26年ぶりのフルモデルチェンジとなった「NSX」。
2017年2月の登場以来、早くも3年半が過ぎた。
ところが、日本での月販売台数が1台という場合があるなど、日本市場では成功しているのか、さほどでもないのか、商品の評価がなんとなくわかりにくい。
そもそも、初回販売台数100台として、月販目標を示していないこともあるが……。
ちなみに2020年1月から7月までの累計販売台数はわずか9台!! 驚くのは2020年8月の時点ではすでに2020年の日本割り当て分は完売していることで、いくら何でも少なすぎる。
では、NSXの製造地であり、NSXの主力販売市場であるアメリカではNSXはどのような存在なのだろうか?
NSXのライバルとは、具体的にどのようなクルマなのだろうか?
アメリカにおける、これまでの2代目NSX経緯を振り返りながら、現地の実情をご紹介してみたい。
文:桃田健史/写真:HONDA、FORD、PORCHE、MCLAREN、CHEVROLET
【画像ギャラリー】2020年モデルはすでに完売!! NSXとライバルによるスーパースポーツカーの共演を堪能する!!
全米各地で見かける
アメリカでのモデル名称は、ホンダ上級ブランドのアキュラNSX。
ホンダの北米法人であるアメリカンホンダによると、直近の2020年7月のNSX販売台数は15台。アキュラの売れ筋である、コンパクトSUV「RDX」の5317台やミッドサイズSUV「MDX」の4494台と比べると極めて少ない。
1~7月の累積では、NSXは前年同期比56.8%減の70台。新型コロナウイルス感染拡大の影響で製造工場や販売店が休止になるなど事態は厳しかった。
だたし、2019年の年間販売台数は238台で前年比40.0%増と大きく伸びている。
つまり、発売から2年、また3年経っても、アメリカではNSXに対する潜在的な需要がまだ十分あり、アフターコロナで経済活動が回復すれば、今後も販売は順調に維持できる可能性があるといえる。
実際、全米各地でNSXと出会うことがしばしばある。
地域別で見れば、筆頭は日系メーカーに対する認知度が高く富裕層が多いカリフォルニア州。シリコンバレーを中核とする北カリフォルニアよりも、南カリフォルニアのオレンジカウンティなどで見かけることが多い。
その他では、スーパーカーの所有が多いフロリダ州や、自分のクルマを持ち込んで手軽に楽しめるサーキットが多いテキサス州などで、NSXオーナーが多い印象がある。
こうした各地で見るNSXは、フリーウエイであれ、住宅地であれ、ウォルマートなど大型スーパーの駐車場であれ、社会の風景の中で浮き上がっているようには見えず、なんとも自然にアメリカンライフに溶け込んでいる。
いうなれば、アメリカンなジャパニーズスーパーカーである。
こうした商品になることは、2000年代後半から2010年代初頭、2代目NSXの商品企画が進む中で、明確化されていったのだと思う。
椅子から転がり落ちそうになった
時計の針を少し戻そう。
2007年1月、北米国際自動車ショー(通称デトロイトショー)のアキュラブース。世界に向けた記者会見で、筆者は日米欧ジャーナリストとともに最前列でワールドプレミアの瞬間を待っていた。
ベールに隠されたそのモデルは、次期NSXであると言われており世界から大きな注目を集めていた。初代NSXの生産中止から2年目のことだった。
ところが、登場した「アキュラ アドバンスド スポーツカー コンセプト」の姿に、筆者を含めて多くのメディアが驚いた。はっきり言えば、大いに落胆した。
なぜならば、アキュラ版コルベットと表現したくなるような、見るからにアメリカンなロングノーズスポーツカーだったからだ。
パワートレインは、V型10気筒エンジンという触れ込み。となると、2005年に登場した、レクサス「LF-A」(コンセプトモデル表記)の対抗馬というイメージが強いのだが、例えコンセプトモデルとはいっても「アキュラ アドバンスド スポーツカー コンセプト」の雰囲気は、なんともアメリカンな大味だった。
デザインを担当したのは、ロサンゼルスにほど近い、トーランスにあるアキュラデザインセンターだが、担当者らと意見交換しても、話題はアメリカンテイストといった傾向が強い印象があり、「このまま出したら失敗する」と筆者を含めた多くのジャーナリストが口を揃えた。
それから5年が経過した……。