プリウスα なぜ衰退?人気車から絶版へ! 時代とともにHVの「価値」変化

■なぜ人気車だったプリウスαの販売は激減?

写真はシエンタハイブリッド。プリウスα登場時にはなかったユーティリティ性の高いハイブリッド車は飛躍的に増えた
写真はシエンタハイブリッド。プリウスα登場時にはなかったユーティリティ性の高いハイブリッド車は飛躍的に増えた

 プリウスαの売れ行きについて販売店に尋ねると、以下のように返答された。

「以前はプリウスでは荷室が狭く、プリウスαを購入されるお客様も多かったです。それが今は、カローラツーリング、シエンタ、ヴォクシー/ノア/エスクァイアなどにもハイブリッドがあり、プリウスαを選ぶお客様は減っています」

 プリウスαが登場した2011年頃は、車内の広いハイブリッドの車種数は少なかった。ミニバンのハイブリッドは、トヨタではアルファード&ヴェルファイアとエスティマ程度で、価格は400万円前後に達した。

 そのためにプリウスαは、各種のレジャーやビジネスにも幅広く使われた。5ドアハッチバックのプリウスに狭さを感じた時、車内を広げたプリウスαは、250万~300万円という価格を含めて魅力的な存在であった。

 ところが今は、前述の通りシエンタ、ヴォクシー系3姉妹車、カローラツーリング&フィールダー、商用車のプロボックスなど、空間効率の優れた大半の車種にハイブリッドが割安な価格で用意されている。プリウスαの需要はこれらの車種でも満たされるようになり、売れ行きも下がった。

■HV専売車としての「プリウス」の価値も変化

先代モデルの3代目プリウス。トヨタのハイブリッド=プリウスという図式のなか歴代でも屈指の販売台数を誇ったが、現在はその立ち位置に変化が生じてきている
先代モデルの3代目プリウス。トヨタのハイブリッド=プリウスという図式のなか歴代でも屈指の販売台数を誇ったが、現在はその立ち位置に変化が生じてきている

 また、プリウスという車種の存在感も変化した。

 プリウスαのベースになった先代プリウスは絶大な人気を誇り、発売された翌年の2010年には月平均で約2万6000台を販売した。この台数には、2代目の継続生産型になるプリウスEXも少数含まれていたが、当時のプリウスは圧倒的な人気車であった。

 高人気の背景には、動力性能、燃費、安全装備などを大幅に向上させ、2代目インサイトに対抗すべく価格は安く抑えたことがある。さらに2代目を扱う販売系列は、トヨタ店とトヨペット店だったが、3代目の先代型ではトヨタカローラ店とネッツトヨタ店を加えて4系列になった。

 これらの要素に加えて、当時はトヨタの中でもハイブリッド搭載車が限られ(先代プリウスの発売時点ではアクアも登場していなかった)、先代プリウスは絶好調に売れた。その派生車種だから、プリウスαも注目された事情がある。

 しかし、今は前述の通り大半のトヨタ車にハイブリッドが用意され、もはや珍しい環境技術ではない。そうなると、どこから見てもハイブリッドだと分かる「ハイブリッド専用車」の価値(ありがたみ)も薄れる。

■次期型の登場は本当にない?

プリウスαは改良を経て2011年から売り続けられたロングランモデル。プリウス本体が2015年にモデルチェンジした後も新型への刷新とはならず、このまま次期型の登場はない?
プリウスαは改良を経て2011年から売り続けられたロングランモデル。プリウス本体が2015年にモデルチェンジした後も新型への刷新とはならず、このまま次期型の登場はない?

 現行プリウスの国内登録台数は、コロナ禍の影響を受ける前の2019年において、プリウスαやプラグインハイブリッドのPHVまで含めて月平均が約1万500台であった。この販売実績は2010年の約40%に留まる。

 数多くのトヨタ車に、ハイブリッドを搭載するグレードを用意すれば、ハイブリッド専用車となるプリウスやプリウスαの売れ行きが下がるのは当然だ。

 以前から予想できたことなので、車種を減らす方針もあり、プリウスαのフルモデルチェンジは行われず生産を終える。

 当然の成り行きといえるが、車種の廃止は寂しい。

「プリウス」をハイブリッドの先進シリーズに位置付け、燃費効率を追求したスペシャルティなモデル、快適かつ上質なワゴン、運転の楽しいスポーツモデルなどをラインナップする方法もあるだろう。

 プリウスは、クラウンと並ぶ存在感の強いブランドで、ユーザー、トヨタ、さらに自動車業界全体に与えた影響も大きい。このまま埋もれさせるのは惜しいブランドだ。

【画像ギャラリー】実はスポーツモデルもあった! プリウスαと歴代プリウス全派生車の歴史

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