耐久性の向上、ユーザーの使用年数が大きく変化
クルマの耐久性が向上したことも見逃せない。1980年頃までの日本車は、生産から10年も経過すると、相当に老朽化した。ボディの下側やドアには錆が生じて穴が空いたり、インパネの上面が日焼けしてザラザラになった。
しかし今は10年前に生産された2009年式のクルマが普通に走っている。「10年を経過したから、廃車にして新型を買おう」という話にならず、クルマを乗り替える周期が伸びた。
昔は初回車検すら取らずに買い替える、少なくとも4年ごとに乗り替えるユーザーも多かったが、今は7〜8年とされる。これもフルモデルチェンジの周期が伸びた理由になり得る。
乗用車の平均使用年数(平均寿命)は、1980年頃は8年だったが、1990年には9年、2000年は10年、2010年以降は大幅に伸びて12〜13年に達する。このように乗り替える周期と平均使用年数が伸びれば、頻繁にフルモデルチェンジを繰り返す必要はない。
日本の自動車メーカーが、国内市場に取り組む姿勢も大きく影響した。
1990年頃までは、日本のメーカーは世界生産台数の約50%を日本国内で売っていた。それが国内の景気悪化と海外市場の開拓によって後者の比率が高まり、2000年頃には、日本のメーカーは世界生産台数の65%を海外で売るようになった。2010年以降は80%に達する。
言い換えれば今の日本メーカーの国内販売比率は20%以下だ。現在日産などは、国内が10%、海外が90%という販売比率になっている。
こうなると日本のメーカーが、日本の市場に力を入れにくくなり、結果的に軽く扱っているように映る。商品開発も北米や中国を優先させ、日本市場の順位は下がった。
そうなれば国内には新型車が投入されない。日産の新型車は1〜2年に1車種程度だから(グレード追加などを除く)、古いクルマばかり増えてしまう。
以前に比べると、開発すべき分野が増えたことも、フルモデルチェンジの周期を伸ばした。電動化を含めた環境対応、安全性能、運転支援や自動運転など、将来に向けて開発の必要な分野が多い。そうなれば新車の開発費用が削られて周期も長引く。
深刻な話では、車種の廃止も挙げられる。例えばトヨタは、2025年をメドにディーラーの全店が全車を扱う方針を打ち出した。
これはトヨタ店やトヨペット店といった4つの販売系列が形骸化することを意味する。全店が全車を扱えば、系列化のメリットがなくなるからだ。日産やホンダも、かつては系列を持っていたが、全店が全車を売るようになって廃止された。
さらにトヨタは、全店が全車を扱うのに併せて、車種数を半減させるという。系列のために用意されたヴォクシー/ノア/エスクァイアといった姉妹車に加えて、設計の古い車種も廃止するようだ。
開発者や販売店の話を総合すると、現時点で13年を経過したエスティマ、9年を経過したマークXは廃止されるという。日産からも「発売後10年を経過したキューブは、もはや次期型がなく、現行型で最後だろう」という話も聞く。
このようにフルモデルチェンジの周期が長いと思われていた車種が、実際には次期型を開発しておらず、現行型で最後になるケースも多い。メーカーの都合がいい時期、タイミングで、生産と販売を終える。

2009年10月にデビューしたトヨタマークXは、このまま次期モデルがないまま消滅する可能性が高い。トヨタの合理化になくかたちで姿を消すのか
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