1980年生まれ、「松坂世代」の魅力的なクルマたちを追う!

■スカイラインの子分的存在、日産ラングレー

 1970年にいち早くFF方式のチェリーを送り出した日産も、後継のパルサーの兄弟車を1980年6月に投入した。それがプリンス系列で販売したラングレーだ。

 スカイラインの下のポジションを受け持つ3ドアのFFコンパクトカーで、5代目スカイライン・ジャパンと似た角形ヘッドライトと横線基調のフロントマスクが与えられている。エンジンは熟成の域に達した1.4LのA14型直列4気筒OHVだ。こちらも軽やかなフットワークが魅力だった。

日産ラングレーの初代モデル。ラングレーは3世代目まで続き、1990年に生産終了
日産ラングレーの初代モデル。ラングレーは3世代目まで続き、1990年に生産終了

 デビューから1年後にエンジンを1.5LのE15型4気筒SOHCに換装し、1982年春には第2世代にバトンを託している。わずか2年足らずの販売に終わり、現存数もわずかだ。だが、初代ラングレーは強烈な印象を残した。

お父さんたちの憧れ! マークII3兄弟

 上級クラスはオーソドックスな後輪駆動を踏襲している。だが、1980年に新ブランドが次々に誕生し、のちの「ハイソサエティカー」ブームの足がかりを築いた。ハイオーナーカーと呼ばれる市場は「ジャパン」のニックネームを持つスカイラインがヒット街道をばく進している。

 この快走に待ったをかけるべくトヨタが春に送り出したのがクレスタだ。4月から営業を開始するビスタ店のフラッグシップと位置づけられるパーソナルセダンで、4ドアハードトップ風の伸びやかなフォルムで登場した。

マークII3兄弟のなかでも、クレスタは高級なイメージを前面に出していた
マークII3兄弟のなかでも、クレスタは高級なイメージを前面に出していた

 クレスタは1G-EU型と名付けられた新世代ストレート6を主役の座に据え、1981年以降はパワフルなターボ搭載車やDOHC4バルブのツインカム24などを仲間に加えている。

 50系クレスタから半年後、トヨタはコロナマークIIと兄弟車のチェイサーをモデルチェンジし、60系とした。4代目マークIIと2代目チェイサーはクレスタとメカニズムを共有する兄弟車だ。だが、巧みな演出とデザイン変更によって三者三様の魅力を放っている。

 第4世代のマークIIは4ドアセダンと新設定の4ドアハードトップ、そしてワゴンをラインアップし、パワーユニットは2.8Lの5M-EU型直列6気筒SOHCと2Lの1G-EU型を中心に6機種を揃えた。

 スポーティ感覚を売りにするチェイサーは4ドアハードトップと4ドアセダンがあり、こちらはクレスタと同じように2.8Lの直列6気筒エンジンの設定はない。多くのボディカラーを用意したが、後半はスーパーホワイトが大ヒット。次々に記録を更新したマークII3兄弟はハイソカー旋風を巻き起こし、社会現象にもなっている。

上質志向なレパード&ローレル

 日産勢も負けてはいない。マークIIが正式発表される直前に新感覚パーソナルカーの初代レパードを送り込んだ。クーペ的なシルエットの4ドアセダンと2ドアハードトップがあり、フロントマスクの違う兄弟車のレパードTR-Xも用意された。

日産店で取り扱っていたレパードに対し、チェリー店で取り扱っていたのがレパードTR-X。TR-Xと書いて「トライエックス」と読む
日産店で取り扱っていたレパードに対し、チェリー店で取り扱っていたのがレパードTR-X。TR-Xと書いて「トライエックス」と読む

 マークIIに対抗心を燃やし、世界初のメカニズムも多い。その筆頭はフェンダーミラーワイパーだ。車高を自動的に調整するオートレベライザーや日産初のロックアプ機構付き3速ATも目を引く。エンジンは2.8LのL28E型と2LのL20E型直列6気筒SOHCを主役にしている。ソアラの登場によって話題性は薄れたが、登場した時は強烈なインパクトを放った。

 また、11月には4代目のC31ローレルがベールを脱ぐ。フォーマル色が強いハイオーナーカーだが、スカイラインの育ての親である櫻井眞一郎氏が率いる旧プリンス系エンジニアが開発を主導するようになる。その結果、上質ムードに加え、スポーティな性格も強まった。2ドアハードトップを廃し、これに代えて4ドアハードトップを主役としている。

「アウトバーンの旋風」がキャッチコピーだったC31型ローレル。スタイリッシュなボディデザインによる空気抵抗数値(cd値)は0.38で、当時としては最高水準の数値だった
「アウトバーンの旋風」がキャッチコピーだったC31型ローレル。スタイリッシュなボディデザインによる空気抵抗数値(cd値)は0.38で、当時としては最高水準の数値だった

 心臓はレパードやスカイラインと同じL型系の直列6気筒SOHCで、レパードなどと同じように1981年にはターボ搭載車を追加した。この時期は、トヨタ、日産とも6気筒エンジンを積むハイオーナーカーが月に5000台以上、コンスタントに売れたのだから驚きだ。

初代カムリはFRスポーツセダンだった

 4気筒エンジン搭載車で注目したいのは、スペシャルティカーのセリカに加わった4ドアのスポーツセダン、セリカカムリである。1980年1月にデビューしたが、メカニズムの多くはカリーナと共通だ。フロントマスクとリアコンビネーションランプなどをカローラ店のユーザー好みに手直しして販売した。

現在はアメリカが主戦場のカムリ。初代はコンパクトなボディを後輪で駆動するスポーツセダンというべき存在だった
現在はアメリカが主戦場のカムリ。初代はコンパクトなボディを後輪で駆動するスポーツセダンというべき存在だった

 エンジンは1.8Lの13T-U型と1.6Lの12T-U型直列4気筒OHVでスタート。夏に2Lの18R-GEU型直列4気筒DOHCエンジンを積む2000GTを加え、静かなブームとなる。このセリカカムリは後輪駆動のスポーツセダンで、アルテッツァの事実上のご先祖だった。だが、1982年に登場するV10系カムリは、ファミリーを狙ったFFの4ドアセダンだ。わずか一代だけで終わってしまった。

本格クロカンも熱かった!

 RVやクロスカントリー4WDと呼ばれていたSUVは、トヨタと日産のリーダーモデルが相次いで新型になっている。日産は6月にパトロールをモデルチェンジし、日本ではサファリの名で発売した。

愛嬌のある丸目が特徴的な初代サファリの初期型。マイナーチェンジにより角目へと変更される
愛嬌のある丸目が特徴的な初代サファリの初期型。マイナーチェンジにより角目へと変更される

 2ドアのショートボディ、4ドアのロングボディともにストレート基調の洗練されたデザインに生まれ変わり、エンジンは3.3Lの直列6気筒ディーゼルを搭載。これに2段の副変速機を持つ4速MTを組み合わせている。日本でファンを増やすことに成功したから、最大のライバルだったランドクルーザー40系のモデルチェンジ計画を早めさせた。

 ライバルのランドクルーザーは、8月にロングボディのFJ56Vがモデルチェンジ。60系ランクルは伸びやかで力強いフォルムに生まれ変わり、新たなファンの獲得にも成功する。4.2Lの直列6気筒ガソリンエンジンに加え、3.2Lと3.4Lの直列6気筒ディーゼルを設定し、ハイウェイからオフロードまで余裕の走りを見せつけた。

悪路走破性だけでなく、乗用車的要素も強まった60系ランドクルーザー
悪路走破性だけでなく、乗用車的要素も強まった60系ランドクルーザー

 居住性と快適性も大きく向上させるなど、クロカン4WDのイメージを大きく変えたのが新世代の60系ランクルだ。1980年は日本車にとってヴィンテージイヤーだった。また、日本車が大きく変わった年でもあった。

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