ホンダ フィットRS 水野和敏が斬る!Vol.02

 今回ベストカー編集部が用意したテーマは「コンパクトクラスのスポーツハッチバックを評価せよ」というものです。

 前回はベンツSクラスやレクサスLSだったので、今回はまったく違う方向のクルマたちです。以前はホットハッチなどと呼ばれたもので、トヨタも日産もホンダも三菱もこのカテゴリーに元気のいいクルマをたくさん投入していましたが、今では数えるほどになってしまいました。

 売れなくなったから作らない……というのはメーカーとしては結果だけを見た判断だと思います。

 さて取材の現場にスタッフが乗ってきたのは目にも鮮やかなレモンイエローのスイフトスポーツとオレンジ色のフィットRS。今回はフィットRSについて語っていただいた。


スイフトスポーツとは対照的なフィットRS。だがこちらも魅力的。

 フィットRSのエンジンルームを見てみると、スイフトスポーツとは対照的。いや、コンパクトカーというカテゴリーやクラスを考えれば、フィットの作り方が「普通」で、スイフトスポーツが「ちょっとやり過ぎ」といってもいいだろう。

 スイフトスポーツのエンジンルームは、ガッチリした厚手の鉄板で構造部が補強されていて、フロントのリーンフォースと合わせる形で剛体を作り上げていた。通常、フロント部の剛性を高めるためにはストラットタワーバーを通してやるのが手っ取り早いし効果的なのだが、スイフトスポーツは、エンジンルームの構造でタワーバーを通した以上の剛性あるフロントまわりを作り上げている。

妥協しなかったフィットの開発陣は偉いと思う。

 さて、フィットRSだ。フィットはエンジンマウントがガッチリしていることがわかる。普通、このクラスだとしっかりしたアルミ鋳物のブラケット類や倒立型のゴム配置でここまでガッチリしたエンジンマウントを使うことはない。ゴルフやベンツAなどと同じ感じ、ボルボのVよりはるかにしっかりしている。

 これだけエンジンマウントをガッチリさせると、ボディの動きに対してエンジンがグニャグニャと動くとこがないので、ハンドルを切った時やブレーキをかけた際に0・2〜0・3秒遅れて発生するエンジンの動き、イナーシャが乗ってこないから一体感のあるリニアな動きができるのだ。

 エンジンマウントは、一般的には見過ごしがちな小さなパーツだけど、クルマの動きや安全性にとってはとても重要。ガッチリしたボディや足を作っても、エンジンマウントをケチっちゃうとすべて台無し。コストはかかるけれど、妥協しなかったフィットの開発陣は偉いと思う。

スイフトスポーツと比べると、圧倒的に日常生活で使いやすいクルマ

 実際フィットに乗ると、例えばステアまわりの剛性はけっして高いわけではない。いつものように低速域でハンドルを右へ左へと切ってみても、若干の遅れを感じる。この領域ではスイフトのほうがスッと反応する。ある程度の速度が乗ってもその印象は変わらない。

 ハンドルを切ればスイフトよりも大きくロールするし、レスポンスはワンテンポ遅れる印象。でも、エンジンのブラツキがないからクルマ全体としてはすっきりした切れ味のよいきれいな動きを見せてくれるのだ。一体感のある動きということ。

 スイフトスポーツと比べると、圧倒的に日常生活で使いやすいクルマといえる。言い代えると、スイフトスポーツほどのスポーティ感はないのだが、無駄な動きを感じさせない一体感のある気持ちよさがあるのがフィットRS。これはこれで正しい方向性だと思う。

バランスのよさは高次元のフィットRS

 スポーツかといわれると、ちょっと物足りないのだが、バランスのよさは高次元。スイフトのように前を固めてリアを追従させるというのではなく、こちらは前後のバランスをとって合わせ込んでいる印象。これはゴルフのセットアップに近いものだ。

 これはもう、どちらがいいという問題ではなく、思想の違い。スイフトスポーツが目指したほどのスポーツをフィットRSは追い求めてはいないのだ。ボディ剛性もスイフトほどはないけれど、不足しているということもない。これで充分、過足なしというバランスを追及したのがフィットRSだ。

 エンジンは明確にスイフトがパワフルで気持ちいい。100ccの排気量差を差し引いても、スイフトの気持ちよさが勝っている。フィットはちょっと重たくてもっさりした印象。キレのよさもスイフトが上。

 しかし日常の足として自分が買うのなら、スイフトスポーツではなくフィットRSを選ぶだろう。スポーツ感は若干劣るものの、ちゃんと四輪が接地しており山道を走っていても不安なく気持ちよく走ることができる。

 スタビリティ限界はとても高い。これは高い次元でのバランスが保たれているから。ただ、どちらがいいとか悪いとかいうのではなく、この違いはテイストの差。どっちが好みかという問題。限界の接地荷重は両車ほぼ同じだと思う。

 設計者、実験部はしっかりといい仕事をしていると感じた。

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