ターボは今後減るのか?増えるのか? パワーアップだけじゃない ターボのいろんな使い道

 ターボといえば、パワーアップするためのものと早合点してはいないでしょうか? 最近では、大排気量NAから排気量を大幅ダウンしてターボと装着した燃費向上のためのダウンサイジングターボが主流になっています。

 今後、ターボはどうなっていくのでしょうか? 増えていくのか? 減っていくのか? パワーアップのためのターボは絶滅していくのでしょうか? 

 また、ほかにどんな使い道があるのか? ターボチャージャーの現状と今後を、スーパーチャージャーと合わせて、モータージャーナリストの高根英幸氏が解説します。

文/高根英幸
写真/高根英幸、ベストカーWeb編集部


■排気ガスに残ったエネルギーを有効活用するターボチャージャー

ターボチャージャーの内部。片側のタービンがエンジンからの排気を受けて回転すると、もう片方のタービンも回転し、吸気を圧縮する仕組み

 ターボチャージャーとスーパーチャージャー、それはエンジンに空気を押し込む過給機であり、シリンダーの容積以上の仕事をさせる飛び道具だ。

 そもそも過給機は、空気の薄い高高度でレシプロエンジンの航空機の出力低下を補うためのデバイスとして発明されたものだ。

 戦前のGPマシンには、スーパーチャージャーを2段がけなんて無茶なマシンも登場したが、当時の工作精度ではさぞかし怖かったに違いない。

 ターボがクルマに使われ始めたのは1970年代のこと。世界で初めて量産車にターボを装着したのはBMW2002ターボで、日本では1979年10月、セドリック&グロリア(L20ET)に装着された。ターボは既存のエンジンをパワーアップさせるために地上で使われ始めたのである。

 モータースポーツ界での活躍はここで解説するまでもないだろうが、その一端を示すと1990年代のF1では、V6の1.5Lターボで予選時には1800psを絞り出すような尖った特性のエンジンまで作り出され、その刺激的な走りで観客を魅了した。

 その頃、日本車ではターボエンジンを搭載したクルマが全盛で、高級車からスポーティカー、コンパクトカーの高性能モデルまでターボが大活躍していた時代だった。

 やがて時代はエコを追求するようになり、ATの進化やハイブリッド車の普及とともにMTやターボといったスポーティ&パワフルな要素は存在が薄らいでいく。気付けば国産車ではターボ車が軽自動車以外は数えるほどになってしまった。

1979年12月に登場したグロリア/セドリックに搭載されたL20ET型2L直6 SOHCターボエンジンは初期のターボ車特有のドッカンターボながら、最高出力145ps/5600rpm、最大トルク21.0kgm/3200rpmを発生

■10年くらい前からターボが再び脚光を浴びる!

VWゴルフVのマイナーチェンジから2Lと1.6LのNAから1.4Lツインチャージャーと1.4Lターボ、そして1.2ターボチャージャーというダウンサイジングターボに変更した

 そんな状況が変わってきたのは、10年くらい前からのこと。ダウンサイジングエンジンとクリーンディーゼルでターボが再び使われるようになったからだ。

 短い排気マニホールドと組み合わされることによって、タービンはレスポンスが高まると同時に高熱となる。タービンが熱くなってもメリットがないように思えるかもしれないが、タービンが熱を吸収するということは、その分排気ガスの圧力が下がってしまうので、タービン自体は早く温めて、熱いままの方がロスなく排気ガスの圧力でコンプレッサーホイールを回せるのだ。

 触媒を早く温めるという目的においては、ターボは触媒の前にあるので邪魔者だが、内部EGR(エンジン内で排気ガスを逆流させて燃焼室に戻す)で排気温度を高めることにより触媒へ送る排気ガスを温めているので、さほどデメリットにはならない。それよりもメリットの方がはるかに大きいのだ。

■従来と違うスーパーチャージャーの使われ方

 機械式スーパーチャージャーはターボと違って、捨てている排気ガスのエネルギーではなく、エンジンの駆動力を使ってコンプレッサーを回すので、駆動損失がある。それを差し引いても中低速域でトルクアップが望めるため、車重の重い高級車を中心に搭載されたのである。

 ターボに比べてエンジンの反応が良く、NAのようにアクセルペダルの動きに俊敏に反応してくれるのがスーパーチャージャーのメリット。そのためグループB時代のWRCを戦ったラリーカー、ランチア・デルタS4や日産マーチスーパーターボ、VWのTSIエンジンのように低回転域はスーパーチャージャーで過給し、中高回転域はターボに切り替えるといったダブル過給機エンジンも登場した。

 だが、このスーパーチャージャーもパワーアップのためだけに使われるデバイスではなくなってきた。

トヨタMIRAIには、世界初の6葉ヘリカルルーツ式のスーパーチャージャーが採用されている。この技術により、低速域から高速域までの連続的で高効率な空気の圧縮が可能になり、車両の加速性能と航続距離(水素1充填あたりの走行可能距離)の向上に貢献している

 例えば燃料電池車のトヨタ・ミライ。エンジンを搭載していない、このFCVにもスーパーチャージャーが使われているのだ。それは、燃料電池スタックに酸素を供給するために大気を圧送するため。フロントマスクに大型のダクトを備えているだけでは不十分で、車体の内部で強制的にスタックに吹き付けているのだ。

 それと間もなく登場するマツダのスーパーリーンバーンエンジン、スカイアクティブX。予混合圧縮着火というディーゼルエンジンのような燃焼をガソリンで実現する、夢のようなエンジンにもスーパーチャージャーが使われている。40:1という超希薄燃焼を実現するために、燃焼室に大量の空気を送り込むのだ。

■ターボチャージャーの基本的なメカニズムとその進化

エンジンから排出された排気ガスが右側のタービンを回し、同軸上にある吸気側のコンプレッサーを使って空気を圧縮してシリンダー内に送る仕組み

 さて、ターボチャージャーに話を戻そう。ターボチャージャーのコンプレッサー側は、遠心式の一種であるターボ式ポンプとして様々な機械に使われている。クルマでもウォーターポンプの一種に使われるなど、隠れた部分に使われているのだ。

 基本的なターボチャージャーのスタイルは、排気側のタービンには外周部分から排気ガスが取り込まれ、その圧力でタービンホイールを回して、エネルギーを失った排気ガスは中心部から抜けていく。吸気側のコンプレッサーはその逆で、中心部分から空気を取り込み、コンプレッサーホイールが回転することで遠心力により吸入された空気は圧縮されなから外周のパイプからインタークーラーを経てエンジンへ圧送されていく。

 排気側のタービンと吸気側のコンプレッサーにそれぞれ組み込まれているホイールがシャフトで連結され、シャフトはエンジンオイルの上に浮いた状態で回転する。両側のホイールがバランスし、軸受けはオイルフローティングという構造だから、1分間に10万〜20万回転で回り、空気を圧縮してエンジンに送り込めるのだ。

 これまでの間、さらに効率を高めるため、ターボには様々な工夫が盛り込まれてきた。例えば軸受け部分にはより抵抗の少ないボールベアリングを併用したモノが登場したり、タービンホイールを軽量で耐熱性の高いセラミック製にして慣性重量を軽減することでレスポンスの向上を図るタイプも開発された。

 タービンやコンプレッサーのホイールのデザインもより幅広い回転数で有効な風量が得られるよう、CFD(数値流体シミュレーション)で検証しながら改善が図られてきた。以前はタービンホイールやコンプレッサーホイールは鋳造で作られていたが、最近は削り出しでより複雑な形状を追求するタービンメーカーも現われている。

 排気ガスが少ない低回転域では圧力を高めてタービンを回すための絞り弁を装着したり、タービン内の流路を2つに分けて振り分けて使うツインスクロールターボも生み出された。メーカーによっては、このツインスクロールターボを、各気筒の排気干渉を防ぐために使うところもあった。これはツインターボに近い効果を1つのタービンで狙ったモノだ。

可変ノズルターボはエンジンの回転数に応じて排気タービンのタービンブレードの開口面積を変化させることで排気ガスの流量を制御し、過給効果を高めるもの。写真はボルボの可変ノズルターボ

 さらに絞り弁の考え方をより発展させたVG(可変容量)ターボも登場した。これはタービンホイールの周囲を小さなフィンで囲み、排気ガスが少ない時にはフィンを閉じると流路が狭くなると同時にホイールに対して円周方向の流れが強くなるため、タービンホイールを回す力を高める効果を発揮するのだ。

 乗用車でもトラックでもディーゼルエンジンでは2ステージターボが普及しつつある。これはターボで過給した空気をインタークーラーで冷やして、もう一度過給するというもので、昔のツインターボやシーケンシャルターボとは違う、えげつないほど過給をするシステムだ。

 BMWは最新のディーゼル直列6気筒に4つのタービンを搭載するほどタービンを盛大に活用している。ツインターボと2ステージターボを組み合せたものだ。こうなるとエンジンはターボによって駆動されていると思いたくなるほど、ターボがエンジンを支配している感じすらしてくる。

■ターボはエンジンへの過給以外にも使われるようになってきた!

 さらに、ターボはエンジンへの過給以外にも使われるようになってきた。EGRは排気ガスを再び燃焼室に取り込ませ、不活性ガス成分として燃料の噴射量を抑えて燃費を向上させたり、燃焼温度を抑える役割を果たす装置。低回転低負荷などたくさんEGRを使いたいシーンでは、タービンに排気ガスを回す量を抑えたい。そのためにEGRバルブを開くだけじゃなく、前述したVGターボのベーンを閉じてタービンへ回す排気ガスに抵抗を与えることも行なうのだ。

■ターボでパワーアップを狙ったエンジンは生き続ける!

 では、ターボによるパワーアップを狙ったエンジンは、もう登場することはないのだろうか? そんなことは断じてない、と明言しよう。

 先日開催された自動車部品業界の展示会でエンジン開発会社のAVLは、アルファロメオ4Cのエンジンをベースにパワーアップさせた仕様をデモ展示した。ノーマルのアルファロメオ4C自体、1.75Lのエンジンにターボを組み合せて240psを発生するが、その2倍近くとなる474psを発生させるエンジンを作り上げたのだ。

 以前なら6LのV8でなければ得られないパワーを1.75Lで発生させる。ということは、ゆっくり走らせれば燃費もいいし、排気ガスだって少ないから、エコを両立できる。これもダウンサイジングの一種であり、これからのスポーツカーのあるべき姿と言えそうだ。

AVLというエンジン開発会社が発表したアルファロメオ4C。排気量は1.75Lながら474ps!

■今後はライトサイジンターボ+48Vハイブリッドがメインストリームに!

 今後はダウンサイジングターボではなく、ライトサイジング(排気量適正化)ターボ+48Vハイブリッドが主流になっていくだろう。

 VWグループをはじめとする欧州メーカーが採用し、主流になったダウンサイジングターボだが、最近ではマツダやVW、アウディ、ポルシェが無理に排気量を下げずに適正な排気量とするライトサイジングターボへの移行が進んでいる。

 ハイブリッドシステムは現在主流の12Vではなく、48Vマイルドハイブリッドが今後のメインストリームになっていくだろう。この48Vマイルドハイブリッドは、12Vに比べ電圧が高いため、配線の抵抗損失が少なく効率がいいというメリットがあるほか、12Vに対し電流量が1/4のため太い配線が必要なく、モーターの小型化や高効率化が可能。

 スポーツカーには排気量やタービンのサイズを変えることでハイパワー仕様を作り上げることはできる。パワフルな加速、豪快な走りへの憧れはそう簡単には消せやしないのだ。

 それに制御やパイピングを変更するだけでグンとパワーアップできる余裕があるのもターボの魅力。メルセデスのA45を見れば分かるとおり、メーカーですらチューニングを施すのがターボのもつ魔力なのだ。

最新号

ベストカー最新号

【GT-Rファイナル登場か!?】ガソリンエンジンの逆襲!!|ベストカー 2020年1月10号

 ベストカーの最新刊が本日発売!    最新号では、 巻頭スクープで『ガソリンエンジンの逆襲』と題し、GT-Rファイナルエディション、レクサスLC Fなど注目車の存在をキャッチ。ベストカースクープ班が独占入手した情報を詳しく紹介する。  そ…

カタログ