■国産専用GTセダンの定め
続くモデルと続かないモデルがある。ミッドサイズのセダンということで言えば、日本ではまずミニバンに、今や世界的にはSUVに、ファミリーカーの第一選択肢の座を奪われた。環境の変化だ。
それでも売れるセダンは現にある。日本のマーケットでは歴史ある国産セダンこそスカイラインと同じ運命を辿ったが、例えばドイツブランドのセダン、BMW3シリーズやメルセデスベンツCクラスなどは未だ堅実に売れている。
もちろん日本での販売台数規模で言えばV35時代のスカイライン(1万台/年)にも及ばないが、グローバルマーケットを考えればSUV全盛の今でも開発を続けるだけの意味がある台数を毎年、送り出している。マーケットを絶えず注視しつつもコンセプトは決して大きくぶれず、プロダクトに個性をアピールする力があるからだ。
スカイラインも一度はその考え方で蘇ろうとした。本来、スカイラインでもましてやローレルでもなかった次世代グローバル市場向けのミッドサイズ高級サルーンをスカイラインとして国内販売することになったのだ。
本来は終わっていたスカイライン。急転直下、スカイラインとして開発されていないクルマがスカイラインとしてデビューすることになった。スカイラインファンにとっては、なかなか判断の難しい状況だったと覚えている。
名前が残ったことを喜ぶべきか、スカイラインじゃないと叫ぶべきか。
V35そのものは決して悪いクルマではなかった。筆者も2ドアクーペのスタイルを好んで乗った。けれどもそれはもはやスカイラインではなかった。
メーカーがそうだと言うからスカイラインであるというに過ぎなかった。そこが今なおセダンを作り続けるドイツブランドとの大きな差だ。V35以降のモデルもひょっとするとスカイラインという名前じゃない方が上手くいったのかもしれない。
それが証拠にインフィニティブランドによるグローバル戦略、主に北米市場に支えられて、スカイラインの元となるモデルはV36、V37ともう二世代続くことになった。
国内に目を向ければV36時代に設定されたスカイラインクロスオーバーなどは時代の先駆けともいえるネーミングコンセプトだっただろう。
そんなこんなで後継モデルの開発中止という報道を受けて飛び出した「スカイラインをあきらめない」というコメントもまた、素直に歓迎できない自分がいる。
セダンの時代じゃないとかSUVで復活だとか、そんな次元の話じゃない。クルマとしてのスカイラインはもうとっくの昔に死んでいたと知っているからだ。死んでいたクルマを開発中止と騒ぐ方も、そうではないと言い張る方も、どちらもスカイラインを心から愛したことのない人の論説だというほかない。
本当のことを言うと、一度スカイラインを諦めていただきたい。
断絶のあと、昔の名前で復活し成功した例もある。次世代モビリティの世界観において、また往時のスカイラインのような役目のモデルが必要になったとき、改めて考え直してもらえばいい。
「名ばかりのスカイライン」には、正直、もう乗りたくないのだ。
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