北米での成功を受けて欧州進出
こうして米国で成功したレクサスは、欧州や他の国でも販売するようになったとき、トヨタの目が競合車として欧州のドイツ車などを視野に入れはじめたのだと思う。
初代LSの最大の特徴は、際立つ静粛性を含めた乗り心地のよさであった。それが、次第に走行性能の向上を求めるようになっていった。
LSの競合となるドイツ車は何かといえば、メルセデスベンツSクラスだろう。歴代をみても、およそ7~8年で世代交代している。EクラスやCクラスもほぼ7年での世代交代だ。
BMWの7シリーズは、前型が6年だったが、その前は8年での世代交代である。アウディA8は初代が9年で、以後7~8年だ。
そのように、長い期間同じ車型を販売しながら、毎年のように品質や性能を進化させていくのが、ドイツ車全般の開発の姿勢といえるだろう。
このため、ドイツ車を購入するならフルモデルチェンジ直前の最終版を買うのが一番いいと、永年いわれている。
レクサスも、ドイツの競合を視野に、性能や品質を高め、競争力を上げていこうとしはじめたのではないか。
レクサス広報は、開発の取り組み姿勢として、「オールウェイズ・オン(Always On)」という言い方で、「お客様や時代の要請を第一に考え、適時・適材・適所に新車や新技術を導入する方向で改良の手を止めず、小さな進化でも具現化していく取り組みをしている」と説明する。
欧米では、イヤーモデルといった言い方をしながら、毎年クルマがよくなっていく改良と市場導入を従来から行っているが、それに似た進化を目指しているといえそうだ。
改良によりブランド力を高める
マツダも、一括企画の手法により、数年先の新車投入を視野に入れながら、そこに適応できる技術や装備の開発を行い、モデルチェンジ時期にこだわらず、クルマを日々よくしていく取り組みを行っている。
欧州的手法を学びながら、大手自動車メーカーであるトヨタと、小ぶりな自動車メーカーであるマツダそれぞれに、クルマをよりよくしていく手法を考え、実行し、それが顧客の信頼を高めることにつながっているのではないか。
少なくとも欧州の自動車メーカーはそうした姿勢で改良や新車開発を行うことで、ブランド力を高めてきた経緯がある。
ことにトヨタのなかでプレミアムに位置づけられるレクサスは、高級車や高性能車を扱う銘柄として高いブランド力を備えるための戦略が採り入れられたのだろう。
それはまた、「もっといいクルマ作り」を標榜するトヨタ車全体の取り組みにも通じるかもしれない。
先を見据えた新車開発の必要性が高まる
こうして、日々クルマが改良される手法を採り入れながら、では、次の新車をどのように企画し、開発していくかとなったとき、そこに新しい視野が必要になるはずだ。
たとえば、日米の新車開発は概ね4~5年の期間で世代交代を考えてきた。それに対し欧州では、7~8年の期間を置き、次期型の企画と開発をしてきたのである。それら手法を比較すると、欧州車は日米の約2倍先の将来を見通して企画していることになる。
もし、いま、次の新車を構想するとして、2024~2025年の未来を想像するか、あるいは2028~2030年あたりの時代を想像するかで、次期型の価値は大きく変わることになるだろう。
2030年といえば、そろそろエンジン車はなくなっていくことが予想される。
米国カリフォルニア州では、2035年までにエンジン車の販売を禁止すると発表したばかりだが、2030年の5年後の実施となれば、2030年に出る新車はその影響を強く受けるだろう。なぜなら、顧客は新車購入から5年や10年は乗り続けるからだ。
いっぽう、4~5年先であれば、まだエンジン車が多く残るのではないか。動力源ひとつをみても、未来像に大きな差が生じる。
そこに、自動運転技を加えていくと、8~10年先の交通社会はもっと読みにくくなるだろう。消費者の嗜好も変化する可能性がある。
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