ウワサは本当だった。ヤマハの超ロングセラー・SR400が2021年型をもって生産を終了する。最終型はSR400ファイナルエディション及びSR400ファイナルエディションリミッテドの2タイプが用意され、リミテッドはサンバースト(ぼかし)塗装が施される。
このSR400最終型の詳細や過去のサンバーストカラーのヒストリー、SRを特徴づける定番カスタムなどを振り返ってみたい。
文/市本行平、写真/YAMAHA、Orange Boulevard
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節目を飾ってきたサンバースト塗装はこれで6度目、初のブラックサンバーストは超レアだ
1978年のデビュー以来、形を変えず43年に渡り愛され続けてきたSR400が、今回発表されたSR400ファイナルエディション/リミテッドを最後に生産を終了することが発表された。空冷ビッグシングル&キックスターターのスポーツバイクは他になく、無二の個性が支持されてきたSR400だけに、生産終了を惜しむ声はかなり大きなものになるはずだ。終了の理由については明らかにされていないが、ABS義務化の期限が今年の秋に迫っているからだろう。
そして、最終型を飾るのはやはりサンバースト塗装のリミテッド仕様だった。サンバーストはエレキギターなどで目にする塗装法で、中心から外側に向かって色が濃くなっていくグラデーションが美しい楽器製造がルーツのヤマハならではのもの。これまで25周年、30周年、40周年の節目でもサンバースト塗装の限定車がリリースされており、最後までSRらしい幕の閉じ方と言える。
最終型のサンバースト塗装は初のブラックを採用。これまでは茶色と緑を交互に繰り返してきたサンバーストに、今回は究極のクラッシックカラーと言えるブラックを投入。SR400ファイナルエディションリミテッドは43年に渡るSR400の歴史の中でもかなりのレアモデルに位置づけられるだろう。限定台数は過去の周年モデルが500台だったのに対し倍の1000台が用意されるが、即完売になりそうだ。
価格は通常のSR400ファイナルエディションが60万5000円で同リミテッドは74万8000円と14万3000円値上がりするが、タンクの塗装は職人による手作業が施されたもの。他にもシリアルナンバー入り電鋳エンブレム、真鍮製音叉エンブレム、本革調シート、新色アルマイトのホイールリム、「Final Edition」を記した黒い文字盤のメーターなどを装備し、ヤマハのモノ作りを結集させている。
2021年はベストセラー奪取も視野!? 通常のSR400ファイナルエディションは定番カラーの安心感
通常のSR400ファイナルエディションは定番のグラフィックパターンを採用した シンプルなダークグレー と単色のブルーを採用。特に定番のグラフィックパターンは2008年型以来でこの10年ほど見られなかっただけに人気となりそうだ。タンクには「Final Edition」のロゴも配されており、特別感も演出している。
さらに特筆すべきは、通常モデルは計画台数を5000台としており、リミテッドの1000台も含めると計6000台の生産体制を敷いているところ。これを2021年中に売りった場合には、43年目にしてSR400がベストセラーに輝くであろうことを意味している。
二輪車新聞によると2020年の小型二輪(251cc以上)販売1位はカワサキ・Z900RS/カフェの4080台。また、400ccクラス1位はカワサキ・ニンジャ400の2650台なので、2021年型のSR400が6000台売れるとすると、余裕の2冠達成になるのだ。
ヤマハは、2020年に35年のロングセラーモデルだったセロー250のファイナルエディションをリリースし、これが6200台(二輪車新聞調べ)のセールスを記録。なんと計画台数4000台の150%を達成する大ヒットとなり、2019年の2550台(二輪車新聞調べ)からも243%アップしている。SR400についても計画台数から上方に推移することも視野に入れているという情報で、ひょっとすると1万台の大台も!? もし、そこまで売れることになれば、小型二輪では近年稀に見る大ヒットモデルになるだろう。
SRといえばカスタム! 英国旧車がお手本だった
43年に渡るロングセラーとなったSRには、振り返ると二つの側面があったと言えるだろう。デビュー当初はスポーツ新時代を提唱し、軽量・スリム・コンパクトさを追求するためにビッグシングルのエンジンが選択された。SRのコンセプトモデルとも言える「ロードボンバー」が1977年の鈴鹿6耐で18位を獲得(翌年の8耐では8位)したこともあり、スポーツバイクとしての成り立ちを持っているのだ。この流れもあり、1978年のデビュー後もタイムトンネルレースなどで多くのライダーがSRでレースを楽しんでいた。
もう一つは、クラシックバイクとしての側面で、キックスタートの空冷ビッグシングルという昔ながらの装備が、時代の変化とともに希少価値を増したことで浮き彫りになった。ヤマハとしてもこれを十分意識し、当初はフロントディスクブレーキにキャストホイールも用意されていた装備を、フロントドラムブレーキとスポークホイールに変更している。これだけも十分クラシックテイスト満点だったが、1990年前後にはBSAゴールドスターやノートンマンクスイメージにカスタムすることが一大ムーブメントになっていった。
ロングセラーモデルだけに世代によってSRに対する印象は異なるが、現在でも多くのライダーに愛されている理由は、スポーツであり、昔ながらのクラッシックモデルの佇まいを持っているという二つの側面があるからに他ならない。今後もこのエッセンスを引き継いだSR第二章にぜひとも期待したい。