■飛行機型ロケット/ヴァージン・ギャラクティック スペースシップ2
2021年7月11日、バージンエアの創業者であるリチャード・ブランソン氏率いるヴァージン・ギャラクティックの「スペースシップ2」が、6名のクルーを乗せての試験飛行に成功した。
スペースシップ2は、ジェットエンジンを4基搭載した双胴の母機・ホワイトナイト2に吊り下げられる形で滑走路から離陸、高度15kmで切り離され、ロケットエンジンに点火、高度80kmの宇宙へと向かう。
ホワイトナイト2のデザインは、「双胴の悪魔」と呼ばれた米P-38戦闘機を彷彿とさせ、その中央に吊るされたスペースシップ2は、小型スペースシャトル、あるいは『ウルトラマン』のジェットビートル的で、実にカッコいい。垂直に離陸するロケットに比べると古典的で親しみやすく、どこかスーパーカーっぽい気もする。
そして、クルマ好きに注目してほしいのは、スペースシップ2のロケットエンジンである。ロケットエンジンには、大きく分けて液体燃料(液体酸素と液体水素)ロケットと固体燃料ロケットがあり、用途によって使い分けられている。
スペースシャトルを例に取ると、シャトル本体には液体燃料ロケットが、補助ブースターには固体燃料ロケットが使われていた。国産のH2ロケットも、本体は液体燃料ロケットで、打ち上げ時はその下部に2本から4本の固体燃料補助ブースターが装着される。
液体燃料ロケットは、精密かつ複雑なメカを持ち、出力コントロール性に優れる。その出力特性は、クルマで言えば自然吸気エンジンに近く、高回転高出力型で最高速は伸びるが、トルクは小さい。
一方の固体燃料ロケットは、酸化剤を含んだ固体燃料に火をつけるだけ、つまりロケット花火とほぼ同じなので、構造が単純だ。一度火を付けたら燃え尽きるのみだが、打ち上げ直後はその大トルクで、機体を持ち上げる役割を担っている。つまりトルクフルなスーパーチャージャーでしょうか?
ところがスペースシップ2のロケットエンジンは、そのどちらでもない「ハイブリッドエンジン」。これは、液体酸素と固体推進剤を組み合わせた、文字通りハイブリッドで、高性能ではないが構造が単純、出力もコントロールできる。つまり低コストで安全性が高い。まさにハイブリッドカー的だ。
ロケットエンジンの燃焼時間は、約1分。それでマッハ3に到達する。この速度、人工衛星を打ち上げる通常の宇宙ロケットに比べると、ものすごく遅い。地球の重力圏を脱出するためには、秒速7.7km以上の速度が必要だが、これはマッハに換算すると20以上に相当する。つまり、ホンモノ? のロケットに比べると、最高速は7分の1というところ。スーパーカーの最高速が時速300kmだとすれば、時速40kmくらい。原チャリのようなものである。
でも、マッハ3で宇宙へ飛び立つなんて、クルマにはできないし(当たり前)、母機から切り離されてロケットエンジンに点火した瞬間の映像を見れば、それはもうマフラーから火を噴いて全開加速するフェラーリそのものだ! 震えがくるぜ! 長い尾翼は、大気圏突入時、最大65度立てて「フェザリング」を行うのも、可変リヤウイングみたいでカッコイイ。この時の最大減速Gは6Gに達するという。
旅行費用は25万ドル(2750万円)。離陸から着陸まで1時間半ほど。日本の旅行会社でも募集している。
【クラブツーリズム・スペースツアーズ】
実施年:2021年以降運行開始予定
参加条件:18歳以上で健康な方(年齢上限なし)
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