■数々の危機を作るのも乗り越えるのもマツダの力
こういうカルチャーは、逆境に強い。前述のとおり、ひと昔前までのマツダの経営方針にはちょっと危なっかしい「一発狙い」があって、それが外れて一度ならず深刻な経営危機に見舞われている。
第一次石油ショックでロータリーエンジンの人気がガタ落ちした時、バブル期の無謀な5チャンネル構想の後始末、そしてリーマンショックによるフォードとの資本提携解消。
どれも、一歩間違えれば倒産という危機的状況に立ち至った。しかし、そういうときでも開発チームの士気は旺盛で、ぜんぜんめげないのがマツダ。
フォードの資本参加を仰いだ時も「経営は下手だったけど、クルマ造りの方向性は間違っちょらん。いいクルマを造ってフォードをビックリさせちゃる!」と意気軒高なのだ。
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フォードのビル・フォードCEOが視察に来た際の様子。30年以上の関係ではあったが、その間にもSKYACTIV技術を研究開発するなど開発現場の熱量は高かった
危機に際してのこの打たれ強さは、マツダの、ひいては広島県民の偉大なDNA。
経営不振のつらい時期は10年以上におよんだが、それに耐えたのも不屈の精神あればこそだったと思う。
ぼくの見るところ、現在のマツダの開発陣にもこのよき伝統は受け継がれている。
失敗を恐れず新技術に挑むチャレンジ精神や、クルマ造りを心底楽しむオタクといっていいようなコダワリ。こういうカルチャーはあんまり他のメーカーではお目にかかれない。
SKYACTIV商品群が一定の成功を収めて以降、さすがのマツダもかつてのハチャメチャさがやや影を潜めて、しっかり収益を考えたクルマ造りが板についてきた印象がある。
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ディーゼルエンジンの振動、臭い、黒煙などというネガを限りなく消し、ブランドのアイデンティティを確立した近年のマツダ。内燃機関への挑戦はまだ続く
しかし、その成功に満足せずHCCI燃焼を実用化する野心的なプロジェクト“SKYACTIV X”みたいな飛び道具が出てくるんだから油断ならない。
やっぱり、ベンチャー精神というのはアヴァンギャルドで少しいい加減なくらいの組織からでないとなかなか生まれない。
そこが、トヨタのようなきっちり管理された会社にない、マツダならではの武器なんじゃないかと思うなぁ。
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