■従来と違うスーパーチャージャーの使われ方
機械式スーパーチャージャーはターボと違って、捨てている排気ガスのエネルギーではなく、エンジンの駆動力を使ってコンプレッサーを回すので、駆動損失がある。それを差し引いても中低速域でトルクアップが望めるため、車重の重い高級車を中心に搭載されたのである。
ターボに比べてエンジンの反応が良く、NAのようにアクセルペダルの動きに俊敏に反応してくれるのがスーパーチャージャーのメリット。そのためグループB時代のWRCを戦ったラリーカー、ランチア・デルタS4や日産マーチスーパーターボ、VWのTSIエンジンのように低回転域はスーパーチャージャーで過給し、中高回転域はターボに切り替えるといったダブル過給機エンジンも登場した。
だが、このスーパーチャージャーもパワーアップのためだけに使われるデバイスではなくなってきた。
例えば燃料電池車のトヨタ・ミライ。エンジンを搭載していない、このFCVにもスーパーチャージャーが使われているのだ。それは、燃料電池スタックに酸素を供給するために大気を圧送するため。フロントマスクに大型のダクトを備えているだけでは不十分で、車体の内部で強制的にスタックに吹き付けているのだ。
それと間もなく登場するマツダのスーパーリーンバーンエンジン、スカイアクティブX。予混合圧縮着火というディーゼルエンジンのような燃焼をガソリンで実現する、夢のようなエンジンにもスーパーチャージャーが使われている。40:1という超希薄燃焼を実現するために、燃焼室に大量の空気を送り込むのだ。
■ターボチャージャーの基本的なメカニズムとその進化
さて、ターボチャージャーに話を戻そう。ターボチャージャーのコンプレッサー側は、遠心式の一種であるターボ式ポンプとして様々な機械に使われている。クルマでもウォーターポンプの一種に使われるなど、隠れた部分に使われているのだ。
基本的なターボチャージャーのスタイルは、排気側のタービンには外周部分から排気ガスが取り込まれ、その圧力でタービンホイールを回して、エネルギーを失った排気ガスは中心部から抜けていく。吸気側のコンプレッサーはその逆で、中心部分から空気を取り込み、コンプレッサーホイールが回転することで遠心力により吸入された空気は圧縮されなから外周のパイプからインタークーラーを経てエンジンへ圧送されていく。
排気側のタービンと吸気側のコンプレッサーにそれぞれ組み込まれているホイールがシャフトで連結され、シャフトはエンジンオイルの上に浮いた状態で回転する。両側のホイールがバランスし、軸受けはオイルフローティングという構造だから、1分間に10万〜20万回転で回り、空気を圧縮してエンジンに送り込めるのだ。
これまでの間、さらに効率を高めるため、ターボには様々な工夫が盛り込まれてきた。例えば軸受け部分にはより抵抗の少ないボールベアリングを併用したモノが登場したり、タービンホイールを軽量で耐熱性の高いセラミック製にして慣性重量を軽減することでレスポンスの向上を図るタイプも開発された。
タービンやコンプレッサーのホイールのデザインもより幅広い回転数で有効な風量が得られるよう、CFD(数値流体シミュレーション)で検証しながら改善が図られてきた。以前はタービンホイールやコンプレッサーホイールは鋳造で作られていたが、最近は削り出しでより複雑な形状を追求するタービンメーカーも現われている。
排気ガスが少ない低回転域では圧力を高めてタービンを回すための絞り弁を装着したり、タービン内の流路を2つに分けて振り分けて使うツインスクロールターボも生み出された。メーカーによっては、このツインスクロールターボを、各気筒の排気干渉を防ぐために使うところもあった。これはツインターボに近い効果を1つのタービンで狙ったモノだ。
さらに絞り弁の考え方をより発展させたVG(可変容量)ターボも登場した。これはタービンホイールの周囲を小さなフィンで囲み、排気ガスが少ない時にはフィンを閉じると流路が狭くなると同時にホイールに対して円周方向の流れが強くなるため、タービンホイールを回す力を高める効果を発揮するのだ。
乗用車でもトラックでもディーゼルエンジンでは2ステージターボが普及しつつある。これはターボで過給した空気をインタークーラーで冷やして、もう一度過給するというもので、昔のツインターボやシーケンシャルターボとは違う、えげつないほど過給をするシステムだ。
BMWは最新のディーゼル直列6気筒に4つのタービンを搭載するほどタービンを盛大に活用している。ツインターボと2ステージターボを組み合せたものだ。こうなるとエンジンはターボによって駆動されていると思いたくなるほど、ターボがエンジンを支配している感じすらしてくる。
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