ガソリンや軽油の価格は、地域や季節によっても変動しますし、ガソリン銘柄の違いやガソリンスタンドがたった数百m離れているだけで価格が違う場合もあります。都道府県別の価格を見ても地域によって価格差が生じています。
なぜ、これほどまでにガソリン、軽油の価格は一律じゃないのでしょうか? 改めてガソリン、軽油価格の疑問に、モータージャーナリストの高根英幸氏がお答えします。
文/高根英幸
写真/ベストカー編集部、ベストカーWEB編集部、adobe Stock
■こんなに価格が変動するのは燃料代だけかもしれない
ガソリンや軽油の価格は、1円でも安いほうが有難い。周囲にいくつもガソリンスタンドがある密集地でも、安いスタンドに行列ができているのは、少しでも燃料代を安くしたいからだ。
でも、燃料の価格はガソリンスタンド1軒1軒で異なるだけでなく、毎週のように価格は変動し、その変動幅も一律じゃない。そんな商品は燃料だけじゃないだろうか。どうして、こんな状況なのか考えてみた。
ガソリンと軽油は、石油から精製されることで作られるから化石燃料とも呼ばれる。ガソリンと軽油、ジェット機の燃料や灯油は、沸点が異なるため、蒸留するとそれぞれ特性が異なる燃料油として利用されるようになるのだ。
軽油に関しては寒冷地では固まって燃料系統を詰まらせてしまう危険性があるので、凝固点が異なる軽油を何度か継ぎ足して入れ替える必要があるなど、その特性から全国共通の商品ではないが、日本の燃料としての品質は、非常に安定している。ほとんどのガソリンスタンドで提供されている。
レギュラーガソリンは添加剤などの成分もほとんど変わらないため、製油所からの距離などの運搬性を考えて、石油元売り会社同士でガソリンを融通し合うようなことも行なわれている。
それくらいガソリンの品質は安定している。にも関わらず、その価格は毎週のように変化し続けているのだ。それは、石油という原料が極めて特殊な環境に置かれていることが大きく影響している。
■為替、先物による原油価格の変動が最大の要因
一番の理由は、原油が投機の対象になってしまっていることだ。これはどういうことかというと、国際市場で取引きされる商品は、生産や購入の安定化を図るために何カ月か先に売り買いする価格を決めておく制度がある。
これが先物取引きと呼ばれるものだ。しかも取引きは日本の通貨の円ではなく、ドル建てやユーロなど欧米で一般的に使われている通貨で取り引きされているため、円との為替の変動によっても日本の石油の価格は変動することになる。
中東の情勢不安が起こると、それを材料に原油の供給不安を懸念して投機筋が石油の先物を買うために、石油の価格が上昇する。原則的には需要と供給のバランスで価格が決まるものでも、こうした外部の思惑や政治的な動きによって価格が変動してしまうのも、石油由来の燃料ならではの要素だ。
だが、昔ほどは原油価格は上下しにくくなってきた。その理由の1つとして現在は米国のシェールオイルが世界の原油市場で大きな存在を示すほどになったことがある。
単一国ではロシアに次いで2番目の産油国となり、減産中とはいえサウジアラビアを抜いたのだ。以前は石油を輸入していた米国が輸出国となったことから、供給面での安定化にも影響しているのだ。
昔は石油はあと50年で枯渇すると言われてきたが、その後採掘技術の発達により、いつまで経ってもあと50年と言われ続けてきた。
ところがシェールオイルが取り出せるようになってからは、この可採年数という概念が吹き飛んでしまった。無尽蔵とまではいかないが、数百年は使える埋蔵量あるという説もある。
もっともシェールオイルも採り続ければ採掘のコストは上昇していくことになるだろうし、そんなに化石燃料を燃やし続けると、大気中のCO2は人が呼吸する際にも問題となるレベルにまで上昇してしまうから、現実的にはシェールオイルも使い続けることはできないのだ。
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