トヨタの電池戦略が、いよいよ明確になった。9月7日の「電池・カーボンニュートラルに関する説明会」で、これまで以上に詳細な電池の開発状況と今後の見通しを明らかにしたのだ。
大容量化するのが難しいと言われてきた全固体電池も、ようやくクルマの駆動用バッテリーとして使えるほどに開発が進んだ。
2020年から試作車に搭載して走らせ、すでにナンバーも取得して公道での走行実験を繰り返しているらしい。ここまでオープンにしているのは、実用化までの目処がほとんどついている、ということなのだろう。
文/高根英幸、写真/TOYOTA
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■2020年代前半に全固体電池搭載車発売を明言! 第一弾はHVか
トヨタの前田昌彦CTOは、2020年代前半に全固体電池を搭載したクルマを発売する計画であることを説明会で明言した。ただし、これはEVではなく、ハイブリッド車にまずは採用されることになるそうだ。EVは大容量というだけでなく、急速充電などハイブリッド車にはない高い負荷状況が存在するからだろう。
急速充電は、バッテリーに500V以上の電圧をかけて電気を押し込むもので、バッテリー自体の能力がそれに対応していることはもちろん必須条件だが、それでもバッテリーに対して最も負荷の高い状況だけに、実用化へ慎重になる姿勢も理解できる。
中国製や韓国製のEVが炎上事故を起こしている報道を見れば、いかにこのあたりの品質が重要かわかるだろう。今後、急速充電はより高電圧、大電流化していくことが決まっているので、そこまで見据えた開発になっているのだ。
まずはハイブリッド車で全固体電池のメリットを活かしつつ、EV用に耐え得る耐久性と制御の熟成を図りながら量産体制を確立させて、EVでの導入時までにコストダウンを図ろうとしている計画だと思われる。
ともあれハイブリッド車用に実用化する道筋が見えたことは、その先のEVでの採用が現実へとグンと近付いたことは間違いない。
近いところでは来年2022年半ば、本格的なBEV、bZシリーズを発売することを明らかにしているが、残念ながらその第1弾となるbZ4Xには全固体電池は搭載されないようだ。しかし、EV専用プラットフォームの採用により、現在中国で販売されているC-HRのEVと比べて1割強、電費を改善できる見通しだ。
さて、世界中で開発競争が繰り広げられている全固体電池だが、来年には発売すると中国のEVベンチャー、NIOが発表している。が、その信憑性(全固体ではなく、半固体(?)という情報も)は今回のトヨタの説明会と比べれば遙かに低く、単なる目標数値に過ぎない印象だ。
テスラを率いるイーロン・マスクのように、派手なプレゼンを展開して信者を募る方法も、そろそろ飽きられているから、アドバルーンのように近未来の目標を唱えるだけでは通用しなくなってきている。
次世代電池の開発競争も投資家に技術をアピールし、消費者へブランドイメージを高めるだけでなく、本当に高い技術力と量産への実現性を兼ね備えていなければメッキは剥げてしまうのだ。
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