トラック・バスなどの商用車のトランスミッションは、ひと昔前はマニュアルトランスミッション(MT)が当たり前であったが、現在はMTを電子制御で自動化したAMT(オートメイテッドマニュアルトランスミッション)が先進技術(ADAS)と融合しながら進化を遂げ搭載比率も高まっている。
いっぽうで、AMTと混同されがちな、オートマ(AT)のトルクコンバーター式オートマチックトランスミッションにも強いニーズがあり、バスや特装トラック、特殊車両、消防車、軍用車両を中心にさまざまな車両に搭載実績がある。
米国インディアナ州で創業したアリソントランスミッションは、このオートマの分野で世界的に確固たる地位を築いた商用車用トランスミッションメーカーで、日本法人であるアリソンジャパンは今からちょうど50年前に設立された。今回は50周年を記念して、アリソントランスミッションのこれまでの歩みをお届けしていこう。
文/フルロード編集部、写真/フルロード編集部・アリソンジャパン・いすゞ自動車
【画像ギャラリー】支持されるにはワケがある!! アリソントランスミッションの歩みをギャラリーでチェック(30枚)画像ギャラリーインディ500マイルレースとともに誕生!?
アリソントランスミッションは今から100年以上前、米国インディアナ州のインディアナポリスモータースピードウェイの建設とともに始まった。
アリソンの創設者は起業家であり実業家であるジェームスA. アリソンで、彼はレース場(1909年建設)とカーレースのインディアナポリス500(初開催1911年)の創設に携わった4人のうちの1人とされる。
ジェームズ・アリソンは1915年にレース会場に隣接するインディアナポリススピードウェイチームカンパニーを設立。これが今のアリソントランスミッションの前身となるわけだが、当初はレース活動や自動車事業全般に携わり、第一次世界大戦が始まると航空機事業に進出。
ジェームズ・アリソンの死後、ゼネラル・モーターズに買収され、編入後はGMのアリソン部門として軍需車両・航空機のエンジン開発等を経て、1940年後半には初の大型車両用のトルクコンバータ式ATを開発した(現在はGMグループから離脱)。
現在のアリソンは発祥地インディアナポリスにグローバル本社を置き、オランダ、中国、ブラジルに地域本部、製造工場は米国の他にハンガリー(セントゴットハールド)、インド(チェンナイ)にあり、販売ネットワークは北米・南米・欧州・中東・アジア・東南アジア・オセアニア地域・アフリカなど世界150カ国以上に展開。
認定サービスディーラー・販売代理店は全世界に1400以上を構える、フルオートマチックトランスミッションの分野でシェア60%を誇る世界最大手メーカーなのである。
アリソンATを採用するメーカーは現在350以上あり、OEMの代表的なところを挙げると、ケンワース、フレートライナー、ナビスター、ピータービルト、マック、ダフ、ボルボ、メルセデス・ベンツ、マン、スカニア、イヴェコ、ルノー、テルベルク、ヴァンホール、ヒュンダイ、いすゞ、日野、UD、三菱ふそうなど錚々たる顔ぶれだ。
なお、昨年2021年の純売上は24.02億ドル(USD/JPY=140円で3363億円)であったが、その主だった内訳は北米向けトランスミッションの売上が51%、北米以外は19%、軍用は8%、部品・サポート機器等が22%となっている。さらに来年に発表される本年度の売上予想は、我々アジアを含めた北米以外での販売が好調となり27億ドルに成長するとされる。
いっぽうで、エンジンのエネルギーを効率よく駆動力に変換するために重い商用車では多段化トランスミッションが欠かせないものだが、電気+モーターで動くEV・FCEVといった車両はこの限りではない(既存のドライブラインを使用しない大型EVにおいては2段ギアがスタンダードになりつつある)。
アリソンは来たる電動化社会に対応すべく、電動ソリューションの開発にも注力しており、いちはやくハイブリッド製品や電動アクスルの「eGENシリーズ」を発表。最近は巨額を投じた電動化のための設備投資や買収も行なっている。