テスラの深き悩み VW全固体電池生産で一歩リード? テック系最新ニュース3選

■全固体電池でトヨタにライバル登場 VWが生産へ?

 トヨタが先行していると期待される全固体電池だが、ライバルのフォルクスワーゲンも動き出した。

 提携先の米電池開発ベンチャー「クアンタムスケープ」社と組んで、年内にもドイツ国内に全固体電池の試験生産ラインを建設し、2024年には商業生産に乗り出すという。

 クアンタムスケープは、大富豪ビル・ゲイツの財団なども出資する注目企業だが、発表によると同社の全固体電池は、体積あたりの走行距離を3割伸ばすことができ、450kmの走行に必要な電力を12分で充電できるという。

 温度変化にも強く、氷点下での動作も余裕でこなすそうだ。

クアンタムスケープのラミネート型バッテリー。トヨタとは異なるアプローチで全固体電池を作る
クアンタムスケープのラミネート型バッテリー。トヨタとは異なるアプローチで全固体電池を作る

 フォルクスワーゲンは同社と合弁会社を作り、ハノーヴァー近郊のザルツギッターに全固体電池の試験生産ラインを建設。

 2024年に1ギガワットで商業生産を始め、将来的には20ギガワットまで拡大させるとのこと。1台のEVのバッテリー容量が50kW‌だとすれば、40万台分に相当する生産キャパシティだ。

 フォルクスワーゲンだけではない。BMWとフォードは同じアメリカの全固体電池ベンチャー「ソリッドパワー」への出資を拡大した。

 両社は来年から試験用全固体電池の調達を始めるが、BMWは2025年までに路上試験をスタートさせるという。トヨタの巻き返しに期待しよう。

■日本電産が下剋上! 将来的な車台生産を視野に?

 先月、台湾の鴻海が1200以上の企業と組んでEVのプラットフォーム開発に乗り出すと報じたが、負けじと日本企業も動き出した。

 世界屈指のモーターメーカーである日本電産が、中国の大連に「サプライヤータウン」を作るというのだ。

 構想によれば、日本電産が大連郊外に作った新工場を軸に、ブレーキやパワーステアリングといった部品を作る企業を集め、EVの主要パーツがすべて揃う企業集積地を造るという。

 この計画には先がある。日本電産は将来的に、この企業集団でEVの車台をまるごと手がけることも考えているというのだ。

 日産から日本電産へ電撃移籍して話題となった関潤社長は、ボディや電池を除く基幹部品をセットにして、1台あたり60~70万円で販売できると説明している。

 同社長によれば、異業種からEVに参入する企業は、主要部品をまとめて供給することを当たり前に求めるとのことで、今後はそのニーズに応えられる企業が優位に立つことは間違いないようだ。

 実は日本電産は、冒頭で述べた鴻海のプラットフォーム構想にも参加している。

 自社のプロジェクトとどちらを軸にするのか気になるが、変化の激しい分野だけに、今はひとまず仲間を増やすことに注力しているのだろう。

 既存の自動車メーカーも、うかうかしていられないぞ。

日本電産大連工場の完成イメージ。車軸とモーターを一体化したE-Axleの製造拠点だ(同社Facebookより)
日本電産大連工場の完成イメージ。車軸とモーターを一体化したE-Axleの製造拠点だ(同社Facebookより)

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東武鉄道大師線。西新井~大師前間で、添乗員あり自動運転の検証を始める
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