■同じく素うどんカーだった? ダイハツエッセ
アルトに乗って思い出したのは、かつて私が購入したダイハツエッセである。
エッセが登場したのは2005年。試乗して衝撃を受けた。最大の衝撃は、ロングストローク型の新エンジンの低速トルクだった。それまでの軽のエンジンは、スクエアかショートストロークタイプばかりで、ロングストロークはエッセに積まれたKF-VE型が初。車両重量の軽さもあって、ブチ回さなくてもラクラク加速する感覚は、それまでの軽にないものだった。
しかもエッセはデザインがよかった。台形のフォルムはいかにも安定感があり、ルノー5などのかつての名車を彷彿とさせつつ、すべてがシンプルで、初代フィアットパンダのようにムダがない。この素うどんのようなコンセプトは、カーマニアである私のココロに深く刺さった。
これでMT車だったらどんなに楽しいだろう。そう思ったが、エッセのMTモデルは、当初最廉価グレードのECOのみで、それ以外は3ATか4AT。もちろん最廉価グレードなんて、広報車にもディーラー試乗車にも用意されていなかったから、試乗することはできない。エッセECOは、まだ見ぬあこがれのクルマになった。
■安くないとね。素うどんだもの
そんなことを原稿に書いていたら、知り合いがそれを読み、なんとオレンジ色のエッセECOを買ったという。価格は68万2000円。エッセは価格の安さも光っていた。
彼は「エッセECO、すごくいいよ」と言いつつ、買って半年後に、「あまりにも周囲のクルマにナメられるから、手放すことにしたんだ。買う?」と声をかけてくれた。私は喜び勇んで「買う買う~!」と答えたのでありました。
こうしてオレンジ色のエッセECOが我が家にやってきた。それはもう、想像した通りの楽しいクルマだった。知り合いは「ナメられまくる」と言っていたが、私は特に感じなかった。鈍感なのだろうか。
さすがに最廉価グレードだけに、装備は最小限。エアコン、パワステ、パワーウィンドウはついていたが、致命的なのは集中ドアロックがなかったことだ。昔買った日産ADワゴンにも集中ドアロックがなくて苦労したが、またしても集中ドアロックに泣かされてしまった。
後席はあまり使わないからまだいいのだが、助手席のドアロックが連動しないのは本当に面倒くさい。しかたなく激安の後付け集中ドアロックを、前ドアだけに組み込んだ。
■アルトの標準装備は優れている
それを思うと、アルトの装備は本当に凄い。何もかもついている。試乗したハイブリッドXには、全方位モニターやヘッドアップディスプレイ、標識認識機能まで付いていた(パッケージオプション)。正直、小さくて車両の四隅もつかみやすいアルトに、全方位モニターまでは要らないと思いましたけど、付けられるということはスバラシイ!
いや、重要なのは装備よりも走りだ。装備はエアコン、パワステ、パワーウィンドウと集中ドアロックさえあれば、まず困ることはない。そういえばエッセECOにはタコメーターもなかった。アルトにもないけど、エッセECOはMT車だけに、「タコメーター、欲しいなぁ」と思って、これも後付けしました。
でもまぁ、なくても困りません。それよりも重要なのは、軽快な走りである。エッセの軽さと実用トルクの太さは、アルトそっくりだ。まさに素うどんのよさ!
エッセの台形フォルムは、驚異的に四隅の見切りがよかった。すべての軽自動車はサイズが小さくて駐車がラクだけど、エッセのラクさはケタはずれだった。コインパーキングではまさに無敵!
どんな狭い奥まった駐車スペースでも、軽くブチ込むことができた。無敵感ってのは速さやオラオラ感だけじゃないのだよ!
アルトも駐車はとってもラクだけど、正直エッセには負ける。全方位モニターよりも、台形フォルムの勝利である。
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