レアな装備を満載、いい意味で“生きた化石”
SRが販売トップを獲得した最大の要因は、やはり超ロングセラーのラストモデルだからだろう。これまで正直、人気に浮き沈みがあったとはいえ、43年もの間、親しまれてきたバイクが買えなくなるとなれば、SRにさほど興味がなかったライダーでも欲しくなるのは至極当然だ。
生産終了の理由は、2021年10月に導入が迫っていたバイク用ABSの義務化や、2022年11月から始まる次期排ガス規制が原因だ。
2018年にはキャニスターなどの追加で平成28年排ガス規制に対応したが、昔ながらのSOHC2バルブ空冷単気筒で厳格な新規制に対応するのはコスト的にも技術的にも難しい。また、シンプルな車体ゆえにABSユニットの搭載スペースを確保するのも困難。
「現行型をベースにSRらしさを維持することはできない」(関係者筋)とし、43年に及ぶ歴史に幕を降ろすことになった。
加えて、現代のバイクにはないレトロな装備も希少価値を高めている。空冷エンジンはもちろん、キックスターター、シリンダー内の圧縮を抜くデコンプレバー(!)などのメカを有する現行バイクは、少なくとも国内外の主要メーカーでは皆無。まさに1970年代バイクならではの“生きた化石”は、新車でもう手に入らない可能性が高い。
近頃、“密”を避けられる趣味として、新車中古車ともバイクが大人気だが、こうしたブームの中、名車であるSRが絶版となれば、販売トップも当然と思えてくる。
残念ながら、この人気には“転売”目的の購入もありそう。ゲーム機など様々なホビーで問題になっているが、定価で購入し、高額販売して利ざやを稼ぐ投資目的の購入も相当数あると見られる。転売のために、SRファンやバイク好きに車両が行き渡らないのであれば、実に悲しむべき事態だ。
名車が続々と終売、次はあの国民的ロングセラー車?
排ガス規制のため、SRのほかにも“名車”が次々と姿を消している。現行唯一の空冷直4を積むCB1100シリーズは、2021年10月にファイナルエディションが発表。10月8日~11月25日まで予約期間を設けたものの、あまりの人気に10月24日で予約を締め切った。
さらに同12月、ハーレーダビッドソン・フォーティエイトのファイナルエディションが発表された。フォーティエイトを含むスポーツスターシリーズは、国内市場で一番人気。入手困難でプレミア化していたこともあり、日本専用にファイナル仕様が設定された。
スポーツスターシリーズはこれまで空冷Vツインを搭載してきたが、次期排ガス規制に対応せず生産終了。新たに水冷エンジンのスポーツスターSが登場している。
さらに今後も名車の生産終了が相次ぐことなりそうだ。
これまたロングセラーのCB400シリーズが、ついに「絶版」との情報だ。水冷直4エンジンを搭載し、クラスの盟主として一時代を築いた名車ながら、2022年限りで規制に対応せず“殿堂入り”することが決まったようだ。
理由はコストと考えられる。CB400シリーズはほぼ国内専用モデルとなっており、日本での人気は高いものの、グローバル展開によるスケールメリットがない。
また、400クラスながらネイキッドのCB400SFは車両価格が約90万円、カウル付きのCB400SBは100万円超となっており、クラス最高額となる。エンジンの基本設計も古く、排ガス規制を通すため大幅なメスを入れる必要がある場合、車両価格は200万円近くに達するとも言われているのだ。
50ccを除く全ての新車に排ガス規制が適用される2022年11月までに、一体どれだけの名車が消えてしまうのか……!? 今後の動向に注目したい。
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