■MTを電動でリモートする時代が来る!
自動運転とMTが両立するのか、なんて疑問に思う人もいるかもしれない。しかし、技術的には可能だ。それはバイワイヤー、つまり電動化によりMTを完全リモート制御してしまうことだ。最新のクルマたちではアクセルによる加速、そしてブレーキによる減速といった操作はECUが制御している。
ドライバーの操作がダイレクトにクルマを動かすのではなく、一度電気信号に変換して、ECUが適切な操作量に修正してスロットルバルブの開閉量やブレーキの制動力を制御しているのだ。
MTの操作も、いずれはそうなる可能性がある。クラッチペダルを踏んだ勢いや踏み込み量をセンサーで検知して、電動アクチュエーターがクラッチを断続、シフトレバーの操作も実際にギアを切り替えるのは電動アクチュエーターだ。そうすることで、先進の運転支援システムに対応し、ドライバーの体調急変にも自動運転モードへの切り替えで対応できる。
そんなシステムが、今までのMT車がもつダイレクトなフィーリングを再現できるのか、疑問に思う人もいるだろう。厳密には、リンクやワイヤー、油圧でダイレクトに操作していた操作と同じダイレクト感は実現することは難しくても、かなりのレベルまで操作感を演出することは可能になるハズだ。
■MTはこれからどうなっていくのか、高効率化の可能性は?
今や日本市場の販売台数におけるMT車の比率は、わずか2.6%(2017年)。前述のマツダですら、ロードスターのMT比率は7割を超えているけれど、全体としては1割以下の7.4%にとどまっている。
ある意味、マツダが日本のMT比率を支えている状況なのである。ちなみに北米市場のMT比率もほぼ同じ3%以下。アメリカでMT車を選ぶのはカーマニアのステイタスになっているが、日本でも同じ状態になりつつある。
クルマが、クルマとしての魅力を備えたまま存続していくためには、MTのような操縦する喜びは絶対に必要だ。エンジンのトルクカーブや振動、回転フィールがドライバーを夢中にさせるのは、それをダイレクトに伝えるMTの存在があってこそ。
それでもMTが機械的にこれ以上の進化を遂げるのは、やっぱり難しい。シーケンシャル式のシフトにして多段化することもできるけれど、それは速く走るためには有効でも、MTを操作して運転を楽しむという行為にはプラスに働くことはあまりないからだ。
今以上の燃費や環境性能を引き出すには、マイルドハイブリッドとの組み合せがまずは効果的だ。スズキのAGSのようにハイブリッドでシフトショックを解消させる仕様もアリだが、シフト操作を楽しみたいMT派には物足りないから、やはり既存のMTのままモーターで加速をアシストする仕様がベストだろう。
■MTはなくならないが、限られたものになっていく!
ともあれ、当分の間はMT車はなくならない。ドイツ車でポルシェやVWゴルフGTIなどのスポーツモデルを中心にMT車が設定されるのは、ニュルブルクリンク北コースがあり、サーキットやアウトバーン、郊外の一般道で運転を楽しむ層が一定以上存在するから。
フィアットやルノーがコンパクトカーを中心にMT車を用意しているのも、キビキビと街中を走らせることを楽しむMT派のドライバーが多いからだ。ドイツではなんと新車販売の83%がMT車で、英国も84%、イタリアやフランスではさらに高く9割を超えると言われている。欧州では日本とMT比率が逆転しているのだ。
今後はバイワイヤー技術によって、MTの仕様も二極化していくだろう。シェアカーの台頭によりMTは大衆車では減少し、商用車やスポーツモデルに特化していくのは間違いない。つまりMTを駆使して運転を楽しむという趣味は、これからますます限られたものになっていくのだ。一度は味わってみたいと思っているなら、早めに手に入れることをオススメする。
コメント
コメントの使い方