S660はミドシップで走りの資質は本格的
2015年に登場したS660はエンジン横置きのミドシップレイアウトとなる点など、ずばりビートの現代版的存在となる軽オープンスポーツだ。それだけに後述するように特に人が2人乗った際などの実用性はゼロに近い。
しかし、その代わり前後異径で後輪は16インチとなるタイヤ、四輪ディスクブレーキの採用など、軽ながらスポーツカーとしての資質は本格的である。
バリエーションは標準のβ、上級のα、元レーシングドライバーの土屋圭市さん監修のホンダアクセスのコンプリートカーとなるModuloXの3つだ。
実用性比較
これはコペンの圧勝だ。具体的にはキャビンの収納スペースは両車財布やスマホといった身の回りの物を置くスペースは確保されており、特に不便はない。
だがS660のラゲッジスペースはボンネット内のロールトップ(幌)を置くスペースしかなく、そのスペースもオープンにして幌を置いたら使えないし、ラジエーターのすぐ後ろなので壊れたら困るものなどは置けない。
それに対しコペンは電動オープントップをオープン状態としてもラゲッジスペースに2人分の一泊二日分くらいの荷物は入り、この違いは大きい。
また乗降性はコペンもよくないが、S660はオープン状態でないと乗り降りだけで嫌になりそうなくらい悪く、毎日乗るスポーツカーとして使うのは若くないと厳しい。
オープン時の快適性
これもコペンの勝ちだ。オープンで走っている際の風の巻き込みに代表される快適性自体は両車同等だ。
しかしコペンはボタン操作ひとつでルーフを開閉できる電動オープントップなのに対し、S660のルーフは幌をロータスエリーゼのようにクルクルと丸めてボンネット内に収納するロールトップなので、ルーフ開閉に手間が掛かる。
さらにオープンにした際は頭上しかオープンにならないS660に対し、コペンはBピラーがなくなる古典的なオープンカーなので、オープンカーらしい開放感もコペンの圧勝だ。
またS660のバックの際の後方視界はBピラーの形状の関係で軽乗用車ながらバックモニターが欲しくなるくらいよくない。
運転する楽しさ
これはS660の圧勝だ。サーキットのラップタイムに代表される絶対的な速さはS660のほうが速いようだが、どちらもたいして速くない。
しかしそんなこと以前にS660はミドシップらしい鋭い回頭性を持ちながらもFR車のような安心感も備える高レベルのハンドリングを実現し、シフトとクラッチの操作感も良好、ブレーキのフィーリングもガッシリとしており、まとめると軽ながらも本物のスポーツカーである。
さらに動力性能が強烈ではないだけに常識的な範囲の運転でもアクセルを深く踏める点など、「自分がクルマを走らせている」という感覚が非常に濃厚で、S660が与えてくれる楽しさはS660にしかないものだ。
対するコペンのドライブフィールは標準系だと軽乗用車のスポーツモデルに近く、MTだとシフトとクラッチの操作感が今ひとつなのもあり、CVTのほうが似合うという印象だ。
ただGRスポーツは前述したボディ補強や専用サスペンションなどの効果により、全体的にクルマが引き締っており、S660には及ばないものの軽オープンスポーツの名に恥じないスポーツ性と乗り心地に代表される快適性を得ている。
コメント
コメントの使い方