『ベストカー』客員編集長に就任!? トヨタ 豊田章男社長 独占インタビュー後編

■若手ライター養成へ「章男塾」を開講!

BC/今お話ししたような事情があり、モリゾウさんがベストカーの客員編集長になっていただくことは、大きな意義があると思います。

モリゾウ/毎回は勘弁してください! 気に入った記事に「これいいよ!」とか、よくない記事やはっきりしない記事に「これはダメ!」というのはやりましょう。そして今思いついたのは、若手のライターを育てる場として「章男塾」を作ってはどうでしょう?

BC/「章男塾」……ですか?

モリゾウ/私へのインタビューの権利を与えましょう。書く力も必要ですが、取材力というか質問力が問われるので、まずどんな質問をしたいのか? ベストカーで公募してください。私のほうで審査員は選んでおきます。もちろんベストカーからも出してください。

 最終的に3人くらいにインタビューの権利が与えられ、一番いいインタビュー記事がベストカーで掲載されるという流れはどうでしょう。それを定期的にやって、新鮮な視点を持つライターを発掘しましょうよ。インタビューを受ける私もジャンジャン逆質問しますよ! 若手ライター養成のための「章男塾」ですよ。これは私にとっても楽しそうだ(笑)。

BC/ありがとうございます。それは面白いですね! ベストカーのほうで応募の条件などを考え、改めてご相談いたします。

モリゾウ/メディアは我々の教科書だと言ってきました。特に自動車メディアの方たちは、自動車産業に関わる550万人の一員だと思っています。何か力になれるなら喜んで協力します。

■オールジャパンで競争力強化モビリティ委員会の狙い

BC/少し話題を変えて、経団連にできたモビリティ委員会について教えてください。

モリゾウ/脱炭素化の取り組みはこれまで自工会を中心にやってきました。しかし、政治と相対するには自動車産業だけでは限界があります。業界、業種を超えて、オールジャパンでカーボンニュートラルを推し進めていくために経団連にモビリティ委員会を作っていただきました。

BC/経団連の委員会は数十社の加盟が普通だとお聞きしましたが、異例となる200社以上が参加したことで大きな力になりますね。運輸やエネルギー、旅行や金融といった幅広い企業が加入していて驚きました。

モビリティ委員会の会見に臨む十倉雅和委員長(中央)、豊田章男委員長(左)、有馬浩二委員長(右)
モビリティ委員会の会見に臨む十倉雅和委員長(中央)、豊田章男委員長(左)、有馬浩二委員長(右)

モリゾウ/どの会社にも危機感があると思います。自工会でやってきた仲間づくりを加速させながら、国際競争力を高め、自動車産業を守っていきたいと思います。そのために委員長には経団連の十倉雅和会長に加えて、私とデンソーの有馬浩二社長(日本部品工業会会長)もやらせていただいています。

BC/モビリティ委員会によってさらなるカーボンニュートラルの加速が期待されます。

モリゾウ/過去20年間において日本の自動車全体でCO2を23%も削減しています。これはアメリカやドイツ、フランスなどと比べてもダントツの数字です。規制ではなく技術を磨くことで、カーボンニュートラルにおいて日本は国際競争力を持ち、リーダーシップを発揮することができるかもしれません。

自動車CO2排出量の国際比較(2001-2019/出典:IEA)
自動車CO2排出量の国際比較(2001-2019/出典:IEA)

■高すぎる自動車税の抜本的な見直しを!

BC/モリゾウさんがモビリティ委員会の委員長になられたことで、高すぎる自動車関係諸税の見直しにも期待がかかります。クルマ離れの要因のひとつは間違いなく重い税金にあります。

モリゾウ/日本のユーザーは世界一高い税金の負担をしているという現実に加え、日本の経済と雇用を支える自動車産業にとって、従来の自動車税制の議論では、国際競争力や雇用の維持はかなわないと思います。

BC/政府はEVへと需要が移り、燃料課税で取れなくなったぶんを補うために走行距離税などを考えていると報道されていますが、絶対に阻止してください。

モリゾウ/自動車関連の税の見直しについてもしっかりとやっていきます。モビリティ委員会の目標は来年の広島サミットで日本のカーボンニュートラルの取り組みと実績をしっかりと世界にアピールすることです。大いに期待してください。

日本の自動車ユーザーの税負担は国際的にも過重(自工会資料より)
日本の自動車ユーザーの税負担は国際的にも過重(自工会資料より)

BC/豊田佐吉氏の命日にあたる10月30日に「豊田佐吉翁顕彰祭」が開催されました(詳細は後述)。そこでモリゾウさんが豊田佐吉記念館を作られた想いを伺いました。改めて佐吉さんのお話を聞かせてください。

モリゾウ/曾祖父にあたる豊田佐吉は現在の静岡県湖西市に生まれ、何度も失敗し、挫折を味わいながら、G型自動織機などたくさんの発明をいたしました。祖父の喜一郎も父である章一郎も湖西市で育ち、私にとってもふるさとです。湖西の地に豊田佐吉記念館を作るにあたり、毎週のように足を運びました。そこでわかったのは佐吉も喜一郎も自分のためではなく、誰かのために行動することが原動力だったということです。そのことは、私の胸に刻まれ、今でも「原点」となっています。

BC/お父さんの章一郎さんが「佐吉の成功物語にするな」とおっしゃたそうですね?

モリゾウ/ハイ。ありのままの佐吉を伝える記念館にするために、私も佐吉のエピソードを聞いて回りました。先日、佐吉の特許の読み解きを進めていたトヨタの技術者から、佐吉の作った「豊田式木製人力織機」の特許の明細書には、その目的に「身体の労を減少するため」とあったと聞きました。つまり、佐吉の母の夜なべ仕事を楽にしたいという想いから、発明が生まれたことがわかりました。

「楽」という字には「楽しい」という意味もあり、仕事を楽しめば、改善が進み、仕事が楽になり、もっと楽しくなっていく。その結果、生産性も向上する。これがトヨタ生産方式(TPS)の源流となります。

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