クルマ好きなら誰でもグッと来る、「排気量やボディサイズが小さくて価格も安いクルマが、大きくて高いクルマよりも楽しくて面白い」という対決。本企画では、同一メーカー内モデル同士の仁義なき6対決をお届けします。果たして下克上は果たせるのか。探してみるとけっこうありましたー!
文:鈴木直也、清水草一、松田秀士
ベストカー2017年10月26号「小よく大を制す」より
■トヨタ C-HR対ハリアー(文:鈴木直也)
最も大きな差は、C-HRがトヨタ最新のTNGAプラットフォームから作られたクルマということ。「走る・曲がる・止まる」というクルマの基本性能はTNGAの登場で大きくレベルアップしている。
きちんとストロークさせて上質な乗り心地を実現しながら、ワインディングで振り回してもきっちり粘るしたたかなハンドリング。本来、重心高という点でやや不利なSUVパッケージながら、C-HRの走りには新鮮な感動がある。
ハイブリッドシステムについても、C-HRのそれは第4世代プリウスベースだから、ハリアーのTHSより世代が新しいぶん、走りも燃費も一枚上手。クルマの基本性能では、明らかにC-HRが下克上を果たしている。
ただし、ハリアーも古いRAV4のプラットフォームをベースにしているわりには、うまく高級感を演出している。インテリアの仕立てのよさや静粛性についてはハリアー優勢。4WD性能のタフさについても、イザという時に頼れるのはハリアーのほうだ。C-HRの4WDはターボ1.2L+CVTだが、4WDにふさわしい力強いドライバビリティが感じられないのが弱点。対して、ハリアーで2Lターボを選べばこのクラスのSUV最速のパフォーマンスが手に入る。
C-HRはクルマの基本性能で下克上を果たしているが、全体的な商品力と4WD性能ではハリアーも健在といったところかな。
結論:C-HRの勝ち(ただし全体的な商品力と4WDはハリアーも悪くない)
■ダイハツ タント対トール(文:鈴木直也)
タンク/ルーミー/トール /ジャスティの4姉妹は、いわゆるミニミニバンとしてダイハツが開発したクルマ。基本プラットフォームはパッソ/ブーンで、そこからの派生車だ。
不思議なんだけど、ダイハツは軽と登録車ではクルマ作りが別人のようだ。社運のかかった軽になると、練りに練ったマーケティングと凝ったメカニズムで、いつもウーンと唸らせる部分を持っているのに、登録車になると「OEM供給元として、発注者のご要望どおり作りました」という、なんか他人事のようなクルマになっちゃう。
実際に乗ってみてもそう。タンク4姉妹は、内外装ともデザインはおざなりだし、パワートレーンもシャシーもピリッとしたところがぜんぜんない。倉庫からありネタの在庫を持って来て組み立てただけという感じで、何の感動もないクルマになっている。
それに比べると、タントなんか「軽のトップセラーの座は譲らん!」という気合いのカタマリ。左側センターピラーを取り払ったユニークパッケージングをはじめ、軽の水準を抜く乗り心地や静粛性。徹底して使い勝手のよさを追求したインテリアなど、めちゃめちゃ「魂」がこもっている。
ちょっと前のベストカーで、タンク/ルーミーとムーヴをJARIのテストコースに持ち込んで緊急回避の操安テストをやったんだけど、何をやってもムーヴの圧勝だったのには呆れた。タンク4姉妹は、クルマ作りにもっと真摯に取り組むべき。そう言わざるを得ない。
結論:タントの勝ち
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