■なぜオリパラ特別仕様では軽自動車も白地のナンバープレートだったのか
実はアジア初のラグビーワールドカップの日本での開催を記念して、2017年4月から2019年11月末まで、ラグビーワールドカップ特別仕様ナンバープレートも交付されていた。実はその際も、軽自動車向けナンバープレートは、普通自動車向けと変わらない白地のものだった。
なぜオリパラ特別仕様ナンバープレートでも、軽自動車向けのナンバープレートを普通自動車と同じ色・デザインにしたのか、国土交通省の担当者にうかがった。
「白地にすることでデザイン性を確保し、シートをナンバープレートに貼って作っている当時の技術面の制約からそうなったもので、意図して軽自動車の黄色ナンバーを白くしたものではない。ラグビーワールドカップやオリパラの特別仕様のナンバープレートは、期間限定の交付なので例外的に軽自動車と普通自動車で同一色、同一デザインとなった」との答えが返ってきた。
この軽自動車・普通自動車のナンバープレートの統一デザイン化にあたっては、国土交通省と警察庁との協議のうえ、「そもそも登録番号で軽自動車と登録自動車が識別できること、防犯カメラなどでの映り具合でも識別に支障がないこと」を確認した上で導入されたという。
つまり、分類番号(「品川599」などと書かれた3桁の数字の部分)の下2桁を見れば軽自動車だと識別できるため、普通乗用車と同一の色・デザインでも問題ないとされた。そして実際にこれまでのところ、事件・事故で「ナンバーが黄色でなかったせいで視認性含め何らかの問題があった」との話は国土交通省には入ってきていないという。
ちなみに筆者はナンバープレートの色以外で軽自動車を識別する、この分類番号による識別方法をお恥ずかしながら知らなかった。3桁の分類番号の数字の下2桁が80~99であれば軽自動車だということだ。
個人的には、中央高速のようなアップダウンがきつい高速道路で走行車線から追越車線に車線変更しようとしている前方のクルマが、上り坂でスムースに走行車線と追越車線の速度差を埋めることができないかもしれないパワーに劣る軽自動車なのかそうでないのかをナンバーの色から直感的に把握できない、というのは事故を誘発するリスクもあるのではないかと思う。
■将来軽自動車のナンバーは白地になるのか?
軽自動車のナンバーが白地でも問題ないとすれば、今後黄色のナンバープレートはなくなってしまうのだろうか。
いわゆる「ガラパゴス化」した規格である軽自動車の車両規定に合わせ、軽自動車専用の部品を作って日本市場のみで販売される軽自動車を作ることが、日本の自動車産業のグローバルな競争力を下げる原因になっているという指摘は古くからある。
日本の自動車保有台数7800万台のうち、税金の安い軽自動車は3100万台を占め、その割合は40%近くへとじりじり上がってきており、国や地方自治体の税収の面でも影響が出てきている。
国土交通省の担当者に、「この軽自動車の白地のナンバープレートは、将来軽自動車の規格がなくなり、普通乗用車と規格が統一される布石ではないかといううがった見方もありますが」と水を向けたところ、「規格の統一の議論の有無については全く知る立場にはありませんが」と最初に断られたが、以下のような話を聞くことができた。
2017年のオリパラ特別仕様交付開始、すなわち軽自動車と普通自動車で同じ白地のデザインのナンバープレートが交付され始めた後、2018年に交付が始まったいわゆる「ご当地ナンバープレート」では、一転して軽自動車向けは外側に「黄色の縁取り」が入れられて普通自動車とはデザインが異なるものになったそうだ。
また2022年4月頃から交付を予定している新たな全国版の図柄入りナンバープレートでは、軽自動車向けは黄色の縁取りだけでなく、ナンバープレートの左上隅に「三角形で黄色の塗色の目印」が付くのだという。
これは、適法なナンバーフレームを装着した場合でも、黄色の縁取りが一部隠れてしまって軽自動車である識別が難しくなるため、縁取りに加えて新しい三角形の黄色の目印をナンバープレート上につけることにしたということだそうだ。
そうでないと、ETCのない有人の有料道路の料金所などで軽自動車の区別がつきにくく、支払う料金を確認する手間がかかって効率が下がるという実務上の理由があるからだという。
またそれ以外にも、そもそも軽自動車と登録車は、税金や規格も含め法律上の立ち位置が違うのだから、しっかり識別できるようにするべきだというそもそも論も強かったという。
つまり、軽自動車という規格が存在する限り、明確に普通自動車などとは識別できるようにしていくのが原則であることに変わりがないということだ。
このことから、ラグビーワールドカップ・オリパラ特別仕様の、軽自動車向けナンバープレートが普通車と同一色、同一デザインというのが極めてレアな、非常に特別なものだということが分かる。
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