■インテリアの質感は並み。エンジンは日本国内合わせた改良も功奏せず、販売は低迷
インドの乗用車は大抵、ダッシュボード上に小さな神棚のようなものが置かれており、そこにヒンドゥー教の神(ゾウ神や女神など)が祭られていたが、バレーノでも思わず神棚を目で探してしまいました。
エンジンは4気筒1.2LのNA(CVA)と3気筒1Lのダウンサイジングターボ(6AT)の2種類。1.2NAは定評あるエンジンで、実用性は充分だった。
1Lターボは、国産初の本格的ダウンサイジングターボということで、期待が大きかった。パワーやトルクはおおむねそれに応えていたが、欧州仕様ベースのためハイオク指定という点は、国産ベーシックカーとしては致命的だった。
そこでスズキは2年後に、日本向けの1Lターボをレギュラーガソリン仕様に変更したが、最高出力は111psから102psに、最大トルクは16.3kgmから15.3kgmにダウン。明らかにパンチが消えており、全体に物足りない出来になってしまった。
ということで日本におけるバレーノは、日本市場とのミスマッチ感がどうにも強く、「これは売れるはずないな」という私の直感は当たった。結局バレーノは、2020年をもって、日本での販売を終了したのである。
個人的には、やはりダッシュボードのデザインと質感が絶望的にマイナス。インド製だからと言って価格が安いわけでもなく、このクルマに141万~172万円出すならば、スイフトを買ったほうが300倍いいと考えるのが自然だろう。
今でもたまに街でバレーノを見かけるが、そのたびに私は「いったいどういう人が乗っているのか!?」と、非常に気になる。おそらく、独自の価値観を確立している人に違いない。尊敬である。
■インドではプレミアムブランド車として絶好調! トヨタへOEM供給開始!!
このように、日本では珍車に終わったバレーノだが、インドではプレミアム販売網「NEXA」で販売され、大ヒットを続けている。2015年にインドで発売されて以来、2021年11月には、インド国内累計販売100万台を突破したというから凄い。日本では結局、4年間で1万台も売れなかったことを思うと、あまりの差に愕然とする。
ちなみに2021年のインドでの販売ランキングは、1位が「ワゴンR」(18万3851台)、2位が「スイフト」(17万5052台)。そしてバレーノは、僅差の第3位(17万2241台)に輝いている!
バレーノの好評を受け、インドではグランツァ(最終型スターレットのグレード名)の車名でトヨタにOEM供給されている。アフリカ市場では同じく「スターレット」の車名で、トヨタ車として売られている。
日本ではメタメタだったバレーノだが、インドやアフリカでは大好評なのだ。スズキは途上国のユーザーのニーズをしっかり捉えている。
■インドではモデルチェンジを実施してさらなる進化! 残念ながら日本では販売されず
そしてバレーノは今年2月22日、インドで全面改良を受けた。全体のフォルムは変わっていないが、フロントマスクはグリルが大型化されて「ゾウさんの鼻」のようなイメージは消え、プレミアムハッチバックらしい上質感を得ている。
この新型バレーノ、インドで生産され、アフリカ、中南米、中東などへの輸出も順次開始されるという。そのなかには日本は含まれていない。ある意味当然だが……。
思えばスズキは、初代SX4やスプラッシュといった、どう見ても日本市場向きじゃないモデルも、積極的に日本市場に投入してくれている。どちらも主に欧州向けモデルだったので、一部のカーマニアから高い評価を得たが、販売はふるわなかった。
バレーノの場合はインド向けだったので、我々カーマニアにもかなり理解不能だったが、「どうせ日本じゃ売れないだろう」と即断せず、とりあえず入れてくれるだけでもありがたい。
私はバレーノに乗ったことで、現在のインド自動車市場の一端を垣間見ることができた。スズキさんありがとう! 今後もインドで大いに頑張ってください! 応援してます!!
【画像ギャラリー】今や兄弟車!! スズキ「バレーノ」とトヨタ「スターレット」の足跡を追う!!(18枚)画像ギャラリー
コメント
コメントの使い方