レース用ハイブリッドは市販車とは別物
レース専用のハイブリッドシステムは、乗用車で採用されているTHSとは異なる構成だ。フロントエンジンからシャフトを通じて後輪側のトランスアクスルに駆動用モーターを装備した構成となる。
さらに、前輪用としてインホイールモーターを左右に装備する4輪駆動としていた。これをミッドシップ用に発展させたのが、ル・マン24時間レースに参戦したハイブリッドシステムである。
乗用車で使うシステムと機構が異なるとはいえ、ガソリンエンジンとモーターの組み合わせによるハイブリッド車という図式は、1997年から23年もの歴史を積み上げてきたトヨタの、電動化の取り組みを象徴する姿といえる。
ところが、ル・マン24時間レースでは、競争相手のアウディやポルシェがすでに参加をやめており、世界的な大手自動車メーカーで参戦を続けるのはトヨタのみの状況が続いている。
レース専用のプロトタイプ車両での参加は、膨大な予算を必要とし、さらに部品や制御で複雑になるハイブリッドでの出場は、プライベートレーシングチームには難しい。
そこで、自動車メーカーはもとより、多くのチームが参加しやすい車両規則として、2021年からル・マン・ハイパーカー(LMハイパーカー)規定を設け、レース開催することになった。
LMハイパーカーは2年間で20台以上の市販義務
ル・マン24時間レースは、これまで何度も状況に応じて参加車両の規定を変更してきた歴史がある。
たとえば、1980~1990年代にかけて世界を牽引したグループC規定によるレースが衰退すると、市販GTカーを主軸とした車両規定に変更している。
このGTカーによる参加は、プロトタイプカーによる総合優勝争いが行われてきたときにも別クラスとして設けられてきたもので、一時的な主役交代によるレース存続の手法であった。
その後、再びプロトタイプカーによる参戦が自動車メーカーによって表明されると、これが主役となり、そのなかで、ディーゼルエンジンの参加を認めたり、ディーゼルハイブリッドとガソリンハイブリッドの競争があったりということで、今日に至っている。
LMハイパーカーとは、エンジン車での参加も認める内容で、これによってより幅広い参加を見込むことができる。同時に、ハイブリッドでも参加でき、ただしモーター駆動は前輪のみに限定される。
そしてエンジンもモーターも最高出力に上限が設けられる。こうして、エンジンやハイブリッドシステムの無制限な開発競争を抑え、参加費用の高騰を防ぐ目的がある。
また、市販車があることを前提とし、2年間で20台以上市販することが求められる。いっぽう、プロトタイプとして参戦する場合に市販の義務はない。車両規定の主力は、あくまで市販を視野に入れたLMハイパーカーになる。
プロトタイプは東京オートサロン2018で初公開
トヨタは、プロトタイプでの参戦は続けてきており、2021年からはLMハイパーカーへの参戦を決め、GRスーパースポーツの市販という話につながる。
トヨタとしては、これまでの経験が活きる前輪モーター駆動のハイブリッド車両で出走するだろう。誰もがより参加しやすい後輪駆動のエンジン車がありながら、前輪にモーターを使うハイブリッドも加えたことは、主催者のトヨタへの配慮ともいえる。
ハイブリッド主体のプロトタイプから、エンジン車でも参加できる規則へ変更となり、アストンマーチンやプジョーからも参戦の声が上がった(ただしアストンマーチンはその後凍結するとしている)。
トヨタは、2018年の東京オートサロンでさっそくGRスーパースポーツコンセプトと、そのテストカーを公開した。
また2020年のル・マン24時間レースに際し、開発中とされるマシンでデモンストレーション走行を披露した。LMハイパーカー規定でもハイブリッド車でレース参戦を継続する意志を強く表明したといえる。
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