改良によりブランド力を高める
マツダも、一括企画の手法により、数年先の新車投入を視野に入れながら、そこに適応できる技術や装備の開発を行い、モデルチェンジ時期にこだわらず、クルマを日々よくしていく取り組みを行っている。
欧州的手法を学びながら、大手自動車メーカーであるトヨタと、小ぶりな自動車メーカーであるマツダそれぞれに、クルマをよりよくしていく手法を考え、実行し、それが顧客の信頼を高めることにつながっているのではないか。
少なくとも欧州の自動車メーカーはそうした姿勢で改良や新車開発を行うことで、ブランド力を高めてきた経緯がある。
ことにトヨタのなかでプレミアムに位置づけられるレクサスは、高級車や高性能車を扱う銘柄として高いブランド力を備えるための戦略が採り入れられたのだろう。
それはまた、「もっといいクルマ作り」を標榜するトヨタ車全体の取り組みにも通じるかもしれない。
先を見据えた新車開発の必要性が高まる
こうして、日々クルマが改良される手法を採り入れながら、では、次の新車をどのように企画し、開発していくかとなったとき、そこに新しい視野が必要になるはずだ。
たとえば、日米の新車開発は概ね4~5年の期間で世代交代を考えてきた。それに対し欧州では、7~8年の期間を置き、次期型の企画と開発をしてきたのである。それら手法を比較すると、欧州車は日米の約2倍先の将来を見通して企画していることになる。
もし、いま、次の新車を構想するとして、2024~2025年の未来を想像するか、あるいは2028~2030年あたりの時代を想像するかで、次期型の価値は大きく変わることになるだろう。
2030年といえば、そろそろエンジン車はなくなっていくことが予想される。
米国カリフォルニア州では、2035年までにエンジン車の販売を禁止すると発表したばかりだが、2030年の5年後の実施となれば、2030年に出る新車はその影響を強く受けるだろう。なぜなら、顧客は新車購入から5年や10年は乗り続けるからだ。
いっぽう、4~5年先であれば、まだエンジン車が多く残るのではないか。動力源ひとつをみても、未来像に大きな差が生じる。
そこに、自動運転技を加えていくと、8~10年先の交通社会はもっと読みにくくなるだろう。消費者の嗜好も変化する可能性がある。
次期型への投資を最大限に生かす戦略
2010年に日産リーフが発売されてから10年が過ぎた今年、輸入車を中心にEVの車種が増えはじめている。消費者の選択肢にEVの占める比率が大きくなりだしたのだ。
この先10年を考えたら、もっと増えるに違いない。その嗜好の変化は、携帯電話とスマートフォンの切り替わりのように、突然起こるかもしれない。
そうなると、これまでの延長線での改良や進歩で、次期型を企画することが適正であるかどうか問われることになる。時代の読みが、非常に重要になり、簡単には決断しにくい時代となっている。
ではどうするか。
モデルチェンジの間隔を長くして、ISのように大幅な改良によっていまという時代の競争力を磨きながら、次期型の構想を、熟慮する時を稼ぐことが重要になっていくだろう。
強力な競合に相対するには、容易な開発ではすまされない。未来の方向性を見誤れば、損失ははかりしれなくなる。
次期型への投資を最大に活かすため、レクサスはじっくり時を掛けながら仕込みをしているに違いない。
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