プジョー、シトロエンの販売が好調な理由
まずは近年のプジョーとシトロエンの好調の理由を探ってみたい。プジョーの好調のきっかけとなったのは、2015年より販売が本格化した現行型プジョー308だろう。
208より動き始めた新世代プジョーの世界観をデザインと技術の両面で進化させていた308は、従来までのコンサバなプジョーのイメージを打ち破るべき、トータル性能での質感の向上に注力。さらに同セグメントのベンチマークであるVWゴルフを打ち破るべく、ゴルフイーターとして徹底的に鍛え上げられた。
主力となるダウンサイズの1.2Lの直3ガソリンターボエンジンも優秀で、走りの質感や性能面の妥協がなかったことも素晴らしかった。そのエッセンスをより発展させた現行型3008が2016年に投入したことも追い風となった。
ひと足早く新世代となっていた先代208、そのクロスオーバーであった先代2008は、本国主導のパワートレイン戦略の誤りもあり、苦戦した時期もあったが、その後、1.2Lターボと6速ATに換装し、プジョーエントリーとして活躍。さらに308以上のモデルでは、日本で人気が高まっていたクリーンディーゼルターボの展開が強化されたこともあり、販売も順調なステップアップを遂げていく。
一方で、じわじわと再び存在感を表すシトロエンの流れを変えたのは、カジュアルクロスオーバー「C4カクタス」より本格化された新世代スタイリングによる影響が大きい。
C4カクタスは、日本には限定導入となったものの、最初の200台が瞬く間に完売し、お代わりが実現されたほど。それも順調に売れ、供給不足に。C4カクタスは、正直、スペックは平凡であったが、唯一無二の個性的なスタイルとリビング感覚の快適なインテリア、そして、緩やかだが、心地よい乗り味などの魅力に溢れていた。
そのエッセンスを最大限注入したのが、2017年より日本導入される現行型C3なのだ。個性的だけど愛嬌のあるスタイルや、ふかふかの快適なシートは、まさにC4カクタス譲り。しかもパワートレインは、1.2Lターボと6速ATに改められたことで、元気いっぱいの走りも身に着けた。まさにマルチなコンパクトに生まれ変わったのだ。そして、輸入車として求めやすい価格と手ごろなサイズ感が受け、シトロエンの日本販売の基盤となっている。
昨年となる2020年は、皆さんもご存じのように新型コロナウイルス感染症の日本での感染が拡大。自粛対応や緊急事態宣言の影響を受け、日本の乗用車販売全体では、国産登録車が前年比87.8%、軽自動車で前年比90.0%、輸入車は前年比85.3%まで落ち込んでいる。
ところが、グループPSAジャパンの3ブランドは、プジョーが前年比101.2%、シトロエンが前年比122.2%、DSが前年比100.4%と全ブランドでプラス成長を遂げているのだ。全体の落ち込みを見れば、数字よりも大きな結果を残したといっても良いだろう。その躍進のカギは何処にあるのか、グループPSAジャパン広報部に伺った。
プジョー2020年成長の立役者は、2020年に投入されたコンパクトハッチ「208」シリーズの存在が大きい。かつて日本でも大ヒットを記録した206の再来ともいわれたスタイリッシュなデザインは、多くの人の注目を集めただけでなく、実車チェックのためのディーラー来店者数も増加したという。
来店の際に、より後席スペースやラゲッジスペースにゆとりを求める人たちの興味が、小型SUV「2008」に向くことも大きな販売効果を生んでいる。また既存モデルでは、SUVブームの影響もあり、3008も好調。つまり、208をフックに来店する人が増加したことで、他モデルの販売の後押しとなっているようだ。
2020年より販売を開始したEVについては、ニーズにマッチした顧客に丁寧に販売しているとする一方、e-208の販売は、シリーズ全体の7%を占める。
日本でのEV販売比率が1%程度であることを考えると、かなり健闘している。これは「パワーオブチョイス」の考えに基づいて展開される、3年間の維持コストをガソリン車とEVを同等程度とするTCO(Total Cost of Ownership)戦略が、EV検討顧客に、手頃なEVとして支持されているようだ。
そして、新感覚のプジョーとして、2019年より導入されたミニバン「リフター」はベルランゴの影に隠れている感は否めない。しかし、SUVとミニバンのクロスオーバーとなると、事実上、ライバルは三菱デリカD5のみ。そのため、今後のPRでより販売が伸びていくだろうとの見解を示した。
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