ガソリン価格に異変あり!! フルサービスとセルフの価格差急接近 何が起こっているのか?

■税金が半分近くを占めているという特殊性

 ガソリン1Lの価格には53.8円のガソリン税(揮発油税と地方揮発油税の合計)、軽油には32.1円の軽油引取税が含まれている。さらに平成28年からは地球温暖化対策という名目で石油税が2.8円、ガソリンと軽油それぞれに課せられている。

 ガソリンの価格が安かった 2016年前半の頃は、販売価格のおよそ半分は税金だったのである。これほど税負担が大きい商品はちょっとほかには見当たらない。

 このガソリン税が含まれる燃料代に、さらに消費税が課せられるのは二重課税ではないか、という論争がある。課税派は、さまざま石油製品の原料には消費税が掛かっているのと同様、揮発油税の納税者は石油会社なので、製造コストに含まれるというのが、その根拠だ。

 しかしガソリンという製品に課せられる税金なのだから、消費税はガソリン税を除外した金額に課税すべきだと思うのはユーザーの自然な感情ではないだろうか。

 昔はガソリン税などの説明がレシートに記載されていたものだが、最近はガソリンスタンドで給油をしても、単価と数量、消費税だけしか記載されていないレシートが多い。これはきっと何らかの意図があって、ガソリン税や石油税を目立たなくさせているのではいだろうか。

■都道府県別ガソリンが安い県、高い県

 ここで資源エネルギー庁が3月13日に発表した、レギュラーガソリン、ハイオクガソリン、軽油の全国平均価格を紹介しておこう。レギュラー、ハイオク、軽油ともに前週より0.2円アップのレギュラー145.1円、ハイオク155.9円、軽油126.0円となっていて、4週連続の値上がりとなっている。

 では、都道府県別で、高い県と安い県はどこだろうか? レギュラーガソリンの店頭小売平均価格を見てみよう。

■レギュラーガソリンが高い都道府県上位5
1位/長崎県、157.1円
2位/鹿児島県、153.9円
3位/大分県、153.1円
4位/長野県、151.8円
5位/沖縄県、150.5円

■レギュラーガソリンが安い都道府県上位5
1位/徳島県、138.3円
2位/埼玉県、140.0円
3位/千葉県、140.8円
4位/岡山県、140.9円
5位/石川県、茨城県、141.4円

 最も高い長崎県の157.1円と、最も安い徳島県の138.3円では、なんと18.8円の差があった。ちなみに東京は145.7円。なぜ、ここまでガソリン価格の地域差が生まれるのだろうか?

 まず、こうした地域による価格差は、油槽所からの距離に応じた物流コストによって高くなったり、安くなったりする。また、販売量の多い都市部では競合も多くなり安くなる。

 地域別に見ていくと、埼玉、千葉、茨城などは油槽所に近いメリットと、競合する給油所、販売量の多さで、価格が安くなっている。安さ1位の徳島は安売りのガソリンスタンドが乱立し、価格競争が激化しているためだ。

 いっぽう、価格が高いのは九州全体で、特に長崎、鹿児島は離島を抱えているため高くなってしまうのは仕方がないところか。長野も内陸のため、物流コストがかさむため高くなっている。

 沖縄県はガソリン税が本土より7円減免されていて、ガソリンが安かったのだが、現在では一転して150.5円と高い県となってしまった。

 これには理由がある。2015年に沖縄で唯一の製油所が閉鎖されたため、本土からの輸送コストや備蓄タンクの使用量がかさんだため、コストアップとなり、それが価格に反映されているのだ。

■都心部ではフルサービスとセルフサービスであまり変わらない場合も

数百m離れているだけでリッター3円~5円違うこともある。写真は2018年10月の高騰時のもの

 さらにその価格差は何か突き詰めてみると、ガソリンスタンドの立地条件でも価格差が生じてくる。小規模なガソリンスタンドでは、地元の地主が経営しているパターンも多かった。

 その場合、安売りすることは避け、地元のユーザーに利便性を提供することで適切な対価(つまり郊外店より若干高め)を得ていたことが多かった。

 周辺に競合が少なければ、価格は高めでも商売として成り立つという構図があったので、安定した経営が可能だったのだろう。

 しかしクルマの燃費が向上して燃料給油の間隔は延びていて、地元のガソリンスタンドで入れなければ困るという状況は減っている。

 ユーザーも低燃費を上手く利用して、買い物や出掛けたついでに単価の安いガソリンスタンドで給油して帰るような使い方になってきた。

 この結果、地元や中間地点にあるガソリンスタンドがまず客足が遠のくことになり、経営難で廃業が続いた。これがある程度進むと競争原理が働きにくくなって、残ったガソリンスタンドは確実に利益が残せる値段で燃料を販売できるようになるかもしれないが、地下タンクの交換コストなどの問題もあり、ガソリンスタンドの淘汰が進んでいる。

 ちなみに競争が激しいところでは、ガソリンを販売しても直接は利益に結び付かず、エンジンオイルやタイヤ、車検などのサービスを販売して利益に結び付けている。

 また一定量の燃料を販売すると元売りから販売奨励金が支払われるので、燃料代は赤字になっても、最終的には利益が出る仕組みになっているのだ。

 セルフサービスかフルサービスか、というのも価格に差が付くポイントだ。ガソリンスタンドは長く、スタッフが給油するという業態を続けてきた。それは燃料が危険物に含まれるということから、給油作業は知識を持つ人間がしなければならないという制約があったからだ。

 しかし給油ポンプの安全性を高めたり、給油スピードに制限を加えることで、ドライバーが自分で給油しても安全な作業に工夫され、万が一の際には事務所内のスタッフが消火装置を作動させたり、給油を停止させることができるようにしたことで、セルフサービス式が導入可能になった。また支払いのシステムもセルフかされて、人件費などのコストはかなり圧縮されている。

 いまや都市部ではセルフ形式のガソリンスタンドのほうが圧倒的に多い。ただし今では、周囲にライバル店が多い地域ではフルサービスのガソリンスタンドでも、セルフ形式のガソリンスタンドと単価がほとんど変わらない、なんて現象も起こっている。

 軽油の場合、スタンドの方針で価格が違うこともある。特に都内の小さなガソリンスタンドで見かけるのが、「トラックお断り」の看板。

 これは敷地が狭く、給油時間が長いトラックがやってくると、その他のクルマへの給油に支障が出てしまうことから、掲げているのだろう。

 また首都圏の都市部では、この看板とは別に軽油の価格をあえて高めに設定して、トラックドライバーが自然と敬遠するようにしていると思われるガソリンスタンドもある。

 そのため同じ地域内でも、軽油の価格が一般的なところと、レギュラーガソリンと変わらないくらい高めになっているところがあったりするのだ。

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