現在、全世界の乗用車販売の約半数がSUVになっている。日本ではまだそこまで行っていないが、グローバルモデルの投入は、自然、SUVが中心になっているし、デザインに関しても、比較的新しいジャンルで発展の余地があるだけに、各社力が入っている。
そんなわけで、最近登場した新型SUVのデザインを、販売状況は度外視して、自動車デザインとしての志の高さや斬新さ、完成度などを評価基準に、独断でブッた斬ってみたい。
文:清水草一/写真:DAIHATSU、MAZDA、TOYOTA、NISSAN、池之平昌信、奥隅圭之、平野学、ベストカー編集部
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ダイハツタフト
ハスラーの対抗馬と目されていたが、実物はハスラーとはかなり異なる。ソフトで都会的かつ現代的な5ドアのジムニーとでも言いましょうか? ハスラーのようなレトロ感はなく、ステルス戦闘車両的な、最新兵器を思わせるモダンなルックスだ。
ほとんどのラインが直線や円など幾何学形で構成されており、斜めのラインはフロントウィンドやリヤフェンダー前部、センターピラー後側など、互いに呼応しあって現代アートっぽい斬新な雰囲気を醸し出している。
インテリアも、いわゆるギア(道具)感を強く打ち出しており、オモチャの兵器みたいで、外観にしっかりマッチしている。
【採点】※★は最大5つ、100点満点
志の高さ/★★★★★
斬新度/★★★★
完成度/★★★★★
総合/93点
マツダCX-30
マツダデザインの渾身作・マツダ3をベースにSUV化しただけに、超デザインコンシャスなSUVに仕立てられている。
マツダ3がベースとは言っても、マツダ3(ファストバック)の車高を持ち上げただけではなく、デザインイメージを揃えているだけでボディ形状は別物。フォルムはシンプルで美しく、エッジのないパネル面は舐めるように仕上げられ、工芸品のような輝きを放っている。
唯一残念なのは、前後フェンダーの黒い樹脂部が厚すぎるように見えることだ。ボディ下部の樹脂部は、ボディを薄くスポーティに見せるための古典的手法だが、それに揃えたのか、あるいはマツダ3との差別化か、単にSUVらしく力強く見せるためなのか、厚ぼったいフェンダー樹脂部が流麗なSUVに似つかわしくなく、惜しい。
細部まで作りこまれたインテリアは、センスも質感もさすがのレベルだ。
【採点】※★は最大5つ、100点満点
志の高さ/★★★★★
斬新度/★★★★
完成度/★★★★
総合/90点
トヨタハリアー
流麗なクーペフォルムは、先代からの正常進化ながら、はっきりと質感がアップし、見るからにカッコよく美しくなった。
先代より全高を下げ全幅を拡大しているので、条件的には圧倒的に有利だが、そのメリットをしっかり生かし、それ以上の結果を出している。
特にリヤピラーからリヤフェンダーにかけての面は、中央部ののびやかさと対照的に精緻に波打たせて、見る者に空気の流れを感じさせる。
ディテールに関しても、すべての質感が上がっている。
たとえばフロントマスク。先代は、ヘッドライトとグリルのライン下部が単純な弧を描いていたが、新型はガルウイング的なラインになり、高級感を出している。
グリルそのものの質感も大幅アップ、全体にぐっとエレガンスが増している。
特に進化が著しいのがインテリアで、インパネやサンターコンソール、シートなど、デザインと質感の両面ではっきりアップ。この価格でこの質感は、「参りました!」と言うしかない。
ただ、本質よりも表面でカッコよく見せている的な雰囲気は濃厚で、まさにスペシャルティSUV。
【採点】※★は最大5つ、100点満点
志の高さ/★★★
斬新度/★★★
完成度/★★★★★
総合/83点
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