【これで決着!ブレーキは右足か左足か】 意外な最善策は「両足」!?

■構造上、左足ブレーキに対応している?

 では、ペダル回りの造りは左足ブレーキに対応しているのだろうか? アクセルとブレーキの2ペダル仕様になっているATのブレーキペダルは、アクセル/ブレーキ/クラッチからなる3ペダル仕様のMTより大きくなっている。その理由として2つの説がある。

 まず、もっとも説得力があるのが、クルマにとってブレーキは最も大切なパーツゆえ、踏み外すことなく、力を入れやすい設計にしたという説。

 もうひとつが、もともと左足ブレーキを意識した設定というもの。ATは長距離を移動する頻度が高いがためのイージードライブがコンセプトのアメリカで誕生した機構ゆえ、左足でも扱いやすいようブレーキペダルを大型化させたとという説だ。

 アクセルは右足、ブレーキは左足、と分業させることで疲労を軽減できるからで、アメリカ人は左足ブレーキを使う人が多いという話もよく聞く。

 ところが、知り合いのアメリカ人(ハワイ在中)に聞いてみたところ「左足は使わないよ。ブレーキも右足だよ普通。みんなそうしているよ」とのこと。イージードライブ優先のハワイだからかもしれないが……。

■現行の国産車では左足ブレーキ移行は無理

 また、現行のAT車のペダル配置はMT車からクラッチペダルを取り除いただけの構造で、右足でブレーキペダルを操作することを前提としているため、ステアリングシャフトの右横からほぼ中心に向かって伸びた配置。横幅の広いペダルとはいえ左足で操作がしやすい位置というわけではない。

 しかも、自動車メーカーによってはブレーキペダルをあえて右に寄せることで、間違えて左足でブレーキを踏んでしまわないよう設計段階から配慮しているケースもあり、取扱説明書に「ブレーキは右足で踏む」ように明記し、左足ブレーキを明確に禁止事項として記載されていることもある。

 このため、左足でブレーキ操作を行おうとすると、下半身を右寄りにねじった不自然な体勢となり、長時間行うと腰が痛くなる。咄嗟に足を踏ん張った際、アクセルを踏んでいた右足の行き場がなくなることにもなる。

 また、運転中にブレーキペダルに左足を乗せたままにしたりすると半ブレーキ状態になりやすく、用もなく「パッパッ」とブレーキランプを点けやすい。このような愚行は、後続車にとって迷惑そのもの。後方に続くクルマにドミノ倒しのようにブレーキを踏ませることになり、渋滞の原因のひとつとなるからだ。

 かといって、ブレーキから左足を離していると、アクセルペダルからブレーキペダルを踏み換えなければならないときと同様の「空走距離」が発生する。

 そんなわけで、ブレーキペダルを「右足で踏む」ことを前提としたペダル配置となっている現行の国産車で、左足ブレーキへの全面移行には無理があるといわざるを得ない。

 ただし、渋滞で足が疲れたときや坂道発進時の右足の補助としては有効であることは間違いなく、安全性も高まる。そんな補助的な操作を基本に、徐々に左ブレーキを慣れさせていき、将来左足ブレーキを前提とした車両が登場したときに備える。現時点ではこれが正しい判断といえるのではなかろうか。

■両足でブレーキを踏むという選択肢

こちらが両足でブレーキを踏んだ状態

 さらに、その左足の補助的な操作を一歩進めた【右と左の「両足でブレーキを踏む」】という選択肢もある。実は、これこそ現状考えられる最善策といえるのだ。

 踏み間違いを犯した際、なぜ対処できずにパニックを起こしたのだろうか? それは「ありえない」ことが起きたからで、右足だろうが、左足だろうが、どちらでブレーキを操作するにしても踏み間違いを起こす可能性は常につきまとう。

 その点、無意識のうちに両足ともブレーキペダル上に移動する習慣を身につければ、万が一にも右足が踏み間違いを犯したとしても左足がブレーキ力を確保できるため、急激な加速は防げぐことができる。

 とにかく、人間はミスを犯す動物。その際にどう対処するか。つまり、ミスすることを前提にした上での対策こそが、人間工学に基づいた本来の安全策。安全を優先するなら「両足ブレーキ」がベストだろう。

 なお、踏み間違い事故というと、とかく高齢ドライバーに注目しがちだが、現実には若い世代まで満遍なく発生している。それでも高齢者が特に問題ということなら、MT車への乗り替えを促進するのがもっとも確実な踏み間違い防止策だ(MT車の選択肢は極高に少ないものではなく、軽などは結構ラインアップされている)。

 MTなら、操作手順やクラッチを踏み込んだり離すタイミングを間違えればたちまちエンスト。つまり、停止するからだ。高齢者は年代的にMT免許を所持している(還暦を迎えた筆者もその内の1人)はずで、それでMTには乗れないということなら、酷な言い方かもしれないがそろそろ免許証の返納を検討すべき時期にきているのではなかろうか。

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