超個性的すぎて1代で消滅した日産車
〈日産 ティーノ〉
ティーノは「快適・快速ハイトワゴン」をコンセプトにした高効率パッケージングのマルチパーパスカーとして世紀末の1998年秋に登場。
新世代プラットフォームを採用し、全長はサニーより短いが、全幅は1760mmある。ワイドボティを生かして室内幅1500mmを実現し、前席・後席ともに3人がけを可能にした。しかも、前席の中央席と後席は脱着できるようにしている。シートを取り外せば、広大なラゲッジルームが出現する。
このパッケージング、実はハイブリッド車を意識したものだった。モーターとバッテリーを搭載できるスペースを確保し、2000年春には限定販売ではあったが、ハイブリッド車を投入した。
が、脱着式の中央席は狭く、窮屈だったし、取り外しも面倒だ。シートそのものも軽くはない。海外ならともかく、日本のユーザーには不評だったのだ。3人がけにも違和感を覚えた。
アイデアはよかったが、直線的なデザインを好む日産ファンから冷遇されたこともあり、不発に終わって2003年春に生産を打ち切っている。
〈日産 NXクーペ〉
バブル期に開発され、7代目サニーとともに登場したのが日産のNXクーペだ。RZ-1の後継3ドアクーペで、1990年1月に登場している。
最大の特徴は、アメリカのデザインスタジオが主導した個性的なルックスだ。グリルレスフェイスに、楕円のヘッドライトを組み合わせ、ボディの前後を大きく絞り込んでいる。
トレンドを先取りした手頃な価格のスペシャルティカーとして送り出したが、期待した女性層までも取り込めず1代限りで消滅。1994年、コンサバなデザインのサニー・ルキノにバトンを託した。
ある意味ホンダらしい? 身内に喰われた迷走ホンダ車
〈ホンダ アスコットイノーバ〉
バブルに踊らされたホンダが、1992年春にプリモ店からデビューさせたのがアスコットイノーバだ。
アスコットは、ミドルクラスまでしか持っていなかったプリモ店の販売を伸ばすために送り出した4代目アコードの兄弟車である。初代アスコットを販売している最中に、その上級モデルとして投入した。
メカニズムはアコード/アスコットと同一で、2720mmのロングホイールベースを誇る。違うのはボディデザインだ。低いノーズに6ライトグラフィックのピラードハードトップとした。軽快感のあるルックスで、キャビンも広い。
また、2Lと2.3Lエンジンに4輪ダブルウイッシュボーンのサスペンションを採用したため、走りも軽やかである。
スポーティな味わいはジャーナリストから高く評価されたが、スポーティセダンの時代は終わりを告げていたのだろう。デビュー直後からバランス感覚に優れたシビックにユーザーを奪われ、オデッセイが登場した後は販売が一気に落ち込んだ。
販売力が弱かったことも災いし、日本では鳴かず飛ばずに終わっている。一度もマイナーチェンジしない奇妙な車だった。1996年に寂しく消え、今ではホンダの負の歴史となっている。
〈ホンダ アヴァンシア〉
ホンダを代表するアコードには、スタイリッシュなステーションワゴンがあった。が、これの上のポジションに、マルチに使えるスポーティなデザインのクロスオーバーカーを投入している。それが1999年秋に送り出したアヴァンシアだ。
新しい形の上級ファミリーカーで、リムジン並みの広くて快適なインテリアを売りにした。2765mmの長いホイールベースを利して大人5人が楽に移動でき、前席はウォークスルーも可能。また、4人乗った状態でもラゲッジルームにはゴルフバッグが4セット積める。とても広いのだ。
FF(前輪駆動)車に加え、デュアルポンプ式のリアルタイム4WDも設定するなど、オヤジたちのゴルフ・エクスプレスを狙った。が、セダン派は見向きもしなかったし、ワゴン派も二の足を踏んでいる。
オデッセイが2代目に移行していたこともあり、ミニバン派もアヴァンシアにはなびかなかった。ちょっと欲張りすぎたのかもしれない。
中途半端な設計コンセプトが仇となり、2003年に消滅してしまった。
コメント
コメントの使い方