■初代NSX vs. 現行型NSX
正常進化を感じたGT-Rに対し、NSXは名前とミドシップレイアウトは受け継いだものの、まったくのベツモノに生まれ変わっている。
初代NSXは軽く、しなやかでエンジンはNAで高回転まで気持ちよく回るが、今改めて乗ってみると、あの当時感じたほどのパワフルさはない。
運転席に座るとボンネットが低く、まるで戦闘機のキャノピーのように視界が広がる。
視界のよさはドライビングに大きなメリット。路面がよく見えるので一般道はもちろん、サーキットやジムカーナでも走らせやすいのだ。
改めて現在のNSXと並べると、初代NSXは華奢。タイヤも小さいしブレーキも小さい。
しかし、当時の開発陣はベストなタイヤサイズを選択しており、NSXは太いタイヤを履くとむしろ遅くなってしまった。1320kgの車重には、ブレーキもこのサイズで問題ないのだ。
対する現行型NSXはフロントが245、リアが305という大きなタイヤを履いてブレーキも巨大。見るからにマッスルで迫力ある外観だ。
初代NSXはしなやかな足で路面をしっかりとつかんで姿勢を乱さない。
ステアセンター付近のアソビが大きく感じるのだが、これは新車時もそうだった。
ヘアピンコーナーではフロントを軸にクルリと向きを変えるのだが、鈴鹿の130Rのような高速コーナーではリアがグッと踏ん張って高いスタビリティを発揮するので、安心して飛び込んでいける。
この絶妙なハンドリングをよくぞ作り上げたものだ。サスジオメトリーのよさだろう。
この軽快にしてしなやかな初代と対照的に、現行型NSXはV6+ツインターボ+3モーターの“全部乗せ”エンジンにSH-AWDなどの制御技術を駆使し、力業でグイグイ曲げていく。
ハンドルを切ってアクセルを踏み込むとLSDを入れたFFのようにフロントが切れ込んでいく。ここは他のクルマにはないエキサイティングなところ。
ただミドシップとしてはフロントが重いこともあり、コーナリング中のギャップで車体の上下動は大きくなる。これは初代NSXではまったく感じなかった挙動だ。
エンジンとモーターで叩き出されるパワーは強烈だが、R35GT-Rのようなエンジン単体が醸し出す強烈パワーとは異なり、モーターでアシストされる感覚はちょっと異次元で、未来的。
だが「人馬一体」感という点では、初代NSXが今でも勝っていると思う。
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