追加モデル(新顔)を登場させて、販売面でのテコ入れを図る。クルマ界では以前からある戦略だ。そして、その新顔が高評価になることもあれば、逆もある。
現行国産車の追加モデル(新顔)たちとその売れ行きを取りあげ、「すげぇ評判で影響大。おかげでモデル全体の販売台数が増えたよ!」という「孝行息子」なのか、あるいは「あ~あ、期待してたんだけどさっぱり売れないねぇ~」という「放蕩息子」なのかをチェック。
ある意味各メーカーの戦略にメスを入れる企画。各新顔の評価をしてくれたのは自動車ジャーナリストの渡辺陽一郎氏だ。
※本稿は2019年3月のものです。「孝行息子度」「放蕩息子度」は10点満点です。写真下の販売台数は2019年1月の月販台数。一部、追加モデルの台数を公表していないモデルもあります
文:渡辺陽一郎、ベストカー編集部/写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2019年4月10日号
■まさにアイデアの勝利 スペーシアギア
昨年、日本で最も多く売れた車種はN-BOXで、2位がスペーシアだった。今は新車販売の約36%が軽自動車で、N-BOXやスペーシアのような全高1700mm以上の軽スーパーハイトは、軽乗用車の40%以上を占める。
つまりスペーシアは最も元気のいいカテゴリーに属する。なので、スズキも力を入れて売りたい。そこでスペーシアギアを投入。SUV好調の背景を受け、軽スライドドアで初のSUV風仕立て。シートには溌水加工を施した。オプションでは、駐車時にボディの脇に設営するタープも用意され、コンセプトはヒットモデル、ハスラーに近い。
しかも価格はスペーシアカスタムよりも8万円近く安い。人気の新顔になる材料が満載。アイデアで勝利の孝行息子だ。(孝行息子度:9点)
■荷室長が2m超え! シエンタ(2列モデル)
現行プリウスは先代と違い、販売が伸びない。さらにアクアやポルテ&スペイドなどの売れゆきも芳しくない……。
最近のトヨタ車、やや活気がなかったが、そんななか白羽の矢を立てられたのがシエンタ。その策は“2列シート仕様”の追加だ。
シエンタは薄型燃料タンクを採用しているから荷室の床は低い。その利点を活かしたのが2列仕様で、後席を床面へ落とし込むように畳めるから、平らな荷室長が2mを超える。これは大きな武器。優れた積載性は他を圧倒する。
そのウリが市場に受け、2列シート仕様車は現在シエンタ全体の約40%を占める。確かに凄いが、最初から2列仕様があってよかったかも。(孝行息子度:8点)
■比率99%と主役に! ホンダ ジェイド(2列モデル)
2015年に発売されたジェイドは、無理の伴う商品だった。ミニバンだが、全高は立体駐車場にも入る1550mm以下だから、3列目がかなり窮屈。2列目は座面の奥行が1列目に比べて55mm短く、座り心地が悪い。しかも3ナンバー車ボディで、発売時点ではハイブリッドのみだったから価格も高い。走りはいいが……。
そこでまずはターボのRSを加え、その後に2列シート仕様も追加。3列シート車の2列目に比べて、このモデルはかなり快適。さらにRSは、4名が快適に乗車できて走りもいい。1月の販売台数は全278台と少ないが、このうちの250台が2列仕様。すでに頼みの綱となっている!?(孝行息子度:10点)
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