■軽規格や優遇措置の見直しに触れてほしくないから話が進まない
280馬力オーバーのクルマを作るのは難しくないが、問題はそれをどうやって売るか。それはむしろブランディングやマーケティングの戦いで、自主規制さえなければ日本車が欧州プレミアム車と互角に勝負できるというような安直な話ではない。
実際のところ、280馬力自主規制にスポイルされたのは、R34GT-Rやランエボ/インプレッサSTIなど少数の硬派なスポーツカーだけで、日本のクルマ全体を考えると「大差なかった」と総括してもいいのではないだろうか。
結論として、すでに廃止された普通車の馬力自主規制は、ユーザーニーズが馬力から燃費にシフトしたことで、規制の意味が薄れたから消えたということ。
一方でいまだに存続する軽自動車の64馬力自主規制は、別に廃止してもかまわないのだけれど、軽自動車規格や軽自動車の優遇措置の見直しに触れたくない大人の事情から存続しているのが実態。
■今の軽は、実際は何馬力出ている?
ホンダS660は64馬力だが、高回転域になると64馬力を超えてしまうため、わざと4000rpmくらいからトルクを絞っており、実際には80馬力は出ているといわれている。
先代コペンの輸出仕様、JB-DET型660cc、直4ターボエンジンは80馬力は出ていたし、日本の64馬力自主規制が関係ないスズキのK6A型658cc、直3ターボエンジンを搭載するケーターハム160は80馬力だ。
結論からいうと、現在の軽の660ccターボエンジン(スポーツ系)は、実際には80馬力は出ていると考えていいだろう。80馬力あるのに、あえて無理して64馬力に抑えているのはどう考えてもおかしい。
余談になるが、軽規格の660cc以下を撤廃した場合にはどうなるのか? スズキがインドや新興国向けに販売しているアルトを見れば、その答えは出ている。796cc、直3や998cc、直3のエンジンをラインアップしているが、おそらく660cc以下という排気量制限を撤廃したら、800ccになるのではないだろうか。
むしろ、馬力よりも燃費だったり、衝突安全性や自動ブレーキの普及が、今の軽自動車に求められている要素。
とはいえ、「30数年ぶりに64馬力撤廃! 軽100馬力時代到来へ」となれば、市場が活気づくし、もともと普通車よりも税金が安くてサイズが小さいから、若者がクルマに戻ってくるきっかけにもなりうるのでは。
そうそう、S660タイプRのデビューが噂されているけど、その時は64馬力自主規制を突破して、100馬力を出してほしいですね。いや、64馬力自主規制が生まれる発端になったアルトワークスこそ、64馬力を真っ先に突破するべきかもしれない。いずれにしても早く軽64馬力自主規制を撤廃してほしい!
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