本誌『ベストカー』創刊45周年を記念し実現した、トヨタ自動車社長、そして自工会会長でもある豊田章男氏への60分にわたる独占インタビュー。後編をお届け。
前回のインタビューはモリゾウさんに「客員編集長になってください!」と切り込んだところで終了したのだが、果たして!? 経団連にできた「モビリティ委員会」や、皆さん気になる税の話題にも言及してくれた。
【前編はこちら!】「すべてにLOVEがほしい」「定年は…」超貴重&独占インビュー! トヨタ自動車社長 豊田章男が本音で語った60分
※本稿は2022年11月のものです
聞き手/ベストカー編集部、写真/TOYOTA、ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2022年12月26日号
■モリゾウさん的メディアの見方 トヨタイムズにトヨタの批判があってもいい
ベストカー(以下BC)/……実は不躾なお願いがございます。客員編集長になっていただけませんでしょうか?
モリゾウ/……⁉
BC/ムリだとは思いますが、少し説明させてください。いまメディアはなかなか大変な冬の時代を迎えております。心配しているのは、若手のライターや編集者がおらず、先細りが心配されます。自動車会社や自動車産業はこれまで、メディアととてもいい関係にあったと思います。例えば、新車が発売されると、批判を含めて独自の視点で評論し、それをメーカーは許容してきました。いい距離感を持ち、とても懐の深い業界であることが魅力でした。
そんないい環境のなか自動車ライターも育ち、編集者も育ちました。ところが、SNSの普及でメディアが多様化した一方、情報があふれ、情報を受け取る「読者」も正しい情報か、そうでない情報か、わからなくなっているように思います。
誰でも発信できるようになったことは、とてもいいことですが、客観性に乏しいものが、正しいものと受け取られてしまうことがあります。少し前までは自動車の記事は誰でも書けるわけではありませんでした。署名記事であり、編集者がチェックし発信しました。
モリゾウ/なるほど、続けてください。
BC/トヨタがオウンドメディアであるトヨタイムズを立ち上げた時に、我々自動車メディアは脅威を覚えました。世界でもっとも影響力のある自動車会社がメディアを持ったのですから。我々のような自動車メディアはその後追いをするしかないのか? と思いました。でもモリゾウさんに真意を伺って、そうではないことがわかりました。
モリゾウ/トヨタイムズを立ち上げたのは、おっしゃるように正しく情報が伝わっていないのではないかという危惧からでした。トヨタがやっているメディアだからトヨタに不利なことは発信しません。でも、私はそこが気に入らない。トヨタの批判があってもいいし、いろんな意見が溢れるメディアになってほしいと思います。
BC/ウェブメディアのよさは速報性にあります。取材現場から記事を発信できるのは大きな魅力です。弊社は「ベストカーWeb」もあり、速報性を重視して発信しています。紙のメディア、ベストカーもそうですが、ニュースではウェブメディアに勝てないので、より精査し、深掘りし、面白くしなければ生き残っていけません。
そして紙であろうがウェブメディアであろうが良質なメディアには、いい編集者がいます。読者が何を知りたいかを代弁して記事にするのが仕事です。そして記事作りにおいて大きな責任を負います。速報性重視のウェブメディアであっても、狙いと違うなら編集者が原稿に待ったをかけたり、修正を依頼することは必要で、編集者とライターの一定の緊張関係は必要だと思います。
モリゾウ/私はウェブメディアも新聞も雑誌もYou Tubeも比較的見るほうだと思います。
BC/やはり我々メディア側が時間や人の制約があるなかでも、工夫して良質な情報を発信しなければならないと思います。しっかりとした精査ができる体制が必要で、その精査のなかで、いいライターやいい編集者が育っていくのだと思います。メディアの力が落ちると、メーカーへの批判や提案も少なくなっていくかもしれません。批判に代わって揚げ足取り的な記事は増えるでしょうけど。
モリゾウ/おっしゃるようにウェブメディアのなかには、裏付けのない記事や見出しだけで中身がない記事もたくさんあります。私への個人攻撃もあふれかえっています。悪口や対立を煽ってPVを稼ぐのはどうかと思います。前回申したLOVEのないI(アイ)だけの私利私欲の記事は読んでいて虚しくなります。
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