■質実剛健な味わいの走りは世界を虜に
取り立てて強くアピールしていないが、走りの実力も高かった。ヨーロッパ車を知り尽くした津田靖久主幹らしい味わいのある乗り味で、気持ちいいハンドリングとしなやかな乗り心地を高い次元で両立させていた。プリメーラは、日本車の持ち味である行き届いた気配りに加え、ドイツ車の質実剛健な味わいも備えていた。ワインディングロードや市街地を走ると、開発陣の情熱と愛情が感じ取れた。
サスペンションは、フロントが革新的なマルチリンク、リアはパラレルリンクストラットだ。路面からのインフォメーションがステアリングやシートを通して的確に伝わり、グリップ感や限界がわかりやすい。ステアリングを切り込んでいった時の操舵フィールはドイツ車もかくや、と思わせる仕上がりだった。
懐が深いから、意のままの走りを、安心して愉しむことができた。ファミリーグレードを運転しても、脚がいいから絶大な安心感があったのだ。また、引き締まった乗り味までも新鮮と感じた。
SR系の直列4気筒DOHCエンジンもいい仕上がりだった。1.8ℓ、2ℓともに力強いパワーフィーリングを身につけている。シングルポイントインジェクションを採用した初期型の1.8ℓエンジンでも活発な走りを楽しめた。FF車の新しい領域に踏み込んだP10型プリメーラは、すぐにFFファミリーカーのベンチマークになっている。
■乗り心地が良くなった2代目
職業柄、内外の自動車メーカーのエンジニアと話す機会が多く、彼らは異口同音にミドルクラスのライバルはプリメーラと言っていた。
海外ではGMグループのオペル、アウディ、ローバーなどが対抗心を燃やしていたし、日本のメーカーではホンダやマツダなどのエンジニアが、プリメーラをライバル視していた。取材の時、プライドの高いドイツのエンジニアが「プリメーラを参考に手を入れたけど、まだハンドリングなどの乗り味が追いついていないんだよ」と言った時は驚いた。当時、これほど高く評価された日本車はなかったので、誇らしく思ったものだ。
プリメーラはマイナーチェンジで乗り心地を少しよくするなど、ユーザーに寄り添っていた。初代が好評だったので、2代目もキープコンセプトで登場。ホイールベースを延ばし、リアサスペンションを変更して快適性を高めていた。
ヨーロッパの老舗メーカーを震撼させ、ヨーロッパ車を鮮やかに抜き去ったのが初代のP10型プリメーラだ。
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