2017年10月23日の発売から丸1年以上が経過し、車いす乗降時の作業が、煩雑で時間がかかり、車いす利用者やタクシードライバーから改善を求める声が挙がっていたJPN(ジャパン)タクシー。
トヨタは2019年2月4日、すでに販売されたJPNタクシー向けの車いす搭載を簡略化した交換部品を無償配布するとともに、3月には一部改良車を発売すると発表した。
はたして、JPNタクシーはどのようにカイゼンしたのだろうか? 発表会場に取材に行ってきたので報告しよう。
文/ベストカーWEB編集部
写真/ベストカーWEB編集部
■車いすの乗り降りが煩わしく、時間がかかりすぎる!!
2017年10月23日に発売され、2018年末までに1万598台を発売し、街中でも頻繁にみかけるようになってきたJPNタクシー。
発売から1年が経過し、タクシードライバーや利用者から改善を望むさまざまな声が挙がってきたそうだ。それをまとめたのが以下の通り。
■好評なポイント
「燃費が大変いい」
「最新の安全装備で安心して乗れる」
「ドアが広くて乗降しやすい」
「天井が高く開放感がある。静かで快適」
「視界が広く運転しやすい」
■不評なポイント
「車いす乗降作業が複雑。時間がかかる」
「料金トレーの位置が高く肩が疲れる」
「電動スライドドアの開閉時間が長い」
「後席右側の窓が開かない」
「後席座面が高くお尻からの乗降しづらい」
「助手席にアシストグリップがない」
こうした意見のなかから「車いす乗降用スロープの設置作業が複雑で、時間がかかる」という、タクシードライバーや車いす利用者から改善を求める声に対し、トヨタは2019年2月4日、すでに販売されているJPNタクシーへの改善内容を発表した。乗降作業を簡素化する交換部品を無償配布するとともに、3月には一部改良車を発売することも発表した。
JPNタクシーの開発責任者、トヨタコンパクトカーカーカンパニー 製品企画ZP2 チーフエンジニアの粥川宏氏は、今回の車いすの改善に至った理由について、こう述べている。
「障害者の方々が新しいタクシーに期待されているなかで、実際に乗ることができなかった事例があると聞いております。今回の改良を入れることで、よりたくさんの方に使っていただけるようになっていくと思っております。
また福祉タクシー、介護タクシーは福祉車両を使って運営しています。ジャパンタクシーによって、これまでのセダンタイプのタクシーと福祉車両の間を近づけることで、今までタクシーを利用できなかった人が、より多く使えるようになれば、というのが我々の思いです。
一気にベストなものにならないでしょうし、福祉車両をこの車両で飽和しようと考えているわけではありません。いろいろなカタチのクルマを用意して面で受け止めることで、より優しい社会になっていくように仕向けていくのが我々の務めだと思っています」
■販売済みの車両は約10〜15分から約4分へ短縮
この発表会に行く前にトヨタが公開している、JPNタクシーの車いす乗降マニュアルの動画を見たが、車いすを載せることに慣れているタクシードライバーでも10分、慣れていない人で15分もかかるのに驚かされた。
また、この動画を一度見ただけでは覚えきれない、というのが正直な感想。実際、タクシードライバーのなかにはシートの跳ね上げるレバーの位置を忘れる、跳ね上げ方法を覚えていない、スロープの組み立てが複雑でやりにくい、という声が挙がっていたという。
すでに販売されているJPNタクシーについては、今回のスロープの脚を組み立て式からスライド式へ、固定ベルトをつなぐ金属製の部品を脱着が簡単なカラビナに変更。車いす固定ベルトの収納ポケットを配布し、説明書を見なくても作業がわかるラベルの貼り付けなどで対応する。良心的なのは、これらの交換部品は無償配布されること。
こうしたカイゼンにより、作業工程を64工程から38工程程度まで削減し、約4分に短縮した。
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