ミラー界に革命を起こせるか!? 普及目前 ドアミラーレス車の利点と課題

 2018年10月24日、いよいよレクサス ESが発表された。同車は“乗用車として”電子ミラーを世界初採用し、市販化したとして話題だ。……が、実はそのESより先に電子ミラーを搭載した車が発表されていた!

 世界で初めて発表されたドアミラーレス車は、乗用車ではなく商用車。9月5日に発表されたメルセデスベンツの新型トラック「アクトロス」だ。

 レクサスESの発表でも注目が高まる電子ミラーだが、アクトロスを試乗し、実際に試してみると「老眼の人には見づらい」という意外な課題も見えてきた。

文:西村直人
写真:Daimler AG


レクサスより早い電子ミラー搭載車はベンツのトラックだった!

2018年9月5日に発表されたメルセデスベンツの新型トラック「アクトロス」

 電子ミラーは「カメラモニタリングシステム(CMS)」とも呼ばれ、ドアミラーに使われている鏡の代わりに、光学式カメラを使って後方視界を確保する仕組みを持つ。

 メリットして被写体となる他車や二輪車、歩行者を鏡よりも広範囲に映し出すことができ、また、視認性が悪くなる夜間や逆光下であってもそれらの認識が鏡に比べて良いとされている。

 個人的には雨天時の夜間、ドアミラーの鏡に水滴が付着し、その水滴に街灯の光が反射してしまう場合などにもメリットが多いと考えている。

 ここで電子ミラーについて少しおさらいしたい。

 日本では2016年6月18日に施工された道路運送車両法の保安基準における改正項目によって法律上、電子ミラーが使用可能になっていた。つまり、6月18日以降は、国際基準に準拠したCMSの使用が許可されたのだ。

 この電子ミラー、実は欧州ではレクサス ESよりも前に大型トラックに採用され市販化が発表されていた。

 ドイツ・ダイムラー社のダイムラー・トラックスから発売された大型トラック「新型アクトロス」には、大型車専用の電子ミラー(「ミラー・カム」と命名)が搭載されている。

 筆者は電子ミラーを搭載したプロトタイプ車両を2015年5月に試乗し、この9月にはドイツ・ハノーファーで開催された世界最大の商用車ショーで新型アクトロスの電子ミラーを体感することができた。

仕組みは? 世界初の電子ミラーは“2分割”で映像を表示

注目の電子ミラーによって捉えた映像は、このように縦長のモニターに2分割で表示。上部と下部で映し出される映像が異なる

 左ハンドルの運転席に座ると左Aピラー部分に縦長の大型モニターが備わる。モニターサイズは縦に約35cm、横に約15cmで、画面は8:2に縦方向部に2分割されている。

 “8”の部分の視界は、従来の鏡方式で映し出されていたものに近く、“2”の部分には主に車体下部を中心とした横方向にワイドな視界として提供される。また、助手席側にも運転席側と同じサイズのモニターが備わり左右を通じて電子ミラーが機能する。

 電子ミラーの視界は、車体上部の左右にそれぞれ1個装着された光学式カメラ(CMOS方式)によって提供される。左右ウインドの上部から車体側方に対して30cmほど真横に張り出すことで、車体の真下から12m以上後方の視界をモニターに映し出すことができるのだ。

 大型トラック&バスのドライバーでもある筆者からすると、映し出される視界は従来の鏡方式のものと同等以上であることが確認できた。

 特に大型車の場合は車高が高いことから上下縦方向の視界も重要視されるが、カメラが車体のルーフ面に近い(≑地上から高い位置に設置されている)ことから、必要とされる視界は確保されていることがわかった。

 ここは主に前述した上下8:2の分割式モニターの“8”の部分に表示される内容で、この視界は上下左右に調整可能。

 これは「画角調整機能」と呼ばれるもので、従来の鏡式ドアミラーで使用されてきた鏡面調整スイッチを操作することでモニター映像を上下左右に移動させることができる。

 ただし、これはカメラを動かして視界を調整するのではなく、広範囲に映し出した映像の画角をモニター上で移動させることで成立させている。

トラック特有の死角も電子ミラーでモニターに表示

こちらは室内全景。モニターは助手席側にも用意され、ドライバーは双方のモニターで周囲を確認する

 残りの“2”の部分は、車体下部を中心とした横方向を映し出す。

 運転席からの視点は、地上から3m近くになることから車体下部の死角が乗用車に比べて構造上、どうしても大きくなる。そのため鏡方式の時代からこうした車体下部専用のミラーが設置されている。

 電子ミラーによる車体下部の映像は、前述した2分割モニターに表示されることから、車体後方の広範囲な視界(前述した8の部分)と同時に確認することができるため、ドライバーにとってはありがたい。

 また、大型車専用のCMS機能として、右左折時に画角調整機能が自動的に機能して、車体の後部まで表示し続けるように、ステアリングの操作量に応じてモニターの画角を横方向に調整する。

 また、一般的となりつつある「ブラインドスポットモニター機能」だけでなく、高速道路などでの追い越し時、元の車線に戻る際のタイミングをモニター内に表示することも可能。

普通の“鏡”も併用!? 老眼にはピントが合わせにくい課題も

実は写真のように、アクトロスでは従来の鏡も併用している。電子ミラーといっても、すべての鏡を代替できていない点も課題だ

 しかしながら課題も。

 左右のAピラーに装着されるモニター以外にも、大型車には車体前部や助手席側の車体側方直下を確認するためのミラーの類いが必要で、取材した新型アクトロスの場合は、これら車体前部や側方直下のミラーは従来の鏡方式のまま。

 運転中のミラーと目視による安全確認は一連の運転操作のなかで行われるが、液晶モニターと鏡では当然ながら解像度が違う(モニターが低い)ため、対象物との距離感やサイズ感に相違が生じている。

 また、左右どちらかにステアリングを操作している際も、モニターと鏡では被写体の動きに違いがあり、シャッタースピードの遅くなる夜間では顕著だ。

 また、これは筆者がやや老眼気味だからかもしれないが、今回のような左ハンドル車の場合、左前のAピラーに装着されたモニターが眼に近く、ピントが合わせ辛くなる瞬間も確認できた。

 とはいえ、電子ミラーには鏡方式ではできなかったさらなるADAS(先進運転支援システム)機能の追加や、自律自動運転の「レベル2」以上では自車周囲の車両検知機能としても活用できることから、この先の発展を期待したいと思う。

◆  ◆  ◆

 冒頭でも触れた乗用車初のミラーレス車となるレクサス ESは、今回の新型で日本初導入(海外では1989年の登場以来6世代に渡って販売)。

 全長4.9m級のラージセダンで駆動方式はFF。価格は580万~698万円。注目の電子ミラー(デジタルアウターミラー)仕様は標準装備ではなく、最上級の「バージョンL」に21万6000円のオプションとして設定。新型レクサスESについては後日じっくり紹介レポートをお届けします。

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