■規制を超えて、楽しい小型車
石油ショック、排ガス規制、安全基準といった、クルマにとってネガティヴな規制の嵐が押し寄せてきたのは1970年代中盤だ。
厳しい規制を「CVCC」という独自の技術でクリアしたホンダ・シビックは、ひとつ時代の変化に対応した小型車としてその名を残す。
だが、表題のコンパクトカーというと、シビック時代がひとつ落ち着いたあとに登場してきた同じホンダのシティがふさわしい。

写真は1983年登場のインタークーラー付きの「ターボII」。110psのパワーを誇り「韋駄天」という印象がピッタリの元気のよさだった
ホンダ・シティは1L級のエンジンを搭載した前輪駆動車。1981年に登場してきた。特徴的なのはコンパクトカーであるが故の特徴的ディメンジョン。
つまり、「トールボーイ」というキャッチで、小型車にありがちな窮屈感、閉鎖感を排除したこと。
コンパクトカーは大きなクルマに対して我慢して選ばれるものではなく、別の楽しみがあることを主張したのだった。

スポーティなイメージの強いシティだが、カブリオレで洗練された雰囲気を演出していた。幌の設計はあのピニンファリーナだ
たとえば、ピニンファリーナが協力したお洒落なシティ・カブリオを加えたり、一方ではジャジャ馬仕様のシティ・ターボII「ブルドッグ」などをラインアップして、いっそう楽しさを加えたのだった。
■1990年代のコンパクトは……
さて、残るはもう1台だ。ふたたび落選話になるのだが、トヨタ・ヴィッツ、ホンダ・フィットなど正統派のコンパクトカー。
日産キューブ(二代目Z11系)、トヨタ・ファンカーゴといったユーティリティの高いモデル、クルマ好きに人気のスズキ・スイフト(これも二代目がなおいいなあ)などは、2000年以降に広まったモデルだった。

室内空間の使い方など日本のコンパクトのお手本ともなった1999年登場のヴィッツ。現代にいたるまで初代ヴィッツのパッケージは引き継がれる
もっと1990年代に広く受け容れられたコンパクトカーはないのだろうか。
実は軽自動車が1990年1月から660ccへと拡大されたこともあって、コンパクトカーは少し影が薄くなっていたのだ。そんななかで健闘したのが、マツダ・デミオということになるだろうか。
デミオは1996年にそれまでのフェスティバ(懐かしいなあ)のフロアを利用して登場してきた。
フロントに横置き搭載される直列4気筒SOHC16ヴァルヴ・エンジンは、1.3Lと1.5Lの2種が選べた。ベイシックな1.3Lモデルで83PS。
先述、軽の660cc化に伴って主流は1.3L級に移り、1.0L級のエンジンは少数派になっていたのだ。

多くの支持を集めた1996年登場のデミオ。使い勝手もよかった印象。ちなみにこのデミオの好調でマツダは業績が回復したとまで言われている
それに、SOHCながら16ヴァルヴに進化しているのも見逃せない。要するに、コンパクトカーといえども、スペックその他は、上級モデルと共通化が進んでいたのだ。
こうして現代につづくのだが、新車販売台数のなかで「軽」の割合などを考えるだに、コンパクトカーは生きにくい時代だ。小さくてきびきびしていて、それでいて格好よいクルマはいいのになあ。
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