トミーカイラZZ 電撃試乗!京大がつくったスーパーEV

 トミーカイライズムとオリジナリティが詰まった新しいスポーツEV。京大出身の西川淳が、その“新生ZZ”を宇治の公道で走らせわかったこと。さらには宇治の工場を訪れ知った、その誕生までの舞台裏もお届けする。

文・写真:ベストカー編集部


 “トミーカイラ”の産みの親であり、ブランドネーム・製造権を持つ冨田義一氏。彼の協力を得て、京大発のベンチャー企業GLMが復活させた新生ZZを京大出身の自動車評論家・西川淳氏が走らせた!!

 トミーカイラとは……1968年に京都の地で誕生したトミタ夢工場のブランド。国産車をベースとし、トミーカイラの名を冠した多くのチューニングカーを手がけた。そんなトミーカイラが’97年に初めて作ったオリジナルモデルが初代ZZ。これが、今回復活したZZのモチーフとなっているのだ

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 今から4年前。ボクは母校のシンボル、時計台のある建物のロビーで彼ら、32歳(当時)の小間裕康社長が率いるグリーンロードモータース(現GLM)の面々に出迎えられた。京大発のベンチャーがオール京都でEVを開発、伝説のスポーツカーがEVで復活へ。そのニュースにふれ、嫉妬の混じった驚きと喜びを抱えて、京都に向かったのだった(そういえば当時は、まだ東京に住んでいたっけ……)。

 若者たちと話してみて、なるほどと思ったことがあった。若者が、クルマに興味を持たないのは、彼らが心底欲しいと思うクルマが目の前にないからというではないか。たとえば、昔のスポーツカーなどは、今見ても格好いいと思う。    けれども、排気ガスが臭ったり、オイルにまみれることは嫌、もってのほかだ。

 そんな発想が、同じく京都発祥のオリジナルスポーツカー、トミーカイラZZに目を向けるキッカケとなったのだろう。あれから4年。いろんな苦労があったと思うけれども、ようやく彼らのクルマにナンバーがついた。型式認定ではないにせよ、日本の法規をクリアして自前のクルマを世に送り出すことの難しさは、クルマ好きの想像を超えるものがあるから、快挙だというほかない。

リアスタイルは、初代の面影を残す丸目4灯のテールランプがスポーティ。全体の印象もフロントのシャープさとは対照的に曲線が美しい
リアスタイルは、初代の面影を残す丸目4灯のテールランプがスポーティ。全体の印象もフロントのシャープさとは対照的に曲線が美しい

 実際、ナンバーを付けた姿をみると、見違えるほど“クルマ”に見えるから不思議だ。シルバーのペイントもよく似合っている。これまで見た、赤やパールホワイトよりも、サイドラインの抑揚などがしっかりと出ていて、美しい。

 このクルマには、ベタッとした色よりも、シャープな色がお似合いだ。伝説のトミーカイラZZは、由良拓也さんのデザインだった。丸目のファニーフェイスが、今となっては時代を超越(つまり最初から新しくなかった)していて、ツウ好みである。

 翻って、EVで復活したZZモダンだ。正確には、2000年代フェイスである。それもそのはず、新型ZZのデザイナーは西田典幸さんで、彼の手による幻のスーパーカー、トミーカイラZZ2のデザインモチーフを可能なかぎり取り込んだデザインディテールであるからだ。特に目つきはZZ2そのもの!!

 伝説のスポーツカー復活! というと、以前のZZに積まれていた日産パワートレーンをモーター&バッテリーに換えて、新しいボディカウルを被せただけ、と思う人も多いだろう。

 実際には、違う。 モノコックボディやシャシーの基本設計は、踏襲するものの、最新の規定に沿ったサブフレーム構造や大手サプライヤーからの供給パーツなど、独自の開発=苦労も多い。

 逆にいうと、それがそのままデビューまでの“余年の歳月”を意味するわけで、単なるEVコンバートならば、これほど時間はかからない。この7月にユーザー向け車両の登録が始まったと聞いて、宇治の工場に駆けつけたボクを待っていたのは、しかし、プロトタイプモデルのナンバー付き車両だった。

 この秋、京都北部の舞鶴に量産体制を整えた工場が稼働するが、そこで生産されるモデルは、もう少し、リファインされたものになるらしい。ドアを開けると、アルミニウムのボディ骨格がむき出し。個人的には好きだ。

 けれども、人によってはスパルタン過ぎると思われるかもしれない。さまざまなオーダーを受け入れる体制を整えることになるという。実際、宇治の工場でセットアップされつつあった車両のモノコックには、クロス張りが施されていた。

インパネは、機能的で質感を高めたというよりは、必要最低限の装備でレーシーな印象。フロアパネルもアルミむき出しの状態だ。ステアリング頂点のセンターマークが雰囲気を演出する
インパネは、機能的で質感を高めたというよりは、必要最低限の装備でレーシーな印象。フロアパネルもアルミむき出しの状態だ。ステアリング頂点のセンターマークが雰囲気を演出する

 開発ドライバーを務めるレーサーの白石勇樹君の横で同乗体験ののち、自分でハンドルを握った。宇治の街を走りだして、まず、感心したのは、乗り心地がいいこと。旧ZZよりもいい。ZZというと、ミズスマシのようにフラットで、ステアリングレスポンスもクイックな硬派マシンだった記憶が鮮明だ。

 けれども新型EVZZは、ロールを適度に許すセッティングで、公道テストもままならなかったスポーツカーにしては上出来な乗り心地をみせる。立派に最新モデルの乗り味だといっていい。アクセルペダルひと踏みで、グっと前に出ていく加速フィールは、EV独特のもの。いきなり最大トルクが立ち上がる。

 プロトタイプモデルでは、実はパワースペックの出方を控えめにして、暴力的な加速にならないよう出力特性のセッティングを配慮したというが、現時点でも充分に楽しい。これで、本来のスペックどおり、すなわち、305ps&42.3kgmを発揮するようになれば、その操縦感覚はスーパーカーレベルになるに違いない。車重900kgに満たないクルマには、スリリング極まりないライド感覚となると思う。それはそれで楽しみ。いっぽうで課題もあった。

  今のところ、多くの人がEVの走行フィールに関して無知である。それゆえ、ZZの走りも、EV初体験である人なら驚くだろうが、たとえば三菱i-MiEVのオーナーならば、“こんなものか”と思ってしまうに違いない。

  プログラムでセッティングの幅が広がるのがEVである。もっとドラマチックな加速性能を見せてほしい。同時に、NVH対策も、いっそうの工夫、もしくはこだわりが必要になると思う。いずれにせよ、この新生トミーカイラZZが、EVスポーツカーという新ジャンルの旗手であることは、間違いない。

GLM宇治工場に潜入!! ZZ誕生の舞台裏

アジアン・フォーミュラ・ルノーやGP2のマシンのテスト経験もあり、新型トミーカイラZZの開発ドライバーを担当したレーシングドライバーの白石勇樹氏(左)と西川淳氏(右)
アジアン・フォーミュラ・ルノーやGP2のマシンのテスト経験もあり、新型トミーカイラZZの開発ドライバーを担当したレーシングドライバーの白石勇樹氏(左)と西川淳氏(右)

 「このプロトタイプで、完成度は7割といったところでしょうか」と、GLMのエンジニアリング部門を引っ張る藤墳裕次が実直に語ってくれた。無論、納車される個体の成熟度はもっと進んでいる。それでも「エンジニアとして100%完成といえることはない。それが、コレから先の進化を決めていくとも思います」。

   進化にゴールはない。だからスポーツカーは難しい。開発ドライバーを務める白石勇樹も、「クローズドコースのテストでいいと思ったセッティングでも、公道を走るとまったく印象が違うことが多々あって。例えば、音の問題ですね。EVは静かに走るもの。それゆえに、パネルのきしみ音や、ファンの音が目立ってしまう」。

 苦労の末、誕生したEVスポーツのトミーカイラ。そもそものキッカケは、京都大学ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー(VBL)が進めた「京都電気自動車プロジェクト」だ。京都には不思議と電池やモーターなど、EV関連の要素技術に長けた有名企業が多数存在する。

 しかも、昔から自動車ベンチャー気質が強く、トミーカイラや童夢、コジマエンジニアリングなどを生み出した。そこに、京都大学の開発力とネットワークを組み合わせれば、今までにないEVビジネスが展開できる。そう、GLMの面々は考えた。最も難しいのは、公道を走行できる車体をいかに調達するかだった。

  幸い、トミーカイラという偉大な先人がいた。苦労の元こそ商売ネタ。彼らが思いついたのは、“EVメーカー”ではなく、“車体サプライヤー”になることだった。新型トミーカイラZZは、前作にも満たない99台の組み立て認証枠生産である。

 だが、ビジネスはその先。自由なスタイリングのクルマをユーザーに提供するという新しい試みが、京都から生まれようとしているのだった。

ライトウェイトなZZを駆れば爽快な気分を味わえる!
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新旧トミーカイラZZ主要諸元

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