストが口を揃えた。
それから5年が経過した……。
日本国内市場で感じたアメリカンテイスト
2012年1月の北米国際自動車ショー。当時の伊東孝紳社長が壇上で「NSXコンセプト」をアンベールすると、場内にどよめきが起こるほど、世界のメディアから絶賛を受けた。
5年前とはまったく別物、次世代スーパーカーライクなミッドシップ。しかも、パワートレインはリアに1モーターハイブリッド、フロントそれぞれ1モーターの3モーター式だ。
さらに、場内が盛り上がったのは、伊東社長が製造をアメリカで行うと発言した瞬間だった。
その後、オハイオ州メリアズビル四輪工場の敷地内にNSX専用となるパフォーマンス・マニュファクチャリング・センターを建設。約100人のアメリカ人が業務にあたっている。
それから4年8カ月後の2016年9月、兵庫県神戸市を起点とした日本国内メディア向けNSX試乗会に参加したが、その際の印象として「アメリカン人ウケしそうな走り味」を強く感じた。
その旨を、アメリカの製造拠点から参加したアメリカ人技術者と、本田技術研究所の開発陣にはっきりと伝えた。
その時点で、筆者の頭に浮かんがライバルは、フェラーリやランボルギーニではなく、「フォードGT」だった。
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