2020年12月4日に発売が開始されたスズキの5人乗りプチバン、新型ソリオ/ソリオバンディット。今回からストロングハイブリッドを廃止し、マイルドハイブリッド/ガソリンエンジン車となったのが話題となっているが、はたしてそれが販売にどう影響したのか?
また、電動化が進む時代にあって、なぜストロングハイブリッドを廃止したのか? 流通ジャーナリストの遠藤徹氏が販売現場を回り、ソリオの販売状況を徹底レポートする。
文/遠藤徹
写真/ベストカーweb編集部 スズキ トヨタ
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発売1ヵ月後の受注台数は約6000台、納期は約2ヵ月
新型ソリオ/ソリオバンディットは2020年11月25日に発表、12月4日に発売開始した。新シリーズはサイズ&グレードアップして室内を拡大、装備を充実させるなどして商品力を大幅に引き上げている。
一方でこれまで設定していたEV走行可能な「ストロングハイブリッド」を廃止し、モーターアシスト方式のマイルドハイブリッドのみにしたことで、全体的に燃費低下の印象が否めない状況となっている。
発表から1ヵ月が経過し、滑り出しのスタートダッシュは、まずまずの受注ピッチで推移している。2020年1月4日現在の納期は3月上旬で2ヵ月待ちとなっている。
受注累計は推定約6000台で月販目標の4000台を大幅に上回っている。従来モデルの登場が2015年8月26日だから、5年3ヵ月ぶりの世代交代である。
直近の2020年12月の新車販売台数が1月8日に発表されたが、ソリオ(12月4日発売)は5019台(対前年同月比151.7%)で新車販売ランキングは13位。ちなみにルーミーは3位、8792台(対前年同月比146.2%)だった。
スズキの登録車では最も販売台数の多い主軸モデルでこれまで月販3000台規模をコンスタントに売ってきたから、保有台数は20万台以上に上っている。当面はこちらが代替え母体となり、増販攻勢が続くことになる。
ストロングハイブリッド廃止の影響は?
対抗モデルはトヨタルーミー、ダイハツトールであるが、ルーミーは月販1万台規模のヒットモデルだから、これを上回ることは難しいが、ダイハツトールを大きく引き離す見通し。
新型ソリオの先行予約の受付は発表の2020年11月25日から12月3日までに実施された。予約特典として新型ソリオのミニカープレゼントや3万円相当のナビの割引や前用のドライブレコーダーのプレゼントが行われた。
このほか、スズキ純正オプション11万円ぶんのオプションプレゼントもほかのモデルと同時に実施している。
今回の全面改良ではボディサイズの拡大によって広い居住空間に加えて荷室も広げているのが最大のウリ。
安全面ではスズキの予防安全技術である「スズキセーフティサポート」がさらに進化、カラーヘッドアップディスプレイをスズキ小型車として初採用となった。
アダプティブクルーズコントロールには全車速での追随機能を追加、6エアバッグを全車に標準装備。使い勝手や快適性は予約ロック機能を追加したパワースライドドア、スリムサーキュレーターの採用などで向上させている。
パワーユニットは1.2LのガソリンNA、同マイルドハイブリッドの2つで、先代モデルにあった1.2Lのストロングハイブリッドは廃止された。グレード構成はソリオが1.2L、ガソリンNAのG、マイルドハイブリッドはMX、MZ。
上級&スポーツバージョンのソリオバンディットはマイルドハイブリッドのMVのみで、トランスミッションはいずれもCVT、駆動方式はそれぞれ2WD、4WDとの組み合わせで、合計8タイプ。
JC08モード燃費はマイルドハイブリッドの2WDが22.4km/L(WLTCモード燃費は19.6km/L)と、先代のマイルドハイブリッド(2WD)の27.8km/Lから悪化している。
車両本体価格は158万1800円~214万8300円で、従来モデルの148万6100円~211万9700円に比べると2万8600円~9万5700円高い。
主要なメーカーオプション価格は、後席左側ワンアクションパワースライドドア4万7300円、LEDヘッドランプ5万5000円、ブラック2トーンルーフ4万4000円、ピュアホワイトパールなど3有料色2万2000円。グレード&タイプ別車両本体価格は以下の通り。
■新型ソリオ グレード/価格一覧
「G」(2WD)158万1800円/(4WD)170万7200円
「MXハイブリッド」(2WD)185万200円/(4WD)197万5600円
「MZハイブリッド」(2WD)202万2900円/(4WD)214万8300円
バンディッド「MVハイブリッド」(2WD)200万6400円/(4WD)213万1800円
ちなみに廃止されたストロングハイブリッドは1モーターとリチウムイオンバッテリーとの組み合わせで、JC08モード燃費は32.0km/Lでマイルドハイブリッドの27.8km/Lとの差は4.2km/L。車両本体価格は従来のSZとMZで22万8800円、ストロングハイブリッドのほうが高かった。
走りはマイルドハイブリッドMZのCVTとストロングハイブリッドSZの5MATでは滑らかさではCVTのほうが優位で、マニュアルベースの5MATは変速時の違和感が不評だった。これがストロングハイブリッド販売不振の要因にもなっていた。
しかし、政府が2035年に純ガソリン車の新車販売禁止を打ち出し、ハイブリッド車が今後増えることが予想されるなか、なぜストロングハイブリッドを廃止したのか、実に不思議だ。
当然、将来の燃費規制にマイルドハイブリッドだけでは対応できない。ここ数年以内の追加設定はないと思うが、将来的には燃費規制やトヨタと提携していることもあり、フルハイブリッド車が登場する可能性は非常に高いといえるだろう。
証言1:首都圏スズキ店営業担当者
「新型ソリオはまずまずの受注状況で推移しています。フルモデルチェンジで、室内が広くなり、使い勝手が向上したのと安全対策の強化、装備の充実がウリとなっています。ソリオとソリオバンディットの販売割合ですが、70%がソリオで占められています。
最上級のハイブリッドMZが最も引き合いが多いです。納期は2ヵ月待ちですがそれほど長く待たされる状況ではないと思います。下取り車は70%が先代ソリオからの代替えで、あとはスズキの小型車、軽自動車のワゴンRやスペーシアなどとなっています。
EV走行可能なストロングハイブリッドが廃止になりましたが、これまでシリーズ全体の10%程度の販売構成比だったので、なくなってもあまり影響はないですね。マイルドハイブリッドより20万円高かったので売れないのは当然と受けとめています」。